慰安婦合意反故「法より正義の国・韓国」
日本国内に“韓国疲れ”が広がっています。「どうして約束を守らず、ゴールポストを勝手に動かすのか」。慰安婦問題には同情的だった人たちさえ、さすがに呆れています。
【写真】朴槿恵政権のとき、「韓国優勢」が揺らぐきっかけとなったシーン
文在寅(ムンジェイン)政権が日韓慰安婦合意(以下、日韓合意)について、年頭に「新方針」を発表したためです。「両国が公式的に合意をした事実は否定できない」故に破棄や再交渉は否定しながらも、「日本が真実を認め、被害者の女性たちに心を尽くして謝罪し、それを教訓に再発しないよう国際社会と努力するとき、(元慰安婦の)おばあさんも日本を許すことができる。それが完全な解決だ」と、日本側に追加措置を促しました。また、日本が元慰安婦の支援財団に拠出した10億円は使わず、韓国が同額を支出すると述べました。
安倍首相と文大統領 ©共同通信社
2015年12月に朴槿恵(パククネ)政権下で結ばれた日韓合意で、韓国政府は「この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認」したはず。ところが文在寅政権に代わった途端、日韓が合意に至る外交過程の検証を行ない、結果として出てきたのが、「新方針」です。
しかし、合意は合意。それを政権が代わるごとにひっくり返されては、外交が成り立たない。そう考えるのが国際的常識です。しかし、今回見せつけられたように韓国には、その常識が通じないことがある。それはなぜか。そして、そんな隣国と日本はどう付き合っていけばいいのか。
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木村幹氏(51)は、神戸大学大学院国際協力研究科の教授。比較政治学と朝鮮半島地域研究を専門とし、『日韓歴史認識問題とは何か』などの著書がある。
日韓関係の内情に通じ、慰安婦合意の交渉過程では、朴槿恵大統領のブレーンから相談を受けた。現在の文在寅政権に近い人物の間にも知己が多い。
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法よりも正義を優先する韓国
韓国が日韓合意を反故にしようとした最大の理由は、韓国人の民主主義に対する考え方に見いだすことができるかもしれません。端的に言えば、それはかなり直接民主主義に寄っています。国民が到達した「正しい」意見に従い、反映するのが政治の役割だという考え方です。
朴槿恵大統領の弾劾が典型です。大規模なろうそくデモをテレビが報じるときの決まり文句に「これは国民の命令だ」というものがありました。国民が望み、命じているのだから、当然弾劾されるべき。結論が先にあって、民衆の「正しい」望みは実現しなければならず、実現のために知恵を出すのが、法律家であり裁判所だという理解。正義は法より上にあるものだから、国民が何が正義かについての合意に達すれば、それに合わせて法の方を変えなければならない、と考える。国際的な合意についても同様です。それが韓国の民主主義です。ある意味、極端な理想主義を奉じている人々と言っても良いでしょう。
だから世論が正義を見つけたら、それに従うのは当然だと考えられ、反論するのは難しい。それは行き過ぎれば、危ない側面も持っています。しかし、その考え方が、朴正熙(パクチョンヒ)、全斗煥(チョンドファン)と続く軍の力を背景とした抑圧的な政権に対して、粘り強く民主化を求める原動力となったことも事実です。民主化を求める勢力は、「悪い軍事政権が国民に押しつけた憲法や法律だから、それらは『正しい』憲法や法律ではない。だから我が手で『正しい』憲法や法律を作り直さなければならない」と国民に呼びかけ、民主化を実現しました。そのため韓国の人々はこの考え方の「正しさ」に自信を持ち、それに従って、民主化以後の社会を築いてきました。
つまり、韓国は日本に対してだけゴールポストを動かしているわけではなく、国内政治でも常に動かし続けています。動かしているというより、常に「正しい」サッカー場の在り方を模索し、「正しい」サッカー場を普請しているような感じです。
日本は、まったく逆の傾向を持っています。たとえ正義にもとる悪法だとわかっていても、法律を変えるまでは、それに従うべきだと考える傾向がある。正義のためであっても、法を破って直線的に、それを実現するのは間違っていると考える。日本は憲法でさえ、一度も自分で改正したことがありません。
かように同じ民主主義について、日本と韓国では考えが違う。だから話が噛み合わない。
しかし、ここで注意すべきは、このような韓国の民主主義についての考え方は、必ずしも孤立したものではない、ということです。イギリスのEU離脱、アメリカのトランプ大統領など、グローバル化に伴い、かつて国政を牽引してきた統治エリートに対する信頼が揺らぎ、それへの反発から国民の声を直接体現するような政治が世界中で求められるようになってきました。民主主義の「ポピュリズム」化です。ある意味では、韓国はこれらの国々がポピュリズムに突入する以前から、ポピュリズムをやっている。1980年代の民主化、1997年のIMFショックなどの経験によって、既成統治エリートの国政への影響力が、繰り返し排除されてきたからです。
合意は日本に「有利」だった
とは言え、それは韓国の「ポピュリズム」を前にして、日本が匙(さじ)を投げていい、ということではありません。冒頭で述べたように文在寅政権は、1月に「新方針」を発表したものの、日韓合意の再交渉は求めていません。つまり、その意味では日韓合意はちゃんと生きています。しかも、この合意は日本にとっては明らかに「有利」な内容でした。
ここで日韓合意の主な5つのポイントを振り返っておきましょう。
(1)旧日本軍の関与と日本政府の責任を認める。
(2)安倍首相が元慰安婦におわびと反省を表明する。
(3)日本は韓国が元慰安婦の支援を目的として設立する財団に10億円を拠出し、協力して事業を行う。
(4)この合意をもって、問題を最終的かつ不可逆的に解決する。
(5)韓国は在韓日本大使館前の少女像の撤去に向けて努力する。
なぜ、これらの内容が日本にとって「有利」なのか。
その最大の理由は、韓国政府や挺対協(韓国挺身隊問題対策協議会)を中心とする慰安婦支援団体が20年来、要求してきた日本政府による法的賠償を、韓国側が放棄したことです。1995年のアジア女性基金が頓挫してしまったのは、韓国側が日本政府による法的賠償でなければ、受け取らないという方針を固持したためでした。
それに対して、日本政府は一貫して1965年の日韓基本条約及びその付属協定によって「補償問題は完全かつ最終的に解決した」という立場でした。だから、法的賠償は受け容れられない、と主張してきた。
日韓合意は、この積年の最大の対立点を日本が韓国を譲歩させることで乗り越えました。こうして法的賠償ではなく、(3)のような解決法が採られることになりました。法的賠償ではないかたちで、日本政府が拠出したお金を元慰安婦に渡す(3)の方法は、実は95年のアジア女性基金とほとんど変わりませんし、10億円という規模もほぼ同じです。
日本は(1)を1993年の河野談話で認めていますし、(2)は92年の宮沢首相以降、幾人もの首相がおわびと反省を述べてきました。
つまり、日韓合意によって、日本が韓国に対して新たに譲歩しなければならないことは、ほとんどありませんでした。しかも、(4)にあるように、この合意をもって「最終的かつ不可逆的に」この問題を解決できることになり、(5)も韓国に認めさせた。これが日本にとって「有利」でないはずがない。
しかし、韓国側から見れば、これは外交的「敗北」です。しかも、韓国の朴槿恵政権は保守政権だったため、進歩派に近い挺対協や元慰安婦と何の相談もしないまま、この合意をまとめました。当然、国民は強い不満を持ちました。
なぜ韓国はそのような譲歩をしてまで日韓合意を飲んだのか。その最大の理由は、アメリカの圧力があったからです。2013年に政権がスタートした当初、朴槿恵大統領は「慰安婦問題で実効性のある解決案が出ない限り、日本と首脳会談はしない」という強硬姿勢でした。
一方の安倍首相は2013年12月に靖国神社を参拝して、アメリカ世論から厳しく批判されました。2014年4月、日本に次いで韓国を訪問したオバマ大統領は、朴槿恵大統領と会談後の共同会見で慰安婦問題について「恐るべき人権侵害の行為だ。安倍首相や日本国民も、そのことをわかっているはずだ」とかなり踏み込んだ発言もしました。この当時は「韓国優勢」と言われても不思議ではない状況でした。
2015年4月の日米首脳会談で、安倍首相はオバマ大統領に「河野談話を継承し、見直す考えはない」と明言します。このことの重要性に気づいた人は、あまりいませんでした。河野談話は単なる官房長官のコメントであって、誰に向けた約束でもありません。しかし、現職の首相がアメリカ大統領に向かって「守ります」と言った瞬間、河野談話の順守はアメリカに対する約束になり、国際公約になりました。
その間に朴槿恵大統領は、中国シフトを進めていきました。当初アメリカは、この動きに表立って注文をつけませんでした。しかし、中国が南シナ海へ積極的に進出し、米中対立が顕在化すると、「韓国はどっちの味方なのか」という批判が噴出した。決定的だったのは、2015年9月に北京で行なわれた「抗日戦争勝利70周年記念」の軍事パレードでした。天安門の楼上に習近平、プーチン、朴槿恵が揃ってパレードを観閲した。このビジュアルのインパクトは強烈でした。アメリカの多くの人々は違和感を持ち、「日米韓の連携を崩しているのは、朴槿恵の側だ。慰安婦問題でも、安倍はちゃんと譲歩しているじゃないか」という風向きになりました。
そんなアメリカの圧力を受けた韓国政府は、慰安婦問題で結果を出さないといけない状況に追い込まれた。その結果が、2015年12月28日の合意発表になります。
交渉過程の検証は大失敗
しかし、朴槿恵大統領が弾劾され、2017年に次期大統領を決める選挙戦が始まると、文在寅を含め主要候補の全ては、日韓合意の見直しを公約に掲げました。先ほども述べたように、この合意への韓国国民の根深い不満があったからです。しかも朴槿恵大統領を弾劾した勢いで「悪い朴槿恵がやったことは全部やり直せ」という「正しい」意見が出来上がっていました。
この国民の「正しい」声を受けて、文在寅政権は正義の名の下に「日韓合意」という法を変えようとした。しかし、何の理由もなしに破棄はできないので、その理由を見つけ出そうと合意過程の検証を行うことにした。最も望ましいのは、交渉過程における日本側の瑕疵(かし)をあぶり出すことですが、最初からそれは難しいだろうと思われていました。明確にあったのは、韓国内部の手続きに致命的な問題があるのではないか、という期待でした。
合意の時点で存命の元慰安婦は、47人いました。そのうち34人が、昨年末までに和解・癒やし財団を通して1億ウォン(約1000万円)を受け取っています。その事実は、反朴槿恵である進歩派と元慰安婦支援団体にはショックでした。当事者の元慰安婦たちがお金を受け取ることは、彼女らが日韓合意に必ずしも強く反発している訳ではないことを意味しています。合意への反対運動をしている人々にとっては、梯子を外されたも同然です。
95年のアジア女性基金のときには、61人の元慰安婦が日本からの「償い金」を受け取りました。しかし、この元慰安婦の行為は韓国世論からの激しいバッシングを浴びました。支援団体は、お金を受け取った元慰安婦の名前を公表した上、直接電話をかけて「民間基金のカネを受け取ることは、売春婦だったことを自ら認める行為だ」とも非難した。
しかし、今回の日韓合意では、韓国の外交部や日本が拠出したお金を元慰安婦に渡す役割を担う和解・癒し財団の努力もあり、34人の元慰安婦がお金を受け取りました。それに対する世論の批判も、ほとんどありませんでした。韓国社会はいつの間にか変わってしまっていた。
そこで支援団体が考えたのは、元慰安婦たちは騙されたに違いないということでした。平均年齢が90歳を超えたおばあさんに細かい法律的な説明をしても、理解してもらえる保証はありません。1億ウォンを持って行って、押し付けたケースがあるだろうと見込みました。
もし、騙してお金を受け取らせたとなれば、話は違ってきます。そこで調査を始めたのですが、結論から言うと、彼らの望んだ通りにはなりませんでした。和解・癒やし財団は、元慰安婦のおばあさんたちと交渉する様子の記録を撮っていたからです。あとで揚げ足取りをされないように、「この金はこういうお金で、こういう手続きです。あなたは受け取りますか?」というやり取りを証拠に残していたのです。
「正しい」民主主義を追求し、法よりも正義を優先させ、日韓の外交交渉の過程を公表してしまったことは、今回の日韓合意「新方針」発表に関わる大きな失敗だったかもしれません。なぜなら、それにより韓国外交の国際的な信頼性が極端に損なわれてしまったからです。「正しい」ことをしているのだから全部オープンにすればいい、と韓国流に考えたのでしょう。民主主義の理想としては美しいのですが、外交でこれをやると交渉は難しい。「では、軍事機密も全部オープンにするんですか?」ということになりかねない。
慰安婦記念日という時限爆弾
では、日本は民主主義や法と正義について正反対の考え方を持つ韓国とどのように付き合っていけばいいのか。
まず、認識すべきは、文在寅政権にとって、慰安婦問題の優先順位は決して高くないことです。
1月10日に文在寅大統領が年頭の記者会見をしました。日本では、日韓合意と南北首脳会談についての件だけがニュースになりましたが、実際の演説は冒頭から延々、経済問題が続きました。次に憲法改正の話が出て、そのあとにようやく南北対話。その後、平昌五輪にも触れて、終わり近くになって、ようやく日韓合意の話が入りました。このように日韓外交における慰安婦問題の占めるウェイトは現政権にとって軽い。であれば、向こう側が重視していないこの問題を日本がわざわざ取り上げる必要性は小さい。
文在寅大統領の慰安婦合意に関わる年頭記者会見を丁寧に意訳すると、「日本が真実を認めて心からの謝罪をしないと、元慰安婦のおばあさんたちは許してくれないので、真の解決にならないと私は思います」という表現です。つまり、思うだけであって要求はしない。奇妙なロジックなのですが、それにより不満を表しつつも、合意は維持するという形を取っている。
彼らが巧みなのは、ここで「新方針は日韓合意の事実上の破棄だ」という解釈を与党筋に流させていることです。政府が言えないから、与党を使ってイメージを作り、世論を上手く丸め込んだ。ある情報筋によれば、文在寅政権の合意の破棄や再交渉をしないという基本方針は、すでに昨年9月頃には決まっていた。そこから3カ月かけて、このロジックを準備した。公約を実行しなければ野党から責められる。だから早めに「損切り」を行ない、日韓合意の事実上の「棚上げ」をしたのが今回の「新方針」だ、というのが私の理解です。
繰り返しになりますが、破棄しなかった以上、日韓合意は生きています。しかも、韓国政府は「破棄も再交渉もしません。ただ、慰安婦のおばあさんたちは真の解決を求めています」という一線までしか言えないことを自ら明かすことになりました。
だから日本は今後もこれまでどおり日韓合意の履行を韓国に粘り強く求めていくことができる。これは議論のスタートラインとして、とても大事です。
しかし、同時に留意しなければいけないのは、日韓合意には「日韓両政府が協力し、全ての元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復、心の傷の癒やしのための事業を行うこととする」という一文があることです。韓国から「新方針」というボールを投げられて、日本がそれに一切協力しなければ、韓国は「合意の精神は失われたので、日本が事実上慰安婦合意を破棄した」というロジックで迫ってくる可能性もあります。
もうひとつ時限爆弾があります。韓国政府は8月14日を「慰安婦の日」と決めました。まだ具体的には何も決まっていないと思いますが、今年の8月14日には、その第1回の式典が開かれるでしょう。そこには日本政府なり日本大使館も招待を受けるはずです。そこに誰が出て行って何をするのかが、次の焦点になります。
在外日本公館の目の前にある少女像についてはどうすればいいのか。それを撤去しないのは、約束違反だと言う人がいますが、日韓合意を虚心坦懐に読めば、撤去はやはり「努力目標」でしかない。だから韓国にその「努力」を繰り返し求めるしかありません。
ただそれもあくまでソウルや釜山の在外公館の前に立てられている銅像についてのみの話です。韓国以外に設置される少女像に関しては、放っておくしかないでしょう。アメリカの街に少女像が建つと、日本の総領事館から抗議に行きますが、これは実際問題として、わざわざその存在を大々的に宣伝している結果になっている。騒がなければ小さな像が建っただけなので、地元でさえ大きな話題にならないのに、日本政府や日本人が大挙して抗議に行くことでニュースになってしまう。お世辞にも上手い方法とは言えません。
そもそも第2次世界大戦に関わる過去は日本にとって、美しい過去にはなりえません。たとえば「南京で何があったのか。正確な犠牲者数は何人だったか」を一生懸命議論しても、そもそも戦争を始めたのは日本である以上、日本のイメージが良くなる可能性など始めからない。
文在寅政権ほど日韓関係に関して何のアプローチもしてこない政権はかつてありませんでした。ある意味では歴代政権で日本を最も軽視している政権だと言ってよい。朴槿恵より前の大統領は、政権出発当初は「日韓関係の改善を」と主張して、いろいろな案を出しました。朴槿恵はその代わりに「慰安婦問題の解決を」と言いましたが、これだって形は違うけど日本への関心の表れ。でも、文在寅は何も具体的な事は言わないし、まだ来日さえしていない。昨年10月に着任した新しい駐日大使の李洙勲(イスフン)は、日本とは縁の薄い人物で、政権内に強い影響力を持っている訳でもない。これらのことは彼らが「日韓関係はこのまま膠着(こうちゃく)状態で構わない」と思っている証拠だと思います。朴槿恵は「中国のほうが日本より重要だ」と言っていたのですが、現在の韓国では、そもそも日中を比較する、などという発想自体が存在しない。米中2カ国が圧倒的に重要で、北朝鮮問題で存在感を発揮するロシアがその次。日本はそこからずっと後ろです。
安倍首相が平昌五輪の開会式に出席し、首脳会談で日韓合意の履行を求めることになりました。やらないよりはましだと思いますが、それで事態が変わるとは思えません。なぜなら、そもそも今の韓国政府には、日韓関係を改善する積極的な意思がないからです。私はよく「熟年離婚」にたとえるのですが、日韓関係は双方がお互いを必要としていた時代が終わり、気が付けば協力する理由さえ見つけられなくなっている。
その韓国が日本に対して最も恐れているのは、日韓合意へと韓国を追い詰めた日本のアメリカに対する影響力です。現在、文在寅大統領とトランプ大統領はそれほど仲がいいようには見えませんが、安倍首相はトランプ大統領と良い関係を構築しているように見えます。韓国は日本そのものは怖くなくても、日本がアメリカを動かして、米韓関係が悪化すれば大変です。
だからこそ日本にとって大切なことは、アメリカ及び国際社会を引きつけることです。2015年には安倍首相がオバマ政権との関係を改善したことが、結果的に朴槿恵大統領を追い込みました。韓国が見ているのは、日本の後ろにいるアメリカなのです。しかし、アメリカも今や自国ファーストなので、ことによると、日本を離れて、韓国に接近することもありえます。日韓合意を生きたものにするには、アメリカと国際社会を味方にしておく不断の外交努力が、これからも必要なのです。
出典:「文藝春秋」2018年3月号
(木村 幹)