<医師の勤務環境改善で高評価>医療クラークの普及状況とその効果とは?

医師の秘書とも称される医療クラーク(メディカルクラーク、正式名称:医師事務作業補助者)が診療報酬上で初めて導入されてから2018年で10年になります※1

医師の勤務環境の改善のため導入された医療クラーク、その普及状況と効果について以下に整理します。

医療クラークの普及状況とその効果とは?

医療クラーク(医師事務作業補助者)とは?

医療クラーク、医師事務作業補助者とは、病院勤務医の負担軽減のために、医師がこれまで実施していた事務作業を代行する職員を指します。診療報酬上は平成20年度の改定時に緊急課題とされた「産科や小児科をはじめとする病院勤務医の負担の軽減」の議論の中で初めて位置づけられました。

病院勤務医の負担軽減を重点的に図るためには、医師が必ずしも自ら行う必要のない書類作成等の業務について、医師以外の者に担わせることができる体制の充実を促進するための評価の在り方について検討するべきである。

平成20年度診療報酬改定の基本方針」中央社会保険医療協議会、2007年12月12日、2ページ

 

医療クラークの業務内容には、以下のような内容が含まれます(いずれも医師の指示の下に行なうことが条件となります)。

    • 診断書などの文書作成補助
    • 診療記録への代行入力
    • 医療の質の向上に資する事務作業(診療に関するデータ整理、院内がん登録等の統計・調査、医師の教育や臨床研修のカンファレンスのための準備作業等)
    • 行政上の業務(救急医療情報システムへの入力、感染症のサーベイランス事業等)
平成20年度診療報酬改定における主要改定項目について(案)」中央社会保険医療協議会、2008年2月13日、19ページ

 

また、医師事務作業補助体制加算で算定される医療クラークは、医師の補助に専念することとなっており、医師以外の職種の指示の下に業務を行なうことはできません。

医療クラークの形態としては、主に医師の外来時に配置される外来クラークと、病棟に配置される病棟クラークに大きく分けられます。

医療クラークの普及は進んでいるのか?

現在、医療クラークはどれぐらい普及しているのでしょうか?現在の医師事務作業補助体制加算の届出状況※2を確認すると、2,743件の病院(全国の約1/3の病院)が医師事務作業補助体制加算を算定しています。平成20年度以降の推移は以下のようになっています。


医師事務作業補助体制加算の届出数の推移

「主な施設基準の届出状況等」(中央社会保険医療協議会)の各年データより

 

また、医師事務作業補助体制加算を算定していなくても医療クラークを配置している場合も合わせると、実際にはさらに多くの医療機関で医療クラークの普及が進んでいるといえます。

中医協でも高評価!医療クラーク導入の効果と今後の動き

多くの医療機関に普及してきた医療クラークですが、その導入の効果は出ているのでしょうか?平成30年度の診療報酬改定の議論で提出された資料から見てみましょう(下図)。


医師事務作業補助体制加算の届出数の推移

横断的事項(その4)」中央社会保険医療協議会、2017年11月8日、20ページ

 

15項目の勤務医の負担軽減策の中で、「効果がある」と答えた医師が6割に達したのは、「連続当直を行わない勤務シフトの導入」「交代制勤務の実施」「医師事務作業補助者の配置・増員」の3項目のみとなっています。つまり、医療クラークの配置は医師の勤務負担の軽減にとって効果的な施策であるということがいえます。

この調査資料を受けて、中医協でも高い評価を得た医師事務作業補助者の配置については、「病院勤務医の負担軽減策として効果があるものについて、医療機関の取組がさらに進むよう、複数項目の取組を計画に盛り込む」(「個別改定項目について 」中央社会保険協議会、2018年1月26日、409ページ)とあるように、平成30年の診療報酬改定でも更に推進される見込みとなっています。

医療クラークに関する医師のツイートまとめ

医療クラーク、医師事務作業補助者に関して、医師はどのように考えているのでしょうか?以下に、幾つかの医師のツイートをまとめて紹介します。

 

全般的に医療クラークに対しては、事務負担を減らすことへの期待や、実際に負担が減っていることへの感謝の念を抱いている医師が多いようです。

医師の転職に役立つ!医療クラークの配置で病院を選ぶ時のポイント

ここまで見てきたことから、医師が転職などで次の病院を選ぶ際に、医療クラークの配置の有無をポイントの一つにするというのも良いように思われます。

しかし、医師事務作業補助体制加算を算定している病院は前述の通り全国の病院の約1/3にまで増えてきているため、算定の有無だけでなく、実態も合わせて調べる必要があります。

例えば、算定していても外来ではあまり活用していないという可能性もあります。あるいは、病院の方針やクラークの配置数、能力の問題から、依頼できる業務が限られてしまったり、場合によっては二度手間が発生してしまったりして、ほとんど有効活用できていない、といったこともあるかもしれません。その他、「若手医師はクラークを利用できない」といった制約がある病院もあります。

このため、勤務先の病院の候補を詳細に比較する場合は、以下のような情報を出来る限り集めた上で検討すると良いでしょう。

    • 医療クラークの数(外来・病棟)
    • 対応業務範囲
    • 制約条件の有無(若手医師は利用できないなど)
    • 医療クラークの平均経験年数

これほど詳細に調べることが難しい場合は、医師事務作業補助体制加算の算定の有無と合わせて、「いつから算定しているのか?」だけでも調べることで、医師の勤務環境の改善に対する医療機関の姿勢を推し量る目安としても活用できます。

もちろん、中には加算の施設基準を満たしていなくとも医療クラークを配置しているような医療機関もあるため、以上に挙げたことはあくまで一つの目安として考えておくのが望ましいといえます。

また、以下のリンク先で医師事務作業補助体制加算を算定している病院一覧を掲載しています。こちらの情報を参考にしていただきつつ、必要に応じてその実態についても調べてみてはいかがでしょうか。

>>医師事務作業補助体制加算を算定している病院一覧

ここで少し自社の宣伝になりますが、上記に挙げた実態調査については、医師が個人で調べるには限界もあると思われます。そこで、メディウェルなど専門の会社に依頼し、医療機関の実態を調査してもらうといった方法を取ることも出来ます。必要に応じて活用を検討していただければ幸いです。

 

最初にお伝えした通り、2018年は医師の事務負担を軽減する医療クラークが診療報酬上で導入されてから10年という節目の年になります。

今でも多くの医療機関で導入され、効果的との調査結果が出て、さらに医師からの評判も良い医療クラークですが、今後、更なる普及を通じて、医師が患者さんや地域の人々により向き合えるようにしていきたいですね。

 
<注>

  • ※1 厳密には、医療クラークは医師以外の医療従事者も含めた事務支援者といった意味合いで使われることもあり、その場合は医師事務作業補助者とは異なるが、本記事中では区別せずに用いる。
  • ※2 地方厚生局データより。各地方で2018年1月30日現在で確認できた最新のデータを用いている。そのため、地域によって平成29年12月1日現在のものと平成30年1月1日現在のもの(北海道に関しては平成30年1月4日現在)とが混在している。詳細は医師事務作業補助体制加算を算定している病院一覧を参照。