山野楽器、テイラー新モデルなど海外ブランドから新製品を多数紹介、G&L、ヘフナー、リッケンバッカー、コアロハウクレレ
テイラーギターズ、G&L、ヘフナー、リッケンバッカー、コアロハなど海外ブランドを数多く取り扱う山野楽器が2018年の新製品内覧会を開催。1月に開催されたNAMM Showで発表された新製品を中心にギター、ベース、ウクレレ関連のアイテムを紹介した。
■テイラー、ボリュームとサスティンを両立するVクラス・ブレーシング
▲Vクラス・ブレーシングを採用した新モデル(左)を中心に紹介したテイラー。展示スペースではCustom Series(右)など数多くのモデルがラインナップ。
Taylor Guitars(テイラー)からは、「V-Class Bracing(Vクラス・ブレーシング)」というまったく新しいブレーシング(板の裏に張ってある骨組み)を採用したモデルが登場。テイラーの創始者ボブ・テイラー氏が「次のテイラー・ブランドを受け継ぐのは彼だ」と語るマスター・ビルダーのアンディ・パワー氏が手がけたVクラス・ブレーシングは、これまでにない独自のインスピレーションのコンセプトで開発されたデザインで、ボリュームとサスティンの関係を究極までに探求したもの。この新デザインを採用したV-Classモデルを紹介したのは、今回の内覧会のためにテイラー本社から来日したアジア地区営業マネジャーのアンディ・ランド氏。「非常に革命的なギターのデザイン」「このVクラス・ブレーシングというデザインは125年のギター作りの歴史の中でも一番新しい革命だと我々は考えている。」と説明を始めた。
▲今回の内覧会のために来日したアンディ・ランド氏がVクラス・ブレーシングについて説明(左)。スクリーンに写っているのがマスター・ビルダーのアンディ・パワー氏、通訳はテイラーロードショーイベントでおなじみのプロダクトスペシャリスト虎岩正樹氏(右)。
Vクラス・ブレーシングを一言で説明すると、ボリュームとサスティンをそれぞれ独立してコントロールできるシステムだということ。弦楽器のボリュームは、サウンドボードの柔軟性によって生まれる。たとえば、バンジョーはドラムのヘッドのような薄い皮の上にブリッジを載せているだけなので、非常にボリュームが大きい。その一方ですぐに音は消えてしまう=サスティンは短い。サスティンは逆の要素で、硬くて強いものが長い音を生み出す。たとえばエレキギターはアンプを使わない状態でも非常にサスティンが長いが、そのぶんボリュームがない。
▲Vクラス・ブレーシングによる効果を、水面に小石を投げて発生する波紋で説明。写真の左がVクラス・ブレーシングの構造を示したもの。この構造によりサウンドボード上に複数の音波が発生しても音波そのものが互いにキャンセルすることなく届くという。
アコースティック・ビルダーがギターを作る時に考えなくてはならない大きな要素の一つとして、このボリュームとサスティンのバランスをとることが挙げられる。硬さと、しっかり動く柔軟性、相反する二つの要素を兼ね備えなければならない。Vクラス・ブレーシングのデザインの画期的なところは、従来のギターが採用しているXブレーシングではできなかった、両者の独立性を保ってコントロールできることにある。しっかり固い部分は固い部分でサスティーンを守ることができ、逆にフレキシビリティがあるところでボリュームを稼ぐことができるのだ。
▲Vクラス・ブレーシングのメリットを914ceのVクラス・モデルでデモンストレーション。ハイフレットでのチューニングの正確さやローフレットでのハーモニクスを実演。「どうしてもチューニングが狂いがちだったシンプルなバーコードも全ての音域であっているのが分かると思います。」「簡単なオープンのGコードでも最初皆さんが習ったボイシングでは5弦のBの音がチューニングが合ってないように聞こえるので、普通は省いて弾くようになります。しかし、Vクラス・ブレーシングなら一番最初に中学の時に習ったコードと同じようにまた弾けるようになります。」との説明も。
実際に作ってみると、トップ振動のコントロールの副産物としてギターのイントネーションの精度、チューニングが改善されることも発見された。不協和音を生まない構造になっていることで、それぞれの音波が調和性を持ち、イントネーションが改善。また、チューニングが合うようになったことで、単音を弾いた際のクリアさはもちろん、コードを弾いた時にどんなボイシングでもチューニングが合うようになったという。結果としてプレイヤーの弾き方も変わってくる。これまではあるコードでチューニングが合っていても、別の押さえ方ではチューニングが狂って聴こえる現象が必ずあったが、これが完全になくなり、今まで避けていたボイシングが弾けるようになり、特にハイポジションでのコードボイシングが非常に弾きやすくなったという。また、チューニングにかかる時間も大きく短縮された。ナチュラル・ハーモニクスがネック全域にわたり均等に発生するようになったのも大きな副産物。アコースティック・ギターで普通に出るところだけでなく、かなり多彩なハーモニクスが使えるよう改善されたという。実際に1~5フレット間のハーモニクスもしっかり鳴ることがデモンストレーションされた。サウンド面では、弾いた際に音の途中からハーモニクスの性質が変わっていくブルーミング(=花が咲く)という現象が特徴だ。
▲Vクラス・ブレーシング採用の4モデル。左からBuilder’s Edition K14ce、PS14ce V-Class、K24ce V-Class、914ce V-Class。
Vクラス・ブレーシングを採用した最初のモデルは、2018年のNAMM Showで発表された4モデル。まずは既存機種のVクラス・ブレーシング・バージョンが3モデル。サイドとバックにアフリカン・エボニー、トップにシンカー・レッドウッドを採用したPresentationシリーズの「PS14ce」、ハワイアンコアを採用した「K24ce」、そして900シリーズからはインディアン・ローズウッドとシトカスプルースを組み合わせた「914ce」のVクラス・モデルが登場している。
そして、まったく新しいシリーズ「Builder’s Edition」の第一弾として「Builder’s Edition K14ce」が登場。ハワイアンコアのボディにトリファイドシトカスプルースのトップの組み合わせ。他にはない特別な仕様としてバック、トップともエッジを丸く削ってあり、900同様のアームレストも付いている。フィニッシュはまったく新しいもので、服が擦れる音がまったくしないサイレント・サテンフィニッシュを採用。カッタウェイもベベル付きのまったく新しいデザインとなり、ハイポジションでは親指を後ろに載せたまま弾きやすい形状となっている。
▲Builder’s Edition K14ceはエッジを丸く削ってあるのが特徴。アームレストも備える。
▲Vクラス・ブレーシングを採用したモデルでは、サウンドホールから見えるギターのレーベルも変更。「新しいテイラーがここで始まっている」という意味を込め、アンディ・パワーズのサインがデザインされている。
▲ソロギタリストの福成修治氏がK24ce V-Classで演奏を披露。広い範囲での安定した音程や豊富なサスティンなどVクラスのアドバンテージを存分に感じさせるパフォーマンスで来場者を魅了した。
■G&Lから初期型オマージュの「L-2000」、オフセット・ボディの「Doheny」
▲G&LからはNAMM Showで発表されたカスタムショップ・モデルほか数多くのラインナップを展示。
エレキギターの父と呼ばれるレオ・フェンダーが1972年に設立したG&Lからは、NAMM Showで発表された新機種を紹介。限定製品として発表された「USA Limited CLF Heritage L-2000」は、1980年台初期型のL-2000をオマージュし、当時のスペックで登場。初期型のオリジナルヘッドストックを採用しているのが特徴となっている。
▲写真右の2本のベースがCLF L-2000。一番左のジャズマスター・タイプのモデルがTributeシリーズのDoheney、その右がUSAシリーズのDoheny。
伝説的な海岸の名前からとった「USA Doheny(ドヒニー)」は、オフセット・ボディのジャズマスター・スタイルのギター。今日的なG&Lのオリジナルハードウェアが組み込まれており、ストラトキャスターまたはテレキャスターからの持ち換えに十分対応しうる多様的なモデルとなっている。価格は255,000円(税別)で、オプションアップチャージによりオリジナルの仕様にカスタマイズすることも可能。また、「Doheny」は比較的リーズナブルな価格帯のTributeシリーズからもリリース。仕様としては同じものだが、より低価格な93,000円(税別)で春頃発売予定だ。
また、NAMM Showではカスタムショップモデルも新たに発表。より細かく特殊なスペックまたは綿密なオーダー確認を必要とするオーナーに対してのみ対応する専用のリビジョンとなるとのこと。国内での展開は年内を予定。
■豊富なラインナップを揃えたヘフナーのバイオリンベース
▲左からVintage 61 “CAVERN”、Vintage 62 WHP 3rdのレフトハンドモデル、既発売のLTD V62 Natural Neck Side & Back Rose。
ヘフナーからはバイオリンベース「500/1 BASS」の新機種2モデルが登場。「Vintage 61 “CAVERN”」はビートルズが活動初期に演奏していたクラブの名前に由来したモデル。ヘッドのロゴが縦になっていること、突板にクリアなアクリルを入れていること、2つのピックアップが前に寄っていることなど。トップはアーチドトップだが、バックがフラットになっていることも含め61年当時の仕様を高い次元で再現している。
「Vintage 62 WHP 3rd」はポール・マッカートニー・ファンが望む仕様を日本からリクエストして実現した日本限定モデル。通常のインターナショナル・モデルとの違いは、ヘッドを短くしてコンパクトな印象のものに変更したこと、ロゴの角度も63年当時のものに合わせていること、ジャック位置の変更(エンドピンに寄っている)など。また、リアピックアップはブリッジ側に寄せてあり、ピックガードもザグリの位置に合わせた専用のものが付属する。
カスタムモデルは2018年に2機種が登場予定。ビートルズのオリジナル・ベーシスト、スチュアート・サトクリフの使用モデルを再現した1959年仕様の「“Reeperbahn” BASS 500/5」、ポール・マッカートニー所有モデルにキズの位置などを近づけた限定生産モデル「2018 Limited Edition “Relic” 500/1 BASS」がラインナップされる。
■リッケンバッカーからは6年ぶりの新カラー&待望の5弦ベース
▲既存モデルが並ぶリッケンバッカーの展示スペース。残念ながら新機種は間に合わず展示はなし。
リッケンバッカーからはニューカラーが登場。2012年のメタリックレッド“RUBY”以来となる6年ぶりの新しいカラー、マットブラック(つや消し黒)がラインナップに加わる。採用されるモデルは、330、4003、4003S、そして後述の5弦モデル4003S/5で、価格は既存モデルと同じ。
▲5弦ベースの「4003S/5」はレギュラーカラー4色+マットブラックをラインナップ。
2001年12月の生産以来待望の再発となるのが5弦モデルの「4003S/5」。5弦ベースが使われる環境や音楽シーンも2001年当時とは変化しているということで、新しい仕様を盛り込んでの登場だ。特徴的な三角形のピックアップを新たに開発、幅広く地場を形成することで音のバランスを正しく取ることを狙ったもので、フロントとリアに搭載。また、各弦ごとの調整が的確に行えるシャーラー3D-5ブリッジを採用するなど現代の使い方に対応できるよう変更されている。
■コアロハからはリーズナブルなKoAlana新モデルが登場
▲コアロハはさまざまなプライスゾーンをラインナップするハワイ唯一のブランド。ボディの左右で色が違っている写真左上の3つが、コアとマンゴーを組み合わせたNaupakaだ。
KoAloha(コアロハ)は、1996年創業のハワイを代表するウクレレ・ブランド。生産はハワイ、タイ、インドネシアの三国で行われている。ハワイ製モデルは2016年6月にモデルチェンジを果たし、現在New Lookというモデルを展開。ローズウッドの指板とブリッジ、塗装はグロスフィニッシュを採用。明るく豊かなトーンを奏でるハワイアンコアのモデルに加え、甘く落ち着いた音色のマンゴー材とコア材を組み合わせたNaupakaというモデルもラインナップする。タイ製のOpioはコアロハファミリー直系のコストパフォーマンスに優れたシリーズ。王冠型のヘッドストックやおむすび型のサウンドホールなどハワイ製とほぼ同じ生産工程で製作。ボディ材はアカシアで、トップにスプルースを使用したモデルもラインナップする。
インドネシア製のKoAlana(コアラナ)はコアロハファミリーの中で最も低価格なシリーズで、初心者でも使いやすいようギアペグを採用しているのが特徴。2018年は新モデルが登場予定となっている(時期未定)。2018年、コアロハではブランディングの一環としてヘッドのロゴをすべて統一することにしており、KoAlanaもハワイ製のKoAlohaと同じロゴが採用される。
▲KoAlanaの新モデルはソプラノ、コンサート、テナーの3種をラインナップ。発売時期・価格は未定。
▲左はKoAlana新モデルのヘッド。ロゴはハワイ製と統一、ギアはコアロハでは珍しいギアペグを採用。いわゆるカスタムショップ、コアロハではカスタムラインと呼ぶラインからは、一般に発売されるモデルの最上位になるフルカスタムモデルBLACK LABELと、それに次ぐRED LABELも紹介。羽の形が目印。写真右はRED LABELのモデルで、価格は35万~50万円程度。
▲楽器を保護するための専用バッグをリリースしているPROTEC(プロテック)からは耐衝撃性に優れたゴールドシリーズ、高密度のマルチレイヤードフォームと軽量で高強度のハニカム構造のフレームを採用したPRO PAC Caseなどを紹介。日本人の体型に合わせた日本限定のベース用ケースもラインナップ。
▲LEVY'Sストラップからは、スウェードとレザーを組み合わせたモデルや刺繍を施したモデル、食物繊維で染めたVEG-TANレザーなど多彩な新製品がリリース(左)。山野楽器のオリジナル・ブランドWisdomのギターも展示(右)。
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