確定判決に対して裁判所が3度も裁判のやり直しを求めているにもかかわらず、人道上許されるとは到底思えない。
大崎町で1979年、男性の変死体が見つかった大崎事件で、殺人罪などで服役した原口アヤ子さんと元夫(故人)の再審開始を認めた今月12日の福岡高裁宮崎支部の決定に対し、福岡高検はきのう最高裁に特別抗告した。
逮捕から38年半、第1次再審請求から約23年が経過している。弁護側は90歳で入院中の原口さんの健康状態や、再審開始が計3回認められたことから、検察側に特別抗告をしないよう求めていた。
今回の特別抗告で再審開始は持ち越しとなり、最高裁で改めて可否が問われる。速やかな再審開始が実現しなかったのは残念だ。
弁護団は原口さんらの迅速な裁判を受ける憲法上の権利が侵害されるとして、国家賠償請求訴訟を起こす構えだ。
原口さんは男性の首をタオルで絞めて殺害し、牛小屋に遺棄したとして、元夫や親族2人とともに逮捕された。主犯とされた原口さんは一貫して否認したものの、一審鹿児島地裁が懲役10年を言い渡し、81年に最高裁で確定した。
12日の高裁支部決定は、共犯とされた親族らの「自白」の信用性を否定し、殺人ではなく転落事故だった可能性にまで言及した。
特別抗告は決定に憲法違反か判例違反がある場合に限られ、ハードルは極めて高い。
刑事訴訟法の専門家は高裁支部の再審決定を受け、判断には「憲法違反も判例違反も何も見当たらない」と指摘。人道的な観点から検察は特別抗告を控えるべきではないかと訴えていた。
しかし、高検は刑事訴訟法が再審開始の要件とする「無罪を言い渡すべき明らかな証拠を新たに発見した」とは言えず、最高裁判例に違反すると判断した。
全国では再審開始決定が相次いでいる。元裁判官で大崎事件弁護団の木谷明弁護士は「検察官は流れを止めなければという危機感のようなものを持ち、勝つかどうかは論外で抗告しているのだろう」と語った。
仮にそうだとしたら、請求人の人権もあったものではない。
検察は公益の代表者である。譲れない主張があるなら裁判のやり直しに応じ、再審の法廷で堂々と論じるべきなのではないか。
再審制度は無実の人の救済を目的とする。確定判決が大きく揺らいでいるのは紛れもない事実である。「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則を曲げるわけにはいかない。
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