「地上の地獄」シリア・東グータの日常をイラストに 空爆下の様々な愛の形
アメリア・バタリー、BBC「100ウィメン」プロジェクト担当
クリスマスツリーを囲んで座る友人たち。電話で語り合う、遠距離恋愛のふたり。パートナーのために、インターネットの接続を直そうと奮闘する男性。
ディマ・ナチャウィさんのイラストは一見、世界中でありきたりなカップルの姿を描いているように見える。だが、一連の作品群にある他の絵は、別の物語を伝えている。空爆による負傷や死だ。
シリア・東グータの人々の真実が、ナチャウィさんの作品のテーマだ。国連のアントニオ・グテレス事務総長は東グータの状況を「地上の地獄」と表現した。そこで人がどのように生き、人を愛するか、ナチャウィさんは描いている。
「住民は変わらず日常を生き、恋に落ち、愛する人を守ろうとしています」とナチャウィさんは言う。
ナチャウィさんはシリアで育ったが数年前に国を離れ、今はレバノン・ベイルートでアーティストとして暮らしている。
彼女はいくつものプロジェクトに携わり、シリアの現状を見据えてきた。
「愛とは」という名のシリーズは、ソーシャルメディア上で発表した。シリアの人々のリアルな姿や、紛争が彼らの人間関係に与えた影響を描写している。
イラストは1枚1枚、それぞれ別の匿名カップルを描き出す。ナチャウィさんは作品で描いた人々に関して、あまり詳しくは説明しない。
「このプロジェクトはとても苦しいものでした。特に、亡くなった女性を被写体にした作品を描くのは苦しかった」と彼女は語る。その作品が下の絵だ。
「どんな絵になるかを想像しながら作業を進めましたが、同時に、私の心はとても重かった」
「不幸な結末に至った内容を描くのは、とても難しいことです」
「でも、私はシリアの人の生活について考えるチャンスを得て、ありがたくも思いました。シリアの人間は生きていて、人を愛します。単なる犠牲者ではなく、行動を起こせる、主体性ある人々なのです」
「そのことを私は、自分のイラストに反映したかったのです」
反体制派が支配し「危機的という言葉すら超えている」と表現される状況の東グータ地区からは、1万2000人以上が避難したと報じられている。
いくらかの援助物資が反体制派支配地域に届けられたが、支援機関はさまだまだ必要だと語る。
2月半ばからの空爆激化で1000人以上が死亡した。その多くは子供だった。
ナチャウィさんは、国際メディアによるシリア人の描写に批判的だ。
「シリア人は、難民や被害者としてのステレオタイプを押し付けられています」と彼女は言う。
「私はそれよりも、シリアの人たちと話をして、それぞれ日常をどう過ごして、生き延びるためにどうしているかを知るほうが好きです」
紛争を遠くからみているのは「とても苦しい」と、ナチャウィさんは言う。
「辛い気分になるたびに、何かしようとします。自分をフォローしてくれる人は世界中にいるので、シリアについてその人たちが知らないことを伝えようとしているんです」
「そのために私はイラストとアートを通じて、どうにかシリアのことを伝えたいと努力しています。現状を大きく変えることは私にはできなくても、何が起きたのか次世代に見て死ってもらうため、私はイラストで社会の記憶を保存しているのです」
(英語記事 International Women's Day: Stories of love amid Eastern Ghouta's bombs)