「今日はまさに、『竜抬頭』(ロンタイトウ)にふさわしい、習近平新時代の晴れの門出だ!」
3月18日、全国人民代表大会が開かれている北京の人民大会堂で、代表(国会議員)の一人が、興奮気味に語った。
竜抬頭――旧暦の2月2日、中国の伝承では、竜が天に向かって飛翔する日である。習近平という竜による中国統治が完遂したと述べたのだ。
たしかに、この表現は、まんざら大袈裟とも言えない。3月5日から20日まで開かれた全国人民代表大会はまさに、「習近平の習近平による習近平のための大会」だったからだ。
外国メディアはこれを「独裁体制の確立」と報じているが、習近平主席は、クーデターなどではなく、強引ではあるがあくまでも合法的な形で、強大な権限を手中に収めた。つまり、中国的に言うなら、習近平主席への権力一極集中は、正統性(レジティマシー)を持っているというわけだ。
反対意見をすべて圧殺してしまう様は、民主国家から見れば異様であるが、それが「習近平新時代の社会主義」の流儀というわけだ。外交は内政の延長であるから、この手法は今後、外交にも適用されていくと見るべきだろう。
今回の全国人民代表大会を振り返ると、3部構成になっていた。第1部が憲法改正であり、これについては、このコラムで詳述しているので再述はしない(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54726)。
第2部は、国務院(中央官庁)の機構改編である。今回は、そこから見ていきたい。
3月17日午前9時、第13期全国人民代表大会第1回会議第5回全体会議が、北京の人民大会堂の「万人大礼堂」で開かれた。
この日の会議の進行役を務めたのは、大会執行主席兼主席団常務委員会主席の陳希だった。
陳希は、習近平主席の清華大学の同級生である。卒業後、習近平は政治家になり、陳希は学者になったが、二人は40年以上にわたって昵懇の仲だ。そのこともあって陳希は、昨年10月の第19回共産党大会で、中央政治局委員(共産党トップ25)、中央書記処書記兼中央組織部長(共産党の人事部長)兼中央党校校長と、異例の抜擢を受けた。
「会議の出席代表予定代表(国会議員に相当)2980人、今日の出席代表2970人、欠席代表10人、出席人数は法定人数に合致した」
そんな陳希主席がこう宣言し、まずは13日の第4回全体会議に全国人民代表大会常務委員会が提出した、国務院の機構改革法案の批准を行った。
批准は、各代表が机上の「賛成」「反対」「棄権」のどれかのスイッチを押す方式で行われ、前方の大型パネルには、一瞬にして可決したことが示された。
その瞬間、中央に鎮座する習近平主席に向かって、満場の拍手である。