ビジネスパーソンが仕事を続けるには、「病気の予防」や「能力を高める」ほかに、「メンタルヘルスを強化する」ことも必要不可欠な要素だ。帝京平成大学現代ライフ学部教授・ライフバランスマネジメント研究所代表の渡部 卓さんが、ビジネスパーソンが陥りがちなメンタル不調の切り抜け方を指南していく。(日経グッデイの連載コラム「働く人のココロを鍛える コンディショニング術」から転載)
昔から怒りっぽい性格を自覚していて、自分なりに気をつけている。しかし、仕事のミスを多発する部下がいて、その部下に対してはつい、言葉を荒らげてしまうことがある。最近は、その部下の普段の言動にもイライラしてしまうことがあり、パワハラにならないよう改善したいが、怒りを抑えるにはどうしたらいいだろう。
部下や後輩のミスに腹を立てることは、誰でも経験のあることだと思います。しかし、その怒りの感情をそのまま言葉や態度に出してぶつけてしまっては、相手は萎縮して、ますます失敗を引き起こしかねません。
部下の仕事のミスや許しがたい言動に接したとき、上司は怒り心頭だったとしても、感情的にならず、冷静に対処する必要があります。といっても、上司は常に感情を押し殺して部下と接しなければいけない、ということではありません。感情的に「怒る」のではなく、冷静に「叱る」ことができれば、部下の成長や信頼関係の構築につながっていくはずです。
ここで1つ注意しなければいけないことがあります。それは、今湧き上がっている「怒り」が、部下の「ミス」に対してのものなのか、ミスをした「その部下」に対してのものなのかを見極めることです。
怒りがミスに対してのものなら、怒りの爆発を防ぐ方法と、効果的な叱り方を身につけていく必要があります。一方、その部下に対しての怒りが強い場合は、部下に対する見方(認知)に偏りや誤解があることが多いので、その認知の歪みを自覚することが大切です。認知の歪みは誰にでもあるものですが、自分では気付きにくく、その歪みが大きくなってしまうと、職場の人間関係にも大きく影響してきます。
今回は怒りが爆発しそうになったときの対処法を、次回は部下への認知の歪みに気付き、改善していく方法をお話ししていきたいと思います。
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