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現行のリチウムイオン2次電池(LIB)の数倍~10倍超の容量を持つポストLIBの存在感が急速に高まってきた。これまで実現は遠い将来と考えられていたが、技術の開発が大きく進展し始めたことに加え、既存のLIBの安全面、技術面、価格面での限界がハッキリと見えてきたからだ。
エネルギー密度は現行のリチウム(Li)イオン2次電池(LIB)の数倍から10倍超の「ポストLIB」の研究開発が大きく進んでいる(図1)注1)。ポストLIBの技術は幾つもあるが、この1年ほどで大きなブレークスルーがそれぞれの技術に相次いだ。1つでも実用化できれば、スマートフォン、ウエアラブル端末、ドローン、そして電気自動車(EV)や電力系統の安定化用蓄電池など、充放電可能な2次電池を用いる用途の使い勝手を大幅に向上させ、社会的インパクトも非常に大きい。
例えば、これまで液体だったLIBの電解質を固体電解質にする全固体電池の研究では、「Liイオンの高速道路」と言われる電解質材料が開発された。Liイオン伝導率が飛躍的に向上し、従来のLIBをはるかに超える出力密度を実現できる可能性が出てきた。
理論上はエネルギー密度の大幅な向上が期待できても、実際には放電容量が低かったLi空気電池の開発では、1回目の充放電サイクルではあるものの、理論値に近い放電容量を確認できるようになった。Liを用いない非Liイオン電池系の技術では、食塩の材料であるナトリウム(Na)イオン2次電池で、LIBを超える放電容量の正極が開発され、しかもこれまで大きな課題だった充放電サイクルは、500回以上と大幅に伸びた。
これらはそれぞれに課題が残っており、実用化に直結するわけではない。それでも、以前よりははるかに明るい展望が広がってきたといえる。