トランプ大統領は「米朝決裂」を狙っている?

中間選挙に「黄信号」、いよいよ本領発揮だ

3月に入って本領を発揮しているトランプ大統領。これから安倍首相に「シンゾー、北朝鮮との会談は決裂だ。軍事オプション行くから」などと言ってくるのだろうか(写真:ロイター)

今から考えれば、2月のドナルド・トランプ米大統領は比較的おとなしかった。その間にロシアゲートの捜査が着々と進み、フロリダの高校で起きた銃乱射事件に対しては歯切れの悪い対応を繰り返し、ポルノ女優ストーミー・ダニエルズさんとの関係が蒸し返されたりもした。

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大統領の身辺では、ロブ・ポーター秘書官が元妻2人への虐待容疑で辞職に追い込まれ、お気に入りの美人広報部長のホープ・ヒックスさんがホワイトハウスを去った。

娘婿ジャレッド・クシュナー上級顧問は「セキュリティ・クリアランスの不備」を理由に遠ざけられて、身近な人が周りからどんどん減っていく。メディアの扱いも心なしか小さくなっているようで、天下のお騒がせ男も大統領就任から1年も過ぎて、さすがに鮮度が落ちてきたのかなあ、と思っていたところであった。

3月に入って反撃に出たトランプ大統領

ところがトランプさんは、今月に入ってから果敢に反撃に出た。まずは3月1日、鉄鋼とアルミへの追加関税をぶち上げた。安全保障上の理由に基づく輸入制限措置とのことであったが、筆者としては「あ、アレが原因だな」と反射的に思いましたな。

トランプさんの頭の中を占めていたのは、3月13日のペンシルベニア州第18区下院議員補欠選挙。ピッツバーグ市南方の選挙区で、かつては鉄鋼業で栄えた地域である。保護主義の風を吹かせたのは、かつての鉄鋼労働者たちを鼓舞する選挙戦術であったのだ。

435人もいる下院議員のわずか1補欠選挙のために、世界を相手に貿易戦争を吹っかけるというのはまるで「尻尾が犬を振る」ようなもの。このバランス感覚の悪さがいかにもトランプ流なのだが、ここは2016年大統領選挙で、ヒラリー・クリントン候補に20ポイント差をつけて勝った地区。すなわち、ラストベルトに位置する典型的な「トランプ王国」で、ここを落とすようなら一大事。秋の中間選挙に向けて重要な前哨戦だったのだ。

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  • NO NAMEfeae3a77570c
     過去、直接対談をせずに適当にやっていたから決着がなかった。相手がまもともな国だと思ったら大間違いだろう、常識も何もかも通用しないと見るのが妥当だ。トランプ大統領が、「よろしく」と言って握手だけで終わるとは思えないし、支持する者はそんなことは期待していない。
    「核放棄を米国の言う通りの手順で行え、さもなければ交渉決裂だ」と短刀直入に言うに決まって居る。答えは「YES/NO」しか認めないだろう。これまでのように、北朝鮮は「その代わりの条件」をいろいろ出してくるだろう。でも、「まずは放棄だ」と言うだろう。ここが歴代と違うところだ。
     金委員長は「YES」と答えると思う。戦争しても全く勝ち目は無いと気づいているはずだ。火星15号のエンジンはロシアの中古品だったが、もう使い切ったのではないか。
     問題は、会談が終わってからだろう。核技術を移転して、外貨をがっぽり稼ぐはずだ。もう終わっているかも。
    up3
    down1
    2018/3/17 12:05
  • NO NAME83f0e810f5af
    >「米朝会談は決裂しましたので、そろそろ軍事オプション行きますから心のご準備を」と言われたらもっと困るのだが。

    その「もっと困る」ことが、あり得る。
    up3
    down2
    2018/3/17 11:30
  • NO NAME744dc078b202
    金正恩は父親とは異なる性格を持っているように見え、寧ろ祖父に似ているかもしれない。北が先制攻撃を行えば、中露の支援なく、北の現体制が抹殺されることは北自身が良く知っており、現体制の維持が最大の懸案である北が先制攻撃をする可能性はかなり低い。むしろ、窮鼠猫を噛むまで急激な追い込みや挑発を回避しなければならない。
    トランプは、歴代の大統領が成し得なかった北との緊張関係の緩和を実現できれば、国内はもちろん国際的にも評価が得られる好機と考えているはずである。トランプと先代の金正日との相性は悪いように感じるが、トランプが上から目線の恫喝するような態度を取らない限り、金正恩とは実のある対話ができる可能性がある。金正恩は独裁者であるが、私腹を肥やさない民の目線の独裁者となるなら、民主主義の仮面の下で民を欺きお仲間優先の輩よりも、効率的な政治が可能である。独裁で国を建て直し、民に政治を奉還すればよい。
    up1
    down2
    2018/3/17 14:38
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