【東京】下村博文文部科学相は23日の閣議後会見で、文科省の是正要求に応じない竹富町の違法性を確認する訴訟について「提起しない」と述べた。単独採択地区となる竹富町が教科書を採択し直せば来年4月からは「違法状態」ではなくなるため訴訟の目的が達成できないと判断、提起を断念した。

 下村氏は会見で「来年度には竹富町の教科書の違法性はなくなる」と明言。その上で、「訴訟には時間がかかり、竹富町の違法性が確認されても年度途中で(育鵬社版に)教科書を変えられるかという問題がある」と説明した。

 来年4月には「違法状態」が解消される上、仮に違法性が認められて育鵬社版に変更させたとしても、来年度には竹富町が選んだ東京書籍版を使用することになるため、訴訟には意味がないと判断した。

 下村氏は共同採択地区からの竹富町の分離を認めた県の判断については「法の趣旨を踏まえたものではなく遺憾だ」と批判。「十分な調査研究ができているかの検証など今後の取り組みを注視したい」と述べた。

 文科省の前川喜平初等中等教育局長は22日、この問題で再び竹富町教委や県教委から事情を聴くことはないとの意向を示しており、竹富単独地区での採択を経て、来年4月から3年ぶりに国による無償給付が復活する。

 文科省はことし3月、採択地区協議会の答申と違う教科書を使っている竹富町は教科書無償措置法違反だとして是正要求を出した。

 しかし竹富町は「違法性はなく、教育現場での問題もない」と拒否。文科省は竹富町の違法性を確認するため、地方自治法に基づく違法確認訴訟を検討していた。