3月21日から開幕する、フィギュアスケート世界選手権。
オリンピック後の世界選手権は、メンバー的に少し寂しい、とも言われている。しかし選手の平均年齢が低いためもあるだろうか、最もトップ選手の欠場が少なく、楽しみな種目は女子シングルだ。
平昌五輪を振り返りつつ、この種目が現在抱えている問題点を考えてみたい。
ロシアから15歳のアリーナ・ザギトワと、18歳のエフゲニア・メドベージェワ。日本からは17歳の坂本花織と、19歳の宮原知子。そしてカナダのケイトリン・オズモンド、22歳。イタリアのカロリーナ・コストナー、30歳。
女子の最強豪国2国から、10代の選手が二人。そしてケガを乗り越えた20代のオズモンドと、紆余曲折を経て4度目の五輪を迎えたコストナー。平昌五輪、女子フリー最終グループは、なんとも感慨深いメンバーでの一戦だった。
優勝したザギトワは、長野のタラ・リピンスキー以来の若い五輪チャンピオンだという。女子の五輪金メダリストは、ほんとうに10代の選手が続いている。
近年は06年トリノ五輪の荒川静香(24歳)、その前は92年アルベールビル五輪のクリスティ・ヤマグチ(20歳)くらいしか、20代のチャンピオンは生まれていないのだ。若いスターの活躍にはわくわくするが、やはり女子フィギュアスケート、ベテランの選手たちが大人の女性らしさで女王になるところも見たかった。
その意味では、大きなケガから復活したオズモンドが銅メダルを獲得したこと、5位に終わったが飛びぬけて最年長のコストナーが10代、20代選手と対等以上に戦えたことは、スケート界にとって大きな意義があっただろう。
ケイトリン・オズモンドは2012年、17歳のころにシニアデビュー。いきなりのスケートカナダ優勝で、当時は笑顔もかわいらしい、勢いのある選手がまた出てきたな、と思っていたが、ソチ五輪後に右脚の骨折、手術で競技を離れてしまうことになる。大きな大会の表彰台に再び立ったのは、2016年秋。
1年の休養、1年の不調に屈することなく復活してきたことに、驚いたものだ。しかも休んでいる間に基礎力を身につけ直し、大人の強さと存在感のある選手として、10代のころ以上に人々の注目を集めていく。
そのままの勢いで、2017年世界選手権銀メダル、そして平昌五輪銅メダル。今大会フリーの「ブラックスワン」も、じわじわと美しさが波のように伝わるスケート、きりりとしたポージングや軽やかで大きなジャンプなど、実に印象的だった。
彼女のメダル獲得は、現在ケガや不調で悩んでいる世界中の女子選手たちの大きな希望になるだろう。闘病のためにいったん表舞台から姿を消しながら、復帰後はオリンピック出場まで至った日本の鈴木明子が、日本の女子選手たちの大きな灯火となったように。