平成29年5月に改正民法が参議院で可決された事により、2020年5月までに改正民法が施行されます。
そんな改正民法で不動産業者に影響する改正が少なくありません。
民法改正により保証人の保護が拡大されました。
この保証人保護は「連帯保証人がいるから」と安心して契約書をそのままにしておくと、連帯保証人との保証契約が効力を生じないことになってしまいますので契約書の見直しが必須となります。
敷金などについては下記にまとめてありますので、合わせてご参照ください。
改正民法で敷金はどうなる?原状回復、修繕義務などは?
連帯保証が無効になる?
今回の民法改正において不特定の債務を包括的に担保する「根保証」の規定が適用されることとなりました。
この改正が実務において最も大きな変更を余儀なくされる点と言っても過言ではないでしょう。
首都圏の賃貸借物件では、保証人不要で保証会社に加入されている契約が大半かと思います。
それでも、やはり連帯保証人での契約はまだまだ残っています。
連帯保証人の契約書を放置しておくと?
連帯保証人を付けての賃貸借契約の場合、連帯保証人の条項が無効という扱いになります。
つまり、賃料の未払い時の賃料回収を連帯保証人から出来なくなります。
契約書を放置していると、連帯保証人との契約が、民王改正により無効になってしまうので、契約書、保証人引受承諾書などのの雛形を見直す必要があります。
そもそも根保証とは?
民法改正で「根保証」の規定が賃貸借においても適用されるということですが。。。
そもそも「根保証」というのはどういう意味でしょうか?
不動産業者であれば、「根抵当権」という言葉は聞いたことがあるのではないかと思います。
それの保証人バージョンです。
通常の保証契約ですと、一度金銭などを借りたらその一回こっきりの保証をするだけです。
またお金を借りたいという時には、あらためて保証人からハンコをもらう必要があります。
一方、根保証は、「複数の債務を継続して保証」するので、上限金額内であれば、毎回保証契約を結び直さなくてもお金を借りることが出来るようになるので、継続して取り引きをする場合に非常に便利なものです。
最初に一度保証人からハンコを貰えばよいだけになります。
保証人に取ってはリスクが高い根保証
根保証は一度契約をすれば継続的に取り引きができるので、保証をしてもらう側、つまり債務者にとっては非常に便利なものです。
しかし、保証人にとってはリスクが大きなものになります。
債務者が保証人のハンコ無しで何回でもお金を出し入れすることが出来ると、保証人の保証する債務が無限に膨れ上がってしまいます。
そこで保証人の保護を拡大するために「極度額」を設けているわけです。
不動産賃貸借の保証も、賃借人が負担する継続的・不特定の債務を保証する契約となるので「根保証契約」にあたるというわけです。
根保証の極度額とは?
個人根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。
改正民法では、根保証契約は極度額を定めなければ無効であると規定しています。
では、その極度額というのは何なのでしょうか?
極度額というと聞きなれない言葉ではありますが、聞き慣れた言葉でいうと「上限額」です。
賃貸借契約で根保証契約をして、極度額を20万円としたと仮定します。
賃貸借で賃借人が夜逃げしたとします。
未払い賃料が10万円に原状回復に10万円残置物処理に10万円の合計30万円かかったとします。
保証人は30万円の請求を受けたとしても極度額で定めた20万円だけ支払えば責任を免れることとなるわけです。
極度額を定めていない連帯保証契約は無効
具体的に何をしなければならないかといいますと、根保証の「極度額」を設定するように賃貸借契約書、保証人引受承諾書などを修正しなければならないというわけです。
条項記載例
では、どのように修正しなければならないのでしょうか?
賃貸借契約書の保証人条項に下記条項例を加えればよいだけではあります。
例1 「連帯保証人の負担する債務の額の極度額を〇〇万円とする。」
例2 「連帯保証人の負担する債務の額の極度額を賃料〇〇ヶ月分とする。」
極度額はいくらに定めるのがよいのか?
実際に問題になりそうなのは極度額をいくらにすればよいのか?という点になるかと思います。
「極度額は100万円」とリアルな金額が明記されてしまうと、保証人となってくれる人が、尻込みして保証人になるのをやめてしまう事が多くなってしまう事が目に見えています。
金額ではなく「家賃の6ヶ月分」などといった書き方にするほうが好ましいでしょう。
いつから契約書を変えた方がよいのか?
不動産の賃貸借において、連帯保証の契約で極度額を定めなければならない事となりました。
では、いつから契約書を変更する必要があるのでしょうか?
結論からお伝えしますと、改正民法は2020年までに施工されていることは決定していますので、これから締結する契約書の保証人条項欄にはすべて「極度額」を入れたほうがよいでしょう。
今までの契約書は?
連帯保証人を付している不動産賃貸借の契約で、保証人の条項があるものは施行日までに更新などがある場合は更新のタイミングで行うのがよいかと思われます。
管理物件をたくさん持っている不動産会社からしたら大変な労力を要するものになることは間違いないでしょう。
連帯保証人で賃貸借契約したものは、すべて保証人からあらためて印鑑をいただかなければならないので。。。
連帯保証人ではなく保証会社がより一層活躍しそうな改正となりましたね。
まとめ
◆改正民法では連帯保証人の保護拡大がなされた。
◆賃貸借の保証は「根保証契約」にあたる。
◆「根保証契約」では「極度額」を設けなければならない。
◆「極度額」の定めのない賃貸借契約書の保証人条項、連帯保証人引受承諾書などは無効となる。
◆民法改正は2020年5月31日までに施行される