「(琥珀の採掘地域は)非常に混乱していて、非常に原始的な採掘がおこなわれており、個々のテントの下に一本の坑道があるわけです。坑道はとても狭いですから、僕のようにガッシリした人間は入れません。児童労働者や青少年が、腰に一本の縄を付けて小さな桶を持って坑道に入って採掘しているわけで、非常に危なく、穴が塞がれて亡くなる人もしばしば聞かれるようです。現地は道路事情も悪くて泥だらけ、バイクが走った後はゾウがひっきりなしに(牙でえぐった)ようになります」
他にもシン博士は中国の科学サイトの取材を受けた際に、かつて四川省涼山イ族自治州での発掘作業中に同行していた中国登山隊のメンバーが暴風雨を受けて滑落死しかけた話を語るなど、ハードな環境で採掘を続けている模様である。古生物の化石は人里離れた山の中や砂漠に残されていることも多いため、彼に限らず恐竜学者はこうした場所に赴かなくてはならないのだ。
ラオス南部で出土した竜脚類タンヴァイオサウルスの化石。東南アジアなどの発展途上国では恐竜化石の扱いがぞんざいであることも多い。ラオス、サワンナケート恐竜博物館で筆者撮影
恐竜は長年にわたって、オタク気質のある小学生男子を魅了し続けている。世の男性のなかには、子どもの頃の将来の夢が「恐竜博士」だった人もいることだろう(他ならぬ私自身がそうである)。かつては『インディ・ジョーンズ』ばりのアドベンチャーにあこがれた人も多いに違いない。
そんな人が、そのまま大きくなって大冒険の末に世界的な大発見を繰り返している。・・・シン博士の人生が、どうしようもなく羨ましくてたまらないのは私だけであろうか?