一面人を大事に、スジ通す JR東海ダイヤ改正
JR各社は十七日、鉄道の利便性に直結するダイヤ改正を実施した。乗り換えや利用状況に配慮した発着時間の調整に携わるのは「スジ屋」と呼ばれる担当者。JR東海管内で在来線運行の詳細を決める東海鉄道事業本部基本・列車計画係長の岡島秀次さん(39)は「やることはやった。まな板の上のコイ」。こんな心境で改正初日を迎えた。 事務机に広げると両端がはみでてしまうほどの大きな紙。細かな網目のように見える線は縦軸が単一路線上の駅の数々、横軸が時刻の推移を示す。始発駅から終着駅までの列車の位置を点にし、つなげると斜めの線になる。目を凝らして見ると正確な斜線ではなく、十五秒単位の停車時間を示す微妙な段差も分かる。スジ(線)がぎっしり。作業者がスジ屋と呼ばれるゆえんだ。 かつては鉛筆と定規でスジを引いていたが、現在はコンピューターでの作業が中心。仮決めした運行状況を打ち込めば線になって現れる。それでも変わらないのは現場を見ることの大切さ。スジを引くまでに何度も各地の駅に出向く。 ラッシュ時間を中心にホームに立って人の流れを見続ける。「ある列車に千人乗るとしても、混む車両が偏れば乗降に時間がかかる。そんな場合は停車時間の長短を考える」。いかに円滑な移動を実現するか、頭をフル回転させる。 JR東海の場合、新幹線との接続への配慮は必須。飯田線は豊橋駅近くで名鉄車両が乗り入れるため名鉄との調整も必要だ。主要路線ではJR貨物も走る。利便性向上と一口にいっても、他社を含めた関係各所との調整は複雑を極める。ビッグデータ、人工知能(AI)といわれようが「複雑な判断が伴う、人にしかできないパズルのような仕事」と胸を張る。 今回のダイヤ改正では、高山行きの特急「ひだ」最終便の名古屋発を三十分余り繰り下げ、東京方面からの新幹線との接続で利便性を増したのが売りの一つ。「使い勝手が悪くなれば文句を言われる」という仕事にきめ細かな心配りは欠かせない。 節目を迎えても終わりはなく、ダイヤが機能しているか確認に赴く日々が続く。「朝の列車が一分変われば、お客さまの起きる時間が一分変わる。人々の生活もつくる仕事。世の中を動かす大事な基盤」。やりがいと責任を感じつつ、答えのないパズルを解く作業に挑み続ける。 (久野賢太郎) 今、あなたにオススメ Recommended by
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