自分の好きな音楽を子どもに聞かせるべき理由と注意点5つ
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子どものころ、父はいつも小さなラジカセを持ち歩いて音楽を流していました。今でも父の車には、「ジム・クロウチのグレイテスト・ヒッツ」というカセットケースが、ラジカセの横に転がっています。
ジム・クロウチの「You Don't Mess Around With Jim」を聞いて楽しかったかどうかは関係ありません。しかし、頭の中にその歌が焼きついているのです。科学的な明確な答えはありません。たとえ、科学が証明したとしても、それはパターンや報酬に関する功利主義理論に適合する機械的なものでしょう。
私の答えは、ほかのどんな芸術より、音楽というのはその人自身や、その人の環境を表しているものだと思います。すばらしい曲をはじめて聞いて、その曲に心奪われている人と顔を見合わせます。その人とリアルタイムで感動を分かち合い、感情を司る脳は大いなる発見をしたすべての瞬間を記憶し、その曲がラジオから流れる度にその感動を思い起こさせます。だから人は音楽を愛するのでしょう。音楽が、その時どんな人とつながっていたかを思い出させるからです。
親子と音楽の関係ではどんなことがあるでしょう? ジョニー・キャッシュの娘ロザンヌは、父と音楽についてこんな風に言っていました。
私が18歳の時、高校を卒業した後で父と一緒に旅に出ました。音楽について話しはじめたとき、父がある曲について話して、私が“その曲は知らない”と言いました。父がまた別の曲の話をして、私が「お父さん、その曲も知らないよ」と言うと、父は私が自分の音楽の系譜となる音楽について知らないことにとても驚きました。それで、父はその日のうちに私に音楽のリストをつくってくれて、「勉強だと思って聞きなさい」と言いました。そのリストの一番上には「聞いておくべきカントリー・ソング100曲」と書いてありました。
ここで私の目を引いたのは「系譜」という言葉です。ジョニーは自分の子どもであり、駆け出しのミュージシャンである娘に、自分の音楽のルーツをきちんと理解してほしかったのでしょう。系譜に世代は関係ありません。好きな音楽というのは、時代や文化、場所、人類が生まれたころにまで遡る連綿としたつながりの中にあります。レコードに針を落とすことで、その連綿としたつながりにピンを指すことになります。だから、自分の好きな音楽のリストをつくり、子どもに渡したほうがいいのです。
そこでちょっとしたアドバイスがいくつかあります。
やり過ぎない
ジョニー・キャッシュが100曲あげたのは、偉大なミュージシャン「ジョニー・キャッシュ」だからです。あなたがゴールドレコードくらいのヒット曲をつくったのであれば50曲、プラチナレコードをつくったなら75曲のリストをあげましょう。あなたがウィリー・ネルソンみたいなミュージシャンなら、100曲あげてもいいと思います。単なる会社員のお父さんなら12曲くらいじゃないでしょうか。
批判しない
大事なのは、エド・シーランのあら探しをしないことです。あなたが若かりしころ、ガンズ・アンド・ローゼズを聞いていた時に両親が耳をふさいでいたことを思い出してください。自分が理解できない音楽を批判するのは馬鹿げています。かっこいいと思う音楽に注意を向けていれば、あなたも子どもも、古いものと新しいものの間にある共通点を見つけるはずです。
がっかりしない
子どもは、あなたの好きな音楽が好きではないかもしれません。それでもいいんです! お父さんが好きだった音楽を知ることで、自分は父とは違うということ、なぜジム・クローチよりもエディ・ヴェダーのほうが好きなのかがわかりました。それは子どもにとって大事な出来事です。自分の欲求や衝動は親とは違うということを理解することで、自分の個性は独自のもので、自分は永遠に親の陰に隠れるものではないとわかります。
子どもの成長を待ち過ぎない
ロザンヌが、父のジョニーからリストを手渡されたのは18歳の時でしたが、それはずいぶん昔のことです。今や世界はとても速いスピードで進んでいます。数週間前、私の10歳の娘は友だちとチャンス・ザ・ラッパーやブルーノ・マーズの話をしていました。もう一度言いますが、今の音楽に毒されないようにするのではなく、子どもが昔の音楽は聞きたくないと思う前に、昔の音楽を共有しましょう。
臨場感を交えて話す
自分の大好きな音楽のことを話しましょう。その音楽にどんな影響を受けたのか? その歌手に感動させられたこと、そのビートに興奮させられたことを話しましょう。それがうまくいけば、子どもはホイットニー・ヒューストンの曲が流れたら静かにしたほうがいい、「Purple Rain」が流れたら親をいたわったほうがいいとわかるようになります。
気に入られないかもと心配しない
音楽の批評を押し付けようとするのではありません。正直に話して趣味が悪いと思われても、正直でいましょう。自分の人生の話をするのです。では、私の音楽のリスト「California Stars」からひとつ話をしましょう。
この曲の作詞者ウディ・ガスリーの息子は、私の父のヒーロー、アーロ・ガスリーで、ウィルコというバンドがこの曲を演奏しています。私と妻がデートをしはじめたころ、はじめて一緒にコンサートに行ったのがウィルコでした。娘が生まれたてのころ、私は1日10時間働いた後で電車に乗り、娘を抱いてジェフ・トゥイーディー(ウィルコ)に合わせて歌っていました。娘の顔を見つめながら、私は自分を取り巻く音楽の系譜に思いをはせ、思わず泣いてしまいました。それくらいすばらしい曲なんです。
Image:
Geoffrey Redick - Lifehacker US[原文]
訳:的野裕子