ドナルド・トランプ米大統領は3月13日、ツイッターに、
「マイク・ポンペオCIA長官が我々の新しい国務長官になる。彼はすばらしい仕事をしてくれるだろう! レックス・ティラーソン、奉仕してくれてありがとう!」
と書き込み、ティラーソン国務長官の解任を明らかにした。
一片のツイッターで主要閣僚の交代を告げる、前代未聞の解任劇である。
ティラーソン氏は国務長官更迭を予知していたとはいえ、出張先のアフリカで知らされた悔しさからか、13日の帰国後の記者会見ではトランプ大統領への感謝の言葉は一切発しなかった。同氏の無念は想像に難くない。
後任の国務長官に指名されたポンペオ米中央情報局(CIA)長官が国務長官に野心を抱き、2月に韓国で開催された平昌冬季五輪開会式に合わせたマイク・ペンス副大統領と北朝鮮の金正恩労働党委員長の妹・金与正党第1副部長との会談を仕掛けたと、筆者は前々号(3日付)で書いている。
傲慢に聞こえるかもしれないが、やっと新聞報道が追い付いてくれたようだ。
「読売新聞」(3月14日付朝刊)が、
《(ポンペオCIA長官は)ペンス副大統領と金与正・党中央委員会第1副部長との会談の調整にもかかわり、米朝首脳会談を巡っても水面下で関与したことから、すでに北朝鮮側と対話のパイプを持っているとの見方もある》
と報じた。
同紙報道にある「北朝鮮との対話のパイプ」として筆者が指摘したのは、「デトラニ・コネクション」である。
あらためて説明すると、元CIA東アジア作戦部長のジョセフ・デトラニ前ダニエル・モーガン国家安全保障大学院(DMGS)学長が構築した超党派の外交政策グループ(通称「トラック1.5」)のことだ。
デトラニ氏は5年前、密かに板門店の南北軍事境界線(DMZ)を越えて北朝鮮入りし、当時の最高権力機関・国防委員会(委員長・金正日労党総書記)幹部と極秘会談を行った。
その他、2016年10月にはマレーシアの首都クアラルンプールで韓成烈外務次官(当時)とも会談している。
そのデトラニ氏が組織したグループには、共和党系のジェームズ・プリスタップ国防大学院教授(ジェームズ・ベーカー国務長官時代の国務省政策企画部スタッフ)、民主党系のウェンディ・シャーマン元国務次官(クリントン政権下マデレーン・オルブライト国務長官の右腕)、スザンヌ・ディマジオ=シンクタンク「ニューアメリカ」シニア・フェローらがいる。
その中でも注目すべきは、ディマジオ女史である。同女史は昨年1年間にジュネーブ、オスロ、平壌、モスクワで外務省の崔善姫北米局長(2月下旬に外務次官に昇進。「金王朝」の一員とされる)と会談しているのだ。