1.FIDEレート1465のインド人プレーヤー
今月10日、ChessBase Indiaが1人のチェスプレーヤーの死を伝えました。インドの40歳、Shailesh Nerlikar氏です。
Nerlikarさんのプレーヤー・カードがこちらです。
ratings.fide.com レーティングは1465。彼は競技者としてはごく普通のアマチュア・プレーヤーでした。ChessBaseが彼の死を伝えた理由、それは彼が四肢の麻痺、拘縮により自力で長時間立つ、あるいは座っていることができないというハンデキャップを持ったプレーヤーだったからです。
長時間座っていられないため、対局はベッドに横たわったまま行います。駒を持って動かすことも難しいため、指し手は棒を使って駒を動かすという形で伝達されていました。
www.youtube.com 彼はこうしてFIDE公式戦を戦い、レーティングを保持していました。
2015年にはドイツのドレスデンで開かれた国際的な障碍者チェス大会にも参加しています。その大会でのNerlikarさんの勝局です。
昨年は健康状態の悪化によってあまりチェス大会に参加できなかったそうですが、FIDE公式サイトによると2017年12月にデリーで開かれた大会に参加しています。これがNerlikarさんにとって最後のFIDE公式戦でした。
彼の死を悼むとともに、ここまで戦ってきたその闘志を称えたいと思います。
2.公式ルールブックにおける障碍者の扱い
チェスの公式協議規則である「FIDE laws of Chess」には障碍を持つプレーヤーについて記載があります。
障碍="disability"は次のように定義されています。
disability: 6.2.6 A condition, such as a physical or mental handicap, that results in partial or complete loss of a person's ability to perform certain chess activities.
また、ルールの各項目でも障碍を持つプレーヤーの参加を想定した規則が設けられています。例えば駒を動かす「着手」について。
4.9 If a player is unable to move the pieces, an assistant, who shall be acceptable to the arbiter, may be provided by the player to perform this operation.
駒を動かすことができないプレーヤーは、審判員によって認められた補助者が提供されるとされています。対局時計や記録の項目にも補助者について記載があります。
視覚障碍に関しては、「D. Rules for play with blind and visually disabled players」として、非常に細かい補助規則が定められています。
触れて駒の配置を認識するための盤と駒についてはこんな具合です。
1.at least 20 by 20 centimeters;
2.the black squares slightly raised;
3.a securing aperture in each square;
4.every piece provided with a peg that fits into the securing aperture;
5.pieces of Staunton design, the black pieces being specially marked.
個人的にはもっと細かく整備できる部分もあると感じますが、こうして一般大会に障碍者が参加することを前提としたルールづくりが行われています。
3.一般の大会に出場する障碍者たち
障碍者プレーヤーたちもごく普通に一プレーヤーとしてチェス大会で戦っています。この点で注目したいのは今年開催されるチェス・オリンピアード。オリンピアードでは、国の代表に混じり、障碍者チェス団体がチームを組んで参加しています。
2016年にアゼルバイジャンのバクーで開催されたオリンピアードには、
・国際身体障碍者チェス協会(IPCA)
・国際点字チェス協会(IBCA)
・聴覚障碍者チェス委員会(ICCD)
の3チームが参加していました。各チームの戦力はどうなのでしょうか?バクーを戦ったIPCAチームはこんな編成でした。
スタート・リストの順位は150チーム中75位で、日本代表よりも上でした。IBCAは平均2294、ICCDは平均2378といずれも相当の強さです。
将来、盲目のチェスプレーヤーが世界を制する日も来るかもしれませんね!