放射性物質の基礎知識――「放射線」「放射能」「半減期」
2018年2月8日
物質は原子という粒でできており、原子はさらに中心の原子核とその外側を回る電子でできています。身の周りにある物質に含まれる原子核は多くが安定、つまり未来永劫にわたって変化しませんが、なかには不安定なもの、つまり時間が経つと変化してしまうものもあります。不安定な原子核をもつ原子が「放射性物質」です。
たとえば、東電福島第一原発事故で飛散したおもな放射性物質のひとつであるセシウム137は、いずれバリウム137という別の原子に変化します。これを放射性物質の「崩壊」といいます。崩壊する際には余ったエネルギーが、原子核の外に「粒子」として放出されます。これが「放射線」で、また「放射能」とは放射性物質が放射線を出す能力をいいます。
セシウム137が崩壊する際にはベータ線(その正体は電子です)とガンマ線(その正体は強い光です)をひとつずつ出します。ガンマ線のエネルギーは放射性物質の種類によって異なるので、エネルギーを測ればどんな放射性物質から出たガンマ線かがわかります。また、ストロンチウム90やトリチウムのように、ベータ線しか出さないものもあります。
放射性物質の量を測る単位が「ベクレル」です。1ベクレルの放射性物質があれば、1秒間に1個の割合で崩壊が起きます。たとえば、1キログラムあたり100ベクレルの放射性セシウムを含む食品が100グラムあれば、そのなかでは毎秒10個の放射性セシウムが崩壊しています。
また、大人の体のなかには自然放射性物質であるカリウム40が4000ベクレルほど含まれます。つまり、体のなかでは毎秒4000個のカリウム40が崩壊して放射線(この場合は多くがベータ線で約1割がガンマ線です)を出しているわけです。
放射性物質は放射線を出して別の物質に変化しますから、だんだん量が減っていきます。放射性物質の量が半分に減るまでの時間を「半減期」といい、これは放射性物質の種類によって異なります。
東京電力福島第一原発事故で飛散したおもな放射性物質は、ヨウ素131(半減期約8日)、セシウム134(半減期約2年)、セシウム137(半減期約30年)です。また、ストロンチウム90(半減期約29年)も少しありました。
ヨウ素131は半減期が短いので、すでにありません(半減期の10倍の時間が経つと、量は1/1000以下に減ります)。セシウム134も事故から7年後(執筆時点)でもとの1割以下に減っていますので、今後は汚染物質のほとんどがセシウム137だと考えておけばいいでしょう。
ここで注意しておくと、半減期の長さにかかわらず、1ベクレルの放射性物質は1秒間に1個崩壊します。放射性物質の量を重さや数ではなく、ベクレルで表すほうがいいのはそのためです。
いっぽう、体が放射線をどれだけ受けたか、いわゆる被曝量を測る単位が「シーベルト」です。被曝量はどれだけのエネルギーをもつ放射線を何個受けたかで決まります。体の外にある放射性物質から放射線を受ける「外部被曝」も、体のなかで放射性物質が崩壊して放射線を受ける「内部被曝」も同じシーベルトで測り、総被曝量はその足し算になります。
たとえば、日本人は外部と内部を合わせて平均で年間2.1ミリシーベルト(ミリは1/1000)の自然被曝(自然界にある放射性物質や宇宙線による被曝)をしているとされています。また、現在の食品の基準値は、年間の内部被曝が最大でも1ミリシーベルトに達しないように決められています。