あの超人気ライトノベルシリーズ『とある魔術の禁書目録』や『ソードアート・オンライン』、『灼眼のシャナ』などの編集を務めた業界No.1レーベルとも言われる「電撃文庫」の編集長・三木一馬さん。同氏が担当編集を務めた作品は500冊近いとも言われていて、その累計部数は6000万部をゆうに超えています。
そんな三木さんが自身の考え方や仕事法、そして自らが手がけた大ヒット作に関するエピソードを明かす著書『面白ければなんでもあり 発行累計6000万部――とある編集の仕事目録(ライフワーク)』が、2015年12月10日(木)に発売されました! その発売を記念して、『面白ければなんでもあり』の一部を限定無料公開します。
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■『ソードアート・オンライン』桐ヶ谷直葉誕生の秘密
桐ヶ谷直葉のおっぱいは柔らかくて大きい。推定E……いやFカップはあるだろう。『ソードアート・オンライン』のヒロインの一人で、主人公・桐ヶ谷和人(キリト)の義妹である彼女には、面白い誕生秘話があります。この作品は、著者である川原礫さんの公式サイトにて掲載されていたWEB小説がもとになっています。もちろんWEB小説時代にも直葉は登場していましたが、胸に関する描写は一行も存在していませんでした。
それは二〇〇九年の夏、川原さんと『SAO』三巻の打ち合わせをしているときのこと……。僕はポツリと呟きました。
「この直葉って娘、きっとおっぱいでっかいですよ」
打ち合わせの最中、僕はよくこういう軽口、無駄口を叩いてしまいます。もちろんただの悪ふざけではありません。作家との打ち合わせの最中、キャラクターの性格やビジュアルなどを考えているとき、どうしても行き詰まることがあります。作家も編集者も無言で腕組みして数十分経ってもそのまま……ということもしばしば発生します。そんなとき、『打ち合わせは明るく楽しく!』をモットーにしている僕は(なぜかという理由は第四章で紹介します)、重くなってしまった雰囲気を払拭すべく、あえて言うなら茶化すような発言をして、澱んだ空間に新鮮な空気を流入するのです。
すこし余談になりますが、こういう放言は創作において意外とバカにできません。良いアイディアというのは『縛り』を気にして発言するときより、自由気侭に言い放っているときのほうが生まれやすいことが経験則でわかっています。ですから、打ち合わせ中は、できる限り好き勝手に思いつきを口に出します(ただし、あまりに好き勝手が過ぎると、それはそれで作者を混乱させるだけの『空気の読めていない』発言になってしまうので、そのさじ加減も重要になってくるのですが……)。ともあれ、つまり先ほどの『おっぱい』発言は、ただの『重い空気を軽くするため』の戯言でしたが、しかし口に出した瞬間「あ、でもこれはしっかりと『キャラクターを生かす』何かになっているかも」と感じたのです。
「へ!?」
聞いた直後は意表を突かれたような反応の川原さんでしたが、僕の『ギャップ理論』を聞いた後には、「ああ……でも確かに、そういうことも……あるかもしれません、たとえばですが……」と、前向きなキャラアイディアが出始めました。このとき、桐ヶ谷直葉は多くの読者に愛されるきっかけを手に入れたのです。そもそも僕は桐ヶ谷直葉という女の子には『男勝り』な印象を受けていました。
剣道部に所属する彼女は、主人公のキリトに引けをとらない剣術の腕を持ち、男友達のレコンに対しても強気な受け答えをし(これはレコンが弱気というのもありますが)、ゲーム世界での姿・リーファになったときは、より一層アクティブです。
そんな直葉だからこそ、どこかに『女の子らしさ』があれば、さらに魅力が増すと思ったのです。女の子らしさ……うん、おっぱいしかないな!!(アラフォー男性著者による魂の叫び)結果、直葉はメインヒロインであるアスナに並ぶ大人気キャラとなりました。もちろんおっぱいだけが理由ではなかったのですが、直葉に注目してもらうきっかけの一つにはなったのではと思います。
「ほらほら、なんだっけ『SAO』のあのキャラ。あの胸が超でかい……」
「ああ、直葉?」
「そう直葉!」
これは都内の某喫茶店にて、僕が偶然にも聞いてしまった隣席の方たちの会話です。胸の大きさという外見的特徴が、直葉というキャラクターの『存在を覚えてもらうきっかけ』になっている。この瞬間、僕は直葉がキャラとしてしっかり生きているという確信を得ました。ちなみに、直葉のおっぱいにはabecさんの裏設定があります。ご本人曰く、「直葉の胸はキリトがアインクラッドに入る前は大きくなかったんですよ。キリトがデスゲームにとらわれ、彼をずっと見守り続けている二年間であそこまで成長したんです!! これぞ妹力!!」とのこと。さすが僕よりもよくわかっていらっしゃる。
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その他、『ソードアート・オンライン』の朝田詩乃はなぜメガネをかけているのか? 『とある魔術の禁書目録』の御坂美琴のスカートの中身はなぜ短パンなのか? などなど、三木一馬さんが担当した作品のヒロイン、主人公たちの誕生秘話や、作品秘話があますことなく描かれた『面白ければなんでもあり 発行累計6000万部――とある編集の仕事目録(ライフワーク)』は、ファン必携の一冊!
■「面白ければなんでもあり 発行累計6000万部――とある編集の仕事目録ライフワーク」概要
【書名】面白ければなんでもあり 発行累計6000万部――とある編集の仕事目録(ライフワーク)
【著者】三木一馬
【カバーイラスト】abec
【仕様】四六判・ソフトカバー
【ページ数】296ページ
【定価】本体1,200円+税
【発売日】2015年12月10日(木)
【発行】株式会社KADOKAWA
【内容】第一線で活躍する編集者は何を考え、どう動いているのか? 今すぐ使える仕事のルールと思考法がわかる一冊。
■本書はこんな方にオススメです
・エンタメ業界に興味がある/働きたい
・編集者が何を考えているかが知りたい
・今ひとつ自分の仕事に自信が持てない
・やる気はあるのに、何をしたらいいか分からない
・面白い作品が作りたいが、煮詰まっている
・作家やクリエイターになりたい
・ラノベやアニメが好きで、その裏話が知りたい
■著者 三木一馬(みき・かずま)プロフィール
株式会社KADOKAWA アスキー・メディアワークス事業局 電撃文庫編集部編集長、 電撃文庫MAGAZINE編集部編集長。 ≪電撃小説大賞≫最終選考委員。 2000年に上智大学理工学部を卒業後、 メディアワークス入社。 2001年、 電撃文庫編集部に配属される。 そこで、 『とある魔術の禁書目録(インデックス)』(累計1580万部)、 『とある科学の超電磁砲(レールガン)』(電撃コミックス。 累計680万部)、 『ソードアート・オンライン』(全世界累計1670万部)、 『灼眼のシャナ』(累計860万部)、 『魔法科高校の劣等生』(累計675万部)、 『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』(累計500万部)、 『アクセル・ワールド』(累計435万部)、 『電波女と青春男』(累計150万部)、 『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』(累計135万部)、 『しにがみのバラッド。 』(累計130万部)、 『撲殺天使ドクロちゃん』(累計110万部)など、 ベストセラー小説シリーズの企画・編集を多数担当する。 今まで担当編集を務めた作品は約500冊におよび、 累計部数は6000万部を突破している。
《主な担当作品》
『とある魔術の禁書目録』シリーズ(著/鎌池和馬、 イラスト/はいむらきよたか)、 『ソードアート・オンライン』シリーズ(著/川原 礫、 イラスト/abec)、 『アクセル・ワールド』(著/川原 礫、 イラスト/HIMA)、 『灼眼のシャナ』(著/高橋弥一郎、 イラスト/いとうのいぢ)、 『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』(著/伏見つかさ、 イラスト/かんざきひろ)、 『魔法科高校の劣等生』(著/佐島 勤、 イラスト/石田可奈)、 『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』(著/入間人間、 イラスト/左)、 『電波女と青春男』(著/入間人間、 イラスト/ブリキ)、 『撲殺天使ドクロちゃん』(著/おかゆまさき、 イラスト/とりしも)、 『しにがみのバラッド。 』(著/ハセガワケイスケ、 イラスト/七草) ほか多数。
>>電撃文庫公式サイト
>>「面白ければなんでもあり 発行累計6000万部――とある編集の仕事目録ライフワーク」特設サイト
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