【ラスベガス=中西豊紀】米フェイスブックのユーザー約5000万人分の個人情報が不正に第三者にわたっていた可能性がでてきた。情報は英データ分析会社を通じ2016年の米大統領選でトランプ陣営に使われたとの指摘がある。米英議会ではフェイスブックの情報管理のあり方をめぐり批判が出ており、巨大デジタル企業への規制論が再び高まっている。
米紙ニューヨーク・タイムズと英紙ガーディアンが19日までに内部告発者の証言を基に報じた。
報道はフェイスブックを通じてユーザー調査した英ケンブリッジ大の心理学教授が、そこで得た約27万人分の個人的嗜好や行動にまつわるデータを不正に英分析会社ケンブリッジ・アナリティカに渡したというもの。
教授が調査を通じユーザーデータを取得するのはフェイスブックとの契約に基づき合法だが、それを許可なく第三者に渡すことは禁じられている。データはユーザーの友人情報も含まれており、結果的に約5000万人の情報がケンブリッジ・アナリティカに流れたとされる。
ケンブリッジ・アナリティカはデータを使って選挙時の有権者行動に影響を与える業務に従事しており、創設にはトランプ氏の側近だったスティーブ・バノン氏が関わっていたとされる。16年の大統領選でトランプ氏が有利になるようユーザー情報が使われた可能性が指摘されている。
フェイスブックは報道が出る直前の16日夜にケンブリッジ・アナリティカを同社のサービスから締め出すと発表。15年の時点でデータを消去するよう申し入れていたとする声明を出した。さらに情報も盗み取られたわけではなく、所管外の組織による不正だとして自らの正当性を強調した。
ただ、こうした事実を伏せていたことに米英議会が反発を強めている。英国ではマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)を議会に証人として呼ぶべきだとの声が出た。米国でも19日、共和党のジョン・ケネディ上院議員らがザッカーバーグ氏に議会証言を求める書簡を公表した。
この日の米市場でフェイスブック株価は前週末比で一時8%超下落した。「プラットフォーマー」と呼ばれる巨大デジタル企業が個人データをどう扱うかは欧州を中心に関心が高い。米国でも規制論が進めば、データに基づき巨額の広告収入を得てきたフェイスブックにとって経営の大きな打撃となる。