女だから言えること | 引きこもり、精神病からの生還

太ったおじさんみたいなおばあさんの皮肉とメロドラマに満ちた遺言。

勉強が苦手な子を「観察する」というお話

 この増田を見て、思い出したことを書いてみたいと思います。トラバで子供に勉強を教えることは「推理ゲームみたいで楽しい。」という記事があって、私もそれと全く同じ体験をしました。

 私自身は子供を産んだことはないのですが、とある教室で子供の勉強を見る機会を与えていただいたことがありました。その時の経験談です。いずれも小学生の話ですが、少しでも参考になれば嬉しいです。

 

算数が苦手なAさん

 その教室では基本的にはドリルで自己学習するスタイルだったのですが、ある子が質問をしてきたんですね。で、問題と計算式を見てみると、問題の問いかけと全然違う計算をしてたんです。

 で、そのドリルの最初のほうの単純な計算を見返してみると、単純計算の答えは合ってるですね。だから、「ああ、この子は計算はできるけど、文章題が苦手なんだな。」と分かりました。だから、「あなたは計算はちゃんとできるんだから、問題をちゃんと読みなさい。」と言うと、問題を読み直しても、「問題文の意味が分からない。」というのです。

 なぜ、その子が問題文の意味が分からなかったかと言うと、その文章題は、最初に一つの数式を設定し、それを前提として、その数式を色んな角度から解いてみる問題だったんですね。

 だけど、その子は、その数式を前提として解いていくっていう部分を読解できていなかったんです。そこから派生した問題だということを理解していないから、派生している問題文だけを読んでも意味が分からなったんですよね。

 だから、「その問題文じゃなくて、大元になっている問題文を読んでごらん。それから、今やっている問題の問題文を読んでごらん。」と伝えました。「大元の問題はこんなふうに計算してるよね。てことは、この問題はどう計算して欲しいって意味だと思う?」みたいな感じで聞くと、「あ、分かった!」と、すぐに正しい答えを導き出しました。A君は計算が苦手なのではなく、問題文の読解が苦手だったんですよね。

 だから、問題文を意識して読むようになったら、スラスラ問題が解けるようになって、楽しかったらしくて、当日のノルマのページ数は終わっていたのですが、もっとやりたいと先に進んでくれました。すごくルンルンで楽しそうで、こちらまで嬉しくなってしまいまいました。

 

国語が苦手なBさん

 Bさんは国語に苦手意識があるようでした。問題を解いている様子を観察してみると、どうも読解力はあるようなのですが、語彙数が少ないから苦手意識を持っているように見えました。

 Bさんが、国語のドリル中に「先生、○○って何?」と聞いてきたので、「辞書で調べなさい。」と言うと、辞書で調べ始めるのですが、「辞書に載ってない。」と言うのです。その時、私も一緒に辞書を見ていて、私はその言葉は見つけているので、ないはずはありません。

 その子の目の動きを見ていると、とても早く動いていて、どう見ても一つ一つの単語を丁寧に見ているようには見えませんでした。「この子、目で活字を追っただけで探した気になっていて、ちゃんと集中して探してないな。」と思ったので、「探し方が早いから、ゆっくり探してみなさい。」と伝えました。

 すると、また探し始めたのですが、まだ目の動きが早い。そして「ない!」と、少しイライラしはじめました。「ないことはないよ。」「指でなぞりながら、確認しながら探してごらん。」と伝えると、指でなぞるのも早い、要するに丁寧に読んでいないのです。すると、とうとう、

「先生は何もわかってない!」

「ちゃんとやってるのに!」

と、怒り始めました。

 

 これは勉強とは関係ない話ですが、「ちゃんとやってるのに!」と怒り始めるということは、普段、親に「ちゃんとやっていない。」と言われているんだろうなと想像しました。ああ、そういうふうに親に否定されたり急かされたりしてきたから、事を急ぎすぎて一つ一つのことを集中して丁寧にやる習慣がついていないのかな?と。

 だから、とりあえずBさんの怒りを肯定するために、

 

「ちゃんとやってるのは分かってるよ!

 ちゃんとやってるのは見てるから分かってる。」

と、ちゃんとやっているという言い分を認め、

 

「(言葉が)見つからなくてイライラするんでしょ?」

と、彼が上手く説明できない怒りの原因を代弁してみました。

 

 すると、すこしかんしゃく持ちなところのあるBさんですが、「うん。」と素直に落ち着いてくれました。そして、私の言った通り、指でなぞりながら辞書を引き始めました。「早い早い、もっとゆっくりと、ひとつひとつの言葉を確認しながら探してごらん。」と言うと、「あった!」と言って、喜んでくれました。

 そして、国語のプリントを続けました。Bさんは辞書をひくのが苦手だっただけで、読解力はありそうだったので、「あなたは読む力はあるんだから、辞書を丁寧に読む練習をしなさい。そしたら、もっと勉強が楽しくなると思うよ。」と伝えました。

 授業が終わった後、Bさんがわざわざ私のところに来て「先生、教えてくれてありがとうございまいた。」と言ってくれました。

 

記憶方法の教え方

 あと、人の記憶の仕方って、色んな方法があって映像で覚える人、言語で覚える人、イメージで覚える人とか色々なんですよね。だからその人に合った記憶法をアドバイスする必要があるんです。基本は自分の知っていること、身近なことに関連付けて覚えるってことなんですけど、例えば映像で覚えるタイプの人に、英語で「パイン=松」を覚えてもらう時に、日本語のパインつまりはパイナップルを脳内映像で再生してもらって、今度は松を脳内映像で再生してもらって、「パイン」という言葉で関連付けて覚えてもらう、みたいなことです。こんな感じで説明すると、自分なりの記憶方法のコツをつかむ人もいます。

 

実は子供が苦手でした

 正直、私は自分自身の生育環境が悪かったために、子供とどう接していいのか分からず、子供が苦手で、あんまり子供がかわいいと思ったことがありませんでした。

 ですけど、こういった体験を通して、子供の「かわいさ(?)」みたいなものとか、「大人(親)が子供を育てるというけど、大人(親)も子供に育てられる。」みたいなことが、少し分かったような気がしました。

 子供たちに勉強を教えているように見えて、私の方が子供に、なんか色々と教わったような感じがしました。他人の子に対してでさえ、そう感じるのですから、我が子ならなおさらでしょうね。

 私のちょっとした体験を書いてみましたが、「子供に勉強を教える」と考えるのではなく、「子供を観察する」と考え、この子は「なにで」「どこで」つまずいているのかを推理するゲームだと考えたほうが教える方も楽しく教えることができるのではないかと思いました。

 その推理を子供に伝えると、間違っていれば別のヒントをくれますし、正しければ自分で解決して乗り越えてくれます。それで、感謝までしてもらえるのですから、めっちゃ楽しかったです。

  まあ、私の場合は、お金をもらって仕事でやってたというわけではないから、そんなのんきなことが言えるわけですが。仕事で教えている方だと、きっと、どっからどうアプローチしても無理な子供に出会った方もいることでしょう。そういう方たちには、ねぎらいの言葉しかありません。

 まあ、そんな感じで、勉強を教える側の立場の人は「勉強のやり方」も含めて教えていくことになるだろうというお話でした。また、まとめ方が分からないので、こんな感じで終わります(苦笑

追記

 そういえば、むっちゃ名門の大学出身の男性が、家庭教師のバイトをしてた時には「教え方がすごくうまい」と褒められていたのに「我が子に教えるとなると途端にイライラして怒ってしまって、結局、他人に任せた」という話を聞いたことがあります。「他人の子供だと腹が立たないのに、自分の子供だと腹が立つ」とのこと。私は自分の子供を持ったことがないので、この感覚は分かりませんが、そういうこともあるらしいです。