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中国産の食べ物は米国産の食べ物より安全だった! 徐一睿「日本に漂う中国の虚像を暴く」第1回

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本当に危険な「輸入食品」をデータから導く

日本での長年にわたる勉学生活を経て、なんとか日本の大学で職を得ることができた。
いま私が担当している科目は中国経済論でもないため、中国とまったく繋がりのない、言い換えれば、中国に関心すら持っていない日本人のゼミ生を数多く迎え入れることになった。

そこでゼミの日本人学生に「中国に対する印象はどうですか?」と聞くと、内閣府のデータ以上の回答に驚かされる。
ある学生に「中国で最も悪いイメージは?」と聞いたら「食べ物」と即答された。

中国産の食べ物は危ないから、できれば食べたくないのだという。「なぜそう思うのか」と聞いたら、テレビで連日のように中国からの輸入食品問題が報道されたことが、学生たちに強いインパクトを与えていたようである。

それを反映するように、2014年10月16日号の週刊文春に「学校給食に中国食材」という特集が組まれ、これを受けて、東京都の杉並区は学校給食で「中国産食材を使用しない」と決定したことも記憶に新しい。

では、中国から輸入した食品は本当にそんなに危ないのだろうか? 第1回では、数多い中国の「虚像」のうち、この点について検証してみたい。

厚生労働省の輸入食品監視統計を分析することで、真相を明らかにすることができる。
2012年、日本に輸入された食品の届出総数は218万1495件、そのうち、中国だけの届出総数は65万431件。これは総届出件数の29.8%を占め、第2位の米国23万4245件(10.7%)、第3位のフランス21万978件(9.7%)、第4位のタイ15万5770件の合計よりも多い。

それに対して違反状況を見てみると、中国だけで221件の違反を記録、総違反件数の21.0%を占める。2位は米国190件(18.0%)、3位はベトナム103件(9.8%)となる。

違反件数の21%を占める221件の違反を中国だけで記録していることのインパクトは大きい。
だが、私はこれを「数字のマジック」と言っている。
この数字をそのまま記事にした場合、読者もそのまま読んでしまえば、「中国の食品は危険だ」と認識するのは当然のことだ。

しかし、違反件数を輸入届出件数で割って「違反率」を出せば、話がまったく別になる。
中国からの輸入食品の違反率はわずか0.03%。全輸入食品の平均違反率0.05%よりも低くいのだ。
それに対して、米国から輸入した食品の違反率は、平均違反率より高い0.08%になっている。

輸入した食品をすべて検査することは技術的に不可能であるため、無作為で抽出したサンプルを検査するのが国際的なスタンダードである。
2012年、日本における全輸入食品の検査率は10.2%であった。
ところが、中国から輸入した食品の検査率は15.1%。ちなみに、米国から輸入した食品の検査率は全体平均を下回る10.0%である。

この傾向は時系列でデータをみても確認できる。
2005年以後のデータをみると、違反件数について、中国は不動の1位を守り続けている。
検査率も、08年の毒ギョーザ事件をうけて、09年と10年は20%を超える高水準で、米国の倍にあたる。

毒ギョーザ事件前においても、中国からの輸入食品に対する検査率は突出して高い。
たとえば05年において、中国(15.4%)、全体(10.2%)、米国(7.7%)である。
検査率が高ければ、違反数が増えることはいうまでもない。

もちろん、検査率の高さ自体は中国からの輸入食品に対する不信の表れであろう。
しかし、高い検査率にもかからわず、違反率は低い。これは、逆に中国からの輸入食品の安全性を証明しているといっても過言ではない。
少なくとも、現在日本とTPP交渉している米国よりずっと安全だと言えよう。

それにもかかわらず日本のメディアは、米国からの輸入食品をほとんど叩こうとしない。TPP関連の議論において「食の安全」は放置されたままで、政府もメディアも「TPP推進」の一色である。

たしかに、たび重なる事件や報道は日本人に大きな衝撃を与えたといえる。
しかし、中国に関する報道において、日本のメディアは公平性な報道をしていない可能性がある。
これについて、もう一つの議論を参照しておこう。日経・朝日・読売の大手3紙の合同サイト「あらたにす」に「新聞案内人」というコラムがあった。2011年2月16日の同欄で、野村資本市場研究所の関志雄氏が「『新興国効果』それとも『中国効果』」として、日本のマスコミを辛口に論評している。

要約すると、マスコミにおいて「中国」と「新興国」は非対称的に扱われている、ということである。
つまり、中国にとって良いニュースは「中国」を使わず、大きく「新興国」と見出しに書く。一方、悪いニュースであれば、大きく「中国」を名指して批判する傾向がある、というのだ。

中国経済の飛躍は、日本と中国間の経済交流をいっそう促進し、日中間経済の強い相互依存関係をもたらす。
経済成長の恩恵を受けた中国人が、所得の増加により、かつては想像できないほど購買力を持って、日本にやってくる。

こういう時代だからこそ、現在の日本に漂う中国の「虚像」を暴き、真の中国像を見出す必要がある。
今回は「輸入食品の安全問題」という虚像について言及したが、これからもテーマを分けて、日本における中国の虚像を分析していきたい。

徐 一睿(じょ いちえい)
2003年慶應義塾大学経済学部卒業、2009年同大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。慶應義塾大学経済学部助教、嘉悦大学講師などを経て、現在は専修大学経済学部准教授。専門は、中国経済、財政学、金融論。
著書『中国の財政調整制度の新展開』(日本僑報社)で第8回華人学術賞、第11回日本地方財政学会佐藤賞を受賞。近著は『中国の経済成長と土地・債務問題』(慶應義塾大学出版会)。

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    Bluntman

    食の安全性を違反率で評価することこそ「数字のマジック」ではないでしょうか?違反率が小さくても違反件数が多ければ国内在住者一人当たりが違反食品を引き当てる確率は大きくなります。

    また多くの人(またはメディア)は「違反の質」を問うていると思います。地溝油から食品油を精製したり、タイヤからタピオカを製造したり、メラミンを粉ミルクに混入させたり、こんな創造性豊かな国はそう多くはないと思います。

    日本には「一事が万事」という慣用句があります(あれ?中国由来かな)。食の不安はそういうことが根本原因なんだと思いますよ。

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