「忖度(そんたく)」で行政をゆがめた安倍政権の支持率がガタ落ちしたとマスコミが大騒ぎをしているなかで、ひっそりともう1つ、「忖度」によってねじ曲げられているものがあることをご存じだろうか。
見出しからも分かるように、これらの報道は、2014年5月に安倍政権が約600人の中央省庁幹部人事を一括管理する「内閣人事局」をつくったことが財務省の暴走を招いたとしている。「官僚」はヒトラー安倍の恐怖政治の前で、子犬のようにクーンとおびえる「被害者」として描かれる。
「その通り! 安倍が辞めれば全て解決だ!」とご立腹の方だらけのなかで大変申し上げづらいが、これはかなりねじ曲げられた報道だと言わざるを得ない。
官僚被害者説の根拠は、「官僚というのはマジメで規律を守る人たちなので、悪徳政治家から脅されたりしない限り、悪事に手を染めない」という前提があるからだが、残念ながらこれは妄想にも近い思い込みである。
マスコミは今回の改ざん問題を、「前代未聞」「常識が覆された」「日本の行政の信頼失墜」と、さもこれまでなかった珍しい現象のように触れ回っているが、日本の近現代史を冷静に振り返れば、官僚が「不正」や「改ざん」に手を染めなかった時代を探す方が難しい。
ノーパンしゃぶしゃぶ、薬害エイズ、消えた年金、防衛省汚職、原発の規制がザルだった問題など、中央省庁ではまるで競い合うように「前代未聞」の不祥事を繰り返してきた。収賄、情報漏えいの見返り要求、規制企業や公益法人への天下りなど、細かい不正をあげればキリがない。
いや、国会答弁に合わせて公文書を書き換えるなんてところまではやっていない、とムキになって反論をする人もいるが、国会答弁に合わせて「うそ」をつくことも佐川さんの上司世代はしれっとした顔でやってのけていた。
安倍さんがまだ国会議員にもなっていない1991年に発覚した証券スキャンダルで、損失補填(ほてん)の報告日時を大蔵省担当者の国会答弁に合わせるため、報告を行った証券会社に「うそ」をつくように要求していたことが日本経済新聞(91年10月2日)で明らかになっている。
こういう改ざんカルチャーが財務省に引き継がれていれば、近畿財務局職員という身内で、しかもの本省エリートたちからみれば「下」の人間に「うそ」を強要しても何の不思議もないのである。
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