自分のことしか考えない「50代以上」が批判の的に
報道されているNECのリストラは、2012年に行った5000人超の人員削減が直前のものだが、その後も内部ではさまざまな形で締め付けがあったようだ。
企業口コミサイトの「キャリコネ」を見ると、2013年度に退職した30代女性から、「会社の業績が悪化して派遣切りに遭った」という書き込みが寄せられている。
現場では働きを評価されていた派遣スタッフも、業績悪化によってトップダウンで契約を切られてしまう。そういう状況がすでにあったようだ。
口コミで目につくのは、退職理由に「上司」を挙げている人の割合の高さだ。2016年度に退職した30代女性は、「尊敬できる上司がいないため」とその理由を明かす。
この女性は、会社の業績が年々悪化して危機的な状況にもかかわらず、「自分たちがいる間だけ会社がもてばいいと思っている50代以上」が多いと憤る。
「会社にしがみついている人が、仕事を膨らませる」
こんなことでは、せっかくのリストラで人員を削減しても、残った社員に余計な仕事のしわ寄せが行って疲弊してしまうだけ、という結末にもなりかねない。
2017年度中に退職予定という30代男性も、退職理由に「管理職以上に尊敬できる人がほとんどおらず、みんなあまり熱心に仕事していない」点を挙げる。
同様の指摘は、2013年度に退職済みの30代男性のシステムエンジニアも書き残しており、「早い成長を希望していたため物足りなくなった。中間管理職層が極端に厚い」と明かす。
2015年度に退職した20代の研究開発担当も、過去の希望退職で優秀な人材はすでに流出してしまい、「高年齢の管理職」だけが残っていると嘆いている。
この他にも「ここにしがみつかなければならない人が残り、そういう人が仕事をつくり、膨らませ、邪魔をする」といった書き込みなど、同様の退職理由を挙げる若手が続出している。
フジテレビはバブル世代に「最高7000万円の退職金上乗せ」
共通するのは、中高年の管理職層の人数が多く、彼らの働きが悪いために、業務の効率化・スピード化を妨げられており、若手社員のやる気を削いでいるという告発だ。
こうなると、現在50歳を超えている大量採用の「バブル入社組」がボトルネックになっていることは、想像に難くない。同様の告発は2016年度に早期退職制度を実施した、あの東芝の社員からも聞かれる。
このような問題は、NECに限られるものではない。元フジテレビアナウンサーの山中秀樹氏(59歳)は、古巣で囁かれるリストラの噂について、こうツイートしている。
7000万円は「上乗せ分」なので、総額で1億円を超える人も珍しくないのだろう。そうまでしてでも、フジテレビは50歳以上の世代に、どうしても辞めてもらいたいのだ。おそらくNECだけでなく、他社でも広く同じような組織的な問題が生じているのだろう。
工場リストラの前に着手すべきは…
NECのリストラ報道には、ネット掲示板の5chにも辛辣な書き込みが並んでいる。
「ここはふんぞり返っているだけのクズ管理職が多いから、また技術者が流出するだろう」
「なんで(希望退職を)募るの?無能なやつをクビにしろよ」
「ゴミが残る。いい加減、金銭解雇認めろよ」
フジテレビもNECも、バブル世代が入社したころには業績が絶好調だった。その時代が忘れられない人たちが、業績回復のボトルネックとなっている。
これまで大企業では、「働かなくなったおじさん」を子会社に出向・転籍させて、その弊害を緩和する方策と採っていた。しかしグループ全体の経営を考えると、子会社もそんな「お荷物」を引き受ける余裕がなくなっている。
確実に言えることは、会社の収益改善を牽引するのは、本社をはじめとする「グループ内の若手技術者たち」ということだ。海外を含む最先端のインターネット技術やサービスの変化に対応できる彼らの生産性を上げないことには、業績のV字回復も望めないだろう。
工場や間接部門のリストラもさることながら、まっさきに着手すべきは「あの層」の圧縮であることは確実だ。それでも会社は時間稼ぎをして逃げ切りを許すのか、それとも会社立て直しのために摘出することができるのだろうか。