トランプ米大統領、ロシア介入疑惑捜査を「偏っている」と非難

ドナルド・トランプ米大統領によるツイッターを用いた対抗勢力への攻撃は、例をみないものになっている Image copyright Getty Images
Image caption ドナルド・トランプ米大統領によるツイッターを用いた対抗勢力への攻撃は、例をみないものになっている

ドナルド・トランプ米大統領は18日、自分が勝利した2016年米大統領選にロシアが介入していたとの疑惑に関するロバート・ムラー特別検察官の捜査を激しく批判した。

トランプ氏は同日のツイートで、捜査は不公平で、大統領選においてトランプ陣営とロシアの間には「何の結託もなかった」と繰り返した。

トランプ氏は捜査が「強硬な民主党支持者」と大統領選でトランプ氏に敗れたヒラリー・クリントン氏の支持者に支配されているとも付け加えた。

米連邦捜査局(FBI)の元長官としても高い評価を受けるムラー氏は、共和党支持者だ。

トランプ大統領のコメントの前日には、同氏の弁護士ジョン・ダウド氏が、特別検察官の捜査は終わりを迎えるときだ、と発言している。ダウド氏は当初、大統領を代弁して発言しているとしていたが、後にコメントは「個人の意見だ」とした。

「なぜムラー・チームには13人の強硬な民主党支持者や歪んだヒラリー(・クリントン元国務長官)支持者の大物が含まれ、共和党支持者はゼロ人なのだ? 最近、民主党支持者が加えられた……誰がこれを公正だと思う? それでも、何の結託もないのだ!」というトランプ氏の直近のツイートを受け、仲間うちの共和党支持者からも、捜査妨害を懸念する声が出ている。(太字部分は原文で全て大文字で強調されている)

その前のツイートでトランプ氏は、定年を2日後に控えた16日にジェフ・セッションズ司法長官によってFBIを免職されたアンドリュー・マケイブ前FBI副長官や、昨年トランプ氏が解任したジェイムズ・コーミー前FBI長官も非難した。後者の解任は、ムラー氏の捜査が開始されるきっかけともなった。

トランプ氏は、コーミー氏が議会で宣誓したにもかかわらず嘘をついたと非難し、マケイブ氏とコーミー氏が同時期にトランプ氏との会話を書きとめた記録を「偽のメモ」と呼んだ。

米メディアによると、マケイブ氏はトランプ大統領とした会話のメモをムラー氏の捜査に提供したという。

一連のメモは、トランプ氏が司法を妨害したとの主張を裏付ける可能性があるとされる。

ムラー氏はこれまでに19人を起訴している。

ロバート・ムラー氏は米政界で幅広い支持を集めている Image copyright Reuters
Image caption ロバート・ムラー氏は米政界で幅広い支持を集めている

ただ、共和党のリンジー・グレアム上院議員は、ムラー氏が妨害を受けずに捜査を進められるようにすべきで、多くの共和党支持者もこの意見を共有していると語った。

グレアム氏はまた、ムラー氏を免職しようとするあらゆる企てへの警告をトランプ氏に向けて出した。

グレアム氏は、「もしトランプ氏がムラー氏を免職しようとするならば、それは彼の大統領任期の終わりの始まりになり得る。なぜなら、我々は法治国家だからだ」と述べた。

トランプ氏をたびたび批判する共和党のジェフ・フレイク上院議員は、大統領の最近の発言は、ムラー氏解任の地ならしにみえると語った。

フレイク氏は米CNNテレビに対し、「ムラー氏についてどんな企てがあるのかは知らないが、ムラー氏解任に向けた流れが作り上げられてようとしているように見える。私は解任にならないことを望んでいる。なぜならそれはあってはならないからだ。議会で我々がそれを受け入れることはできない」と語った。

「私はただ、なぜホワイトハウスがなぜここまで力を入れているのか分からない。何か明らかになるのを非常に恐れているという理由以外は」

民主党の上院トップ、チャック・シューマー院内総務は、トランプ氏が捜査を「脱線させることについて観測気球を上げている」と非難した。

「われわれの共和党の同僚、特に指導部には、今こそ立ち上がり、ムラー氏の解任は我々の民主主義が越えてはいけない一線であることを明確にする、国家に対する義務がある」とシューマー氏は声明の中で発表した。

マケイブ氏はなぜ解任されたのか

マケイブ氏はFBIによる内部調査を受けており、結果を待たずに1月にすでに副長官ポストから退いていた。

マケイブ氏は50歳となる誕生日だった18日の2日前に免職された。マケイブ氏は18日には、国家年金の支給とともにFBIを引退するはずだった。

セッションズ司法長官は「詳細で公正な調査」が、マケイブ氏が「ニュースメディアに対する不正な情報開示を行い、議会宣誓下にあったものも含めた複数の件で誠実義務を欠いた」と結論付けたとした。

ホワイトハウスは、セッションズ氏(左)にマケイブ氏の免職に関する決定を委ねたと語った Image copyright Getty Images
Image caption ホワイトハウスは、セッションズ氏(左)にマケイブ氏の免職に関する決定を委ねたと語った

マケイブ氏免職の決定自体はセッションズ氏によってなされたが、トランプ氏もマケイブ氏を数カ月間にわたり批判していた。

トランプ氏は、民主党員であるマケイブ氏の妻が2015年にバージニア州議会の上院選に出馬し落選した際に、クリントン氏に近い団体から寄付金を受け取っていたことを、マケイブ氏自身が政治的に偏向していたことの証拠として公に指摘している。

トランプ氏はマケイブ氏免職をセッション氏が発表するとすぐにそれを歓迎し、この動きを「民主主義にとって偉大な日」と表現した。

マケイブ氏のメモは何を語り得るのか

17日には、マケイブ氏がFBI長官代行を務めていた際に、トランプ氏と交わした会話の記録を残していたと報道された。

米メディアはこのメモが、コーミー氏が昨年5月に解任された際の状況説明を裏付けるものになると指摘している。

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コーミー前FBI長官証言 大統領が「嘘をつくかもしれないと」

コーミー氏は昨年5月、トランプ氏がコーミー氏に「忠誠心」を問い、マイケル・フリン前大統領補佐官(国家安全保障問題担当)に対する捜査を打ち切るよう指示したと上院情報委員会の公聴会で証言した。

コーミー氏もマケイブ氏と同様、大統領との会談記録を残していると語った。

マケイブ氏は16日、免職を受けて声明を出し、自分に対する不正行為疑惑を強く否定した

「私が槍玉にあげられ、このような仕打ちを受けたのは、ジェイムズ・コーミー氏解任のあとに私が果たした役割、取った行動、目撃した出来事が理由です」とマケイブ氏は声明で語った。

声明は、司法省によるマケイブ氏の免職を推奨する報告は、コーミー氏解任時のコーミー氏の主張をマケイブ氏が裏付けるだろうと示唆して以降「発表が前倒しされた」と主張している。

著書の発表を控えているコーミー氏は17日、アメリカ国民はまもなく「誰が名誉に値し、誰がそうでないか」判断することができるだろう、と語った。

トランプ氏は18日のツイッターで、「共謀も犯罪もなかったんだから、ムラー氏の捜査はそもそも始められるべきではなかった。不正行為や、歪んだヒラリーや民主党全国委員会(DNC)の金で作られ、僕の選挙運動を不正に監視するための外交情報監視法(FISA)の裁判所で使われた偽資料に基づいてやっている。魔女狩りだ!」とツイートした。(太字部分は原文で全て大文字で強調されている)


<解説>対決の日が近づいている

アンソニー・ザーチャーBBC北米担当記者

大統領としての義務から解放された週末、ドナルド・トランプ氏は独立捜査権を持つロバート・ムラー特別検察官への直截な言及を増やした。

もしかするとトランプ氏は、共和党情報委員会による、トランプ氏陣営とロシアに「結託」はなかったとする結論と、司法長官によるアンドリュー・マケイブ前FBI副長官の免職という決定のワン・ツー・パンチによって勢いづいていたのかもしれない。あるいは、ムラー氏が現在、トランプ氏の組織によるロシアとのビジネス関係を調査しているとする報道によって、トランプ氏が窮地に立たされているからかもしれない。

どんな理由であれ、トランプ氏はムラー氏のチームにいる「強硬な民主党支持者」や「聖人ぶった」ジェイムズ・コーミー前FBI長官を非難し、マケイブ氏の突然の退場を祝うことに週末を費やした。

大統領の戦略も形が定まってきた。批判者や捜査官を反トランプや(政権に従わない)国家内国家の権力者集団と表現し、調査・捜査全体を、偏向し間違った前提に基づいていると見せる。おそらく次の手は、ムラー氏によって暴かれた不正の証拠のすべてが、取り返しのつかないほど間違いにまみれていると主張することだろう。

これらはもちろん、法的防御として強力ではない。ただ、世論に訴える戦いでは、 トランプ氏側は防御を固められる。

(英語記事 Donald Trump berates Mueller's 'biased' Russia inquiry

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