日本のドラマは置き去りにされたのではなく、そもそも追従していない

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はいはい。
アメリカのドラマは素晴らしい。素晴らしい。予算もあるし、シナリオも練られているし。

だが、そもそも前提が全く違う環境であるということを完無視した煽りタイトルの出羽守記事にげんなりするが、案外とアメリカなどのドラマシステムを知らない人もいるかもしれないの改めて整理してみる。



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コードカット

まず米国では、地上波テレビだけでバラエティやドラマが観れない。その上、電波の受信環境にしろ狭苦しい日本とは違いなかなか難しい場所も多い。

そこでアメリカでは、CATVや衛星放送などの加入率が圧倒的に高かった。
ところがネット配信が盛り上がりを見せ、いわゆるコードカット〜CATVからネット配信サービスに乗り換える流れが強くなり始めた。
まず無料で視聴できる地上波が主体の日本と有料で能動的なCATVや配信サービスが中心のアメリカは前提条件が全く違う。

1クール

さらに放送形態も異なる。

アメリカはまずパイロット版を作成しその中の一部にGOがかかる。
放送は半年間。
次の半年はオフシーズン。
ほとんど再放送。
一年の半分しか製作されないが、再放送を含め一年を通じて流す。
だから制作費も単純に言えば二倍。
年中、新作を撮り、流している日本とはこれまた慣習が違う。

さらに言えば、製作される本数にしろアメリカと日本では桁が違う。
その中で厳選された面白い作品(しかもヒット済みの実績がある)が日本で紹介されるんだから面白いのは当たり前。
日本に紹介されることもなく、人知れず打ち切られる作品だって山ほどある。

ハリウッドに顕著だが、最近では原作不足になりつつあって、「あの有名作の映画化!」なんて聞こえはいいが、要はネタがない*1

それを出羽守であーだこーだ言ってるわけだから、実に恣意的ですね。

スターシステム

とはいえ日本のドラマは面白いものが少ないのは事実。
実際、最近は地上波で数本。あとはネトフリやプライムビデオを見てる。

日本のドラマや、これは映画にも言えることだが、いつまでもスターシステムを使わざるを得ないから作品の質が向上しない。

スターシステム……まず人気俳優を中心に据え「〇〇主演」で作品が作られる。
宣伝広告にしろ俳優がまずありき。
あのアイドルが初主演!
あのイケメンスターが豪華共演!

演技と演出 (講談社現代新書)

「誰が出てるか?」ばかりで、脚本を書いたのは誰か?演出しているのは誰なのか?には注目が集まらない。
野島伸司、三谷幸喜など一部の有名脚本家は宣伝にも使われるが、大概の脚本家、演出家の名前は何かしらのヒット作でもない限り前に出ることはない。

今朝、ワイドショーを見たら福士蒼汰に「イケメンを演じるコツは?」なんてバカな質問をしてたが、監督や脚本家に「イケメンを描くコツは?」なんて聞くインタビューがいればどれだけ滑稽だろう。

視聴率が取れる、観客を動員できるのは「面白い作品」である以前に「〇〇出演」
だから毎度同じような、数字を持っている、人気の俳優ばかりがいくつもの作品に出演することになる。

演技より、見た目と人気が前提。
そして少女漫画が原作だから原作ファンが見に行く、
そしてアイドルが主演だからファンが見に行く、
そしてあの作品の続編だから前作のファンが見に行く。

どれもこれも「最低限の動員が見込める」安パイばかり。
轟盲牌で削り取るような剛腕作品はどっかにないものか。

これはフジテレビのバラエティの作り方にも見られる。
まず坂上忍など数字を持っているタレントをキャスティングすることが前提。
数字を持ってる→安定してる。
そこに企画が付随する。

だからどこかで見たような番組の再生産が続けられる。
新しく挑戦的だったりする面白いバラエティが作られる土壌はなく、今やフジテレビがテレ東のモノマネをするようになってしまった。
めちゃイケが終わり、みなさんが終わった後に坂上忍に梅沢富美男に……もう、ね。

重要とされる価値観は何より共感。
そして安定感。
だから同じようなキャストの同じような恋愛劇が、少々のカスタムだけで毎回描かれる。誰かと誰かがくっついて離れて。
ただ単にそれだけの話を半年かけて放映し、それが終わるとまた別のカップルがくっついて離れる話を放送し始める。
それが楽しいなら、もう物事を判断する期間はとっくに腐ってんじゃないだろうか。

映画だろうがマンガだろうが、もっと言えば芸術なんか完全にそうじゃん。わかるもの以外に見る価値がないという、そういう価値観が蔓延してるじゃん。
わかることが最優先なわけじゃん。
身体のリアル/押井守、最上和子

例外

とは言え全てが全てダメなわけじゃない。
今シーズンにしろ「アンナチュラル」は一部ミステリクラスタの間で話題になった充分なクオリティの作品。
(一方で相棒はシリーズ物としての限界を見せてしまった感じもある)

深夜には東京03出演の「漫画みたいにいかない」も一話完結のコメディドラマとして(ウレロ〜好きには当然ハマる)非常によくできていた。
ワンシーズンに数本はクオリティが担保された作品がある。
大概、キャスティングが渋かったり、ほぼ題材が恋愛以外だが。

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4月始まりの春ドラマとしてはリーガルハイの脚本家古沢作品であるコンゲーム*2もの?「コンフィデンスマンJP」は期待できそう。
あとは「宮本から君へ」をテレ東の深夜枠でドラマ化するらしいが、あのイタいストーリーをどう料理するのか。
気になってる。

置き去りにするも何も、そもそも日本語で日本向けに撮ったドラマばかりの日本のテレビドラマがどこにどう置いてかれているのか。
製作される土壌とターゲットになる視聴者、予算、作品のクオリティ、言語。
日本のドラマは置いていかれているんじゃなくて、そもそも付いて行ってない。

それがいいかどうかは知らんがこんなに違う二つをわざわざ同じ土壌で比較して、ドヤ顔して何が面白いのか。

第1話 名前のない毒

第1話 名前のない毒

*1:これは日本にも言えるが

*2:詐欺などがテーマで裏切りの爽快感がある作品