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絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで 作者:鬼影スパナ

ドラゴンなクエスト

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ダンジョンプロデューサー、ケーマ。始動。

 相手は564番コア。魔王派閥の木っ端らしい。下手したらロクコより下の可能性すらある、そんなダンジョンコアだ。

 で、相手についてはあまり大人数で来ることは無いだろう、ということらしい。
 魔王派の連中はコア個人の武勇を誇る。故に、対等や格上な相手ならともかく、明らかに格下であるミカンに対して大勢で攻めてくることは無いだろうということ。

 そう考えると、以前三つ巴のダンジョンバトルをやった時は対等として見られていたという事だろう。そして最後はダンジョンコア個人の武勇で決めようとしてきたあたり、アイディはまさに魔王派らしい存在だったというわけだ。

「さて。他に欲しい情報は?」
「そうですね、それじゃあここは帝都からどのくらい離れているのかとか」
「馬で1日、ってところね。帝都を朝に出て、夜にギリギリ、って距離かしら」

 ……ふむ。案外近い。だからこそ初心者が紛れ込むことがあったわけか。

「というか、帝都に近いのに魔王派がやってきたんですか」
「潜入してきた感じね。困ったものだわ、あいつら私を困らせるためには手段を選ばない気なんじゃないかしら」

 なるほどなー。……さてさて、今回の話について状況はだいぶ出揃った。

 方針は、まぁこれで良いかというのを思いついた。
 正直本当に勝てるかは分からないが、別に勝てなくてもいい。
 言っちゃ悪いが、負けても死ぬのは俺じゃない。ミカンが死んでも魔王派閥のコアに一矢報いれば俺は勝利だし、ミカンが死ななければなお良しというレベルだ。もちろん、勝てれば最上だろうが。
 なら、普段なら絶対にやらない戦法を試せってことだよな。

「予算はハクさんから10万、ミカンの手持ちで35万ちょいか……」
「そっきゅよ。でもボクの分は全財産だから……全部は使い切りたくないきゅね」

 ハクさんからの支援金は10万DP。余った分は俺達の収入になるそうだ。で、それと何かあれば協力してもらえるとの事。

「えーっと。協力について確認しときたいんですが、冒険者ギルドに手を回してもらって、ダンジョンを周知させたりとかはいいんですかね? 今すぐじゃないですけど」
「そうね。そう言うのは問題ないわ。協力してあげなさい、ミーシャ」
「はいですにゃ、了解しました!」

 よし、これで冒険者を呼び込めれば追加でDPも仕入れられる。
 というか、俺やロクコはともかく、イチカやニクはDP産出源になるし……これも予算に考えて……


 よし。さっそく1手目といこうか。

「ミカン。引っ越ししようか」
「えっ」

 ミカンは、「きゅい?」と首を傾げた。

「引っ越しって、なんきゅか?」
「サブダンジョンを作って、そっちにダンジョンコアを移動させるんだよ」
「ほう……そんな手があるんきゅねぇ」
「ちなみに俺はこれでハクさんに勝った」
「は!? マジきゅか!?」

 ミカンがハクさんを見ると、ハクさんは当時の事を思い出したのか苦笑いだった。

「マジっきゅか……! え、待つきゅよ。ロクコがハクさまに勝ったってことっきゅか?」
「ん、そうなるわね。お互い10万DPまでって条件付きだったけど。ウチのケーマはすごいでしょう?」
「すげーっきゅよロクコ!」

 そう、これは俺がハクさん相手に初めてダンジョンバトルをしたときに使った手。
 当時はサブダンジョンとかそういうのなしにダミーの洞窟の方にコアを置いておいただけなんだが、ハクさんは見事にスルーしてしまった。そして俺が勝った。

 ハクさんにも有効な手が他で使えない訳もない。というわけで、大事なダンジョンコアは安全な所に置いておくのだ。
 幸い何もない草原だ。適当に離れたところに目印もなく穴掘ってダミーコアを埋めておいて、当日だけダンジョンコアをそっちに移しておくとかするだけでかなり安全だろう。

「というわけでハクさん。サブダンジョンを作りたいんですけど。……ここから馬で半日くらい離れた、帝都寄りの場所とかにダンジョン作っても大丈夫ですかね?」
「ここと帝都の真ん中くらい? そのあたりなら、あまり大きくなければ大丈夫よ。好きになさい」

 細長ーく領域を取るようにすれば、半日分移動したところにサブダンジョンを作っても予算内で収まるだろう。
 確認もとれたし、これで防衛についてはなんとか行けそうだな。

「はぁー、ケーマ。ハクさまに勝ったとか、おめーとんでもねーっきゅね」
「なに、条件が良かっただけだよ」
「……そういえば112番さまにも勝ったとかいう噂を聞いたんきゅけど、もしかしてそれもケーマの仕業っきゅか?」
「112番……ああ、イッテツか。それも条件が良かったんだよ」
「あ! あとあと! 666番とかとのダンジョンバトルにも勝ったんきゅよね? これもなんきゅか?」
「あれも勝てる条件が揃ってたからな」
「……もしかして、もしかしてなんきゅけどー……ぼきゅ、とんでもねー味方を手に入れたんじゃねーきゅか?」

 実績だけ見ると確かにそうだろうな。
 ハクさんの庇護下に入った時点でとんでもない味方は付いていると思うけど。

「できれば特殊勝利条件が欲しいところだな……ミカン、相手に連絡してこっちの勝利条件を増やせないか? 例えば、1日守り切ったら勝ちにするとか」
「連絡といってもなー……。こっちからは連絡の付けようがねーんきゅよねぇ。また来るのを待つっきゅか? 次来るのはダンジョンバトルの時だーって言ってた気もするけど」
「うーん、不便だな……っと、そうだハクさん。どうにか連絡付けられません?」
「そうねぇ……6番に手紙出せば伝わると思うわ。お互いの派閥コア同士のダンジョンバトルについて話をしたいって出しておきましょうか」

 うん、こりゃ本格的に派閥間の抗争に巻き込まれてるな、ミカン。ご愁傷様としか言いようがない……いや、俺も巻き込まれてるんじゃないか。
 ならもういっそ大ごとにしてしまった方が道連れが増えるんじゃなかろうか。

「……まぁいいか。できるだけのことをするだけだ」
「んきゅ。頼りにしてるっきゅよ、ケーマ!」

 もふすり、とミカンが俺の足に擦り付いてきた。ついでにイッカクウサギの3匹も「まぜろー」「ぼくもー」「やったれー」と寄ってくる。
 もふもふである。超もふもふい。なごむわー。

 あ、イッカクウサギのツノ硬ぇや。ぐりぐりこすりつけんな痛い痛い。強めの甘噛みくらい痛い。
 え? アーマーラビットも来るの? ちょ、お前もふもふじゃなくて鱗で硬いとこ多いんだけどうぉおっとぉ! ごりごりするなぁコレは!

「ケーマ、ウサギまみれね」
「わけてやろうかロクコ。硬いぞコイツの額は」
「……むしろ私がそっちに混ざるのはどうかしら?」

 待って。ハクさんが見てるからそれは待って。
 あ、ニクが混ざるのは良いけどナイフは出さないようにね。こいつら味方だからね。
(担当さんから聞いたんですが、7巻の帯に重大発表が書いてあるそうです。マジかよ献本まだー?)

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