さぁいざ退去! そんな時に気になるのは退去時の修繕費や清掃費。どこまでが入居者負担? そもそも物件を傷つけずに済む方法は?
そんな疑問を解決してくれるのが不動産のプロ・エイブル武蔵小山店の金子史明店長。さぁ、正しい知識を身につけて、退去時もお得に乗り切ろう!
うっかりによる出費を防ごう!
退去時の修理費用、入居者が負担するものと大家さんが負担するものの判断基準がわからない、なんて人もしばしば。自分でどこまで原状回復すればいいのか分からない人もいるはず。
簡単に説明すると、「怠けて・わざと」は入居者負担。「自然な消耗」は大家さん負担ということ。基本的にはこの考え方。日々の手入れを怠ってついた汚れや、引っ越しの準備中につけてしまった傷などは入居者負担になる。
反対に、冷蔵庫の後部壁面の黒ずみなど、通常使用により消耗してしまったものは大家さん負担というわけだ。
部屋の箇所別に、原則として、入居者負担となる項目、大家さんが負担する項目を一覧表にまとめてみた。この表と照らし合わせて、自分の部屋を今一度チェックしてみよう!
大前提として、まず優先されるのは「特約」!
「特約」とは、特別の条件を伴った契約のこと。退去時の原状回復においては、本来大家さんの負担となる項目を入居者が負担とすることを指す。まず優先すべきは特約なので、それ以外の項目を下記表で振り分けよう。
畳
■タバコの焼け焦げ(カーペット・フローリングも同様)
■飲み物をこぼしたことによるしみ・カビ
フローリング
■キャスター付きの椅子等によるフローリングの傷、へこみ
カーペット・その他
■飲み物をこぼしたことによるしみ・カビ
■家具の設置による床・カーペットのへこみ、跡
壁
■壁等のくぎ穴、ねじ穴、落書き
■結露の放置により拡大したしみ・カビ
■タバコのヤニ、臭い
■エアコンなどの水漏れを放置したために腐食した壁
天井
■天井に直接取り付けた照明器具の跡
柱
■飼育ペットによる柱等の傷・臭い
設備
■空焚きによる風呂釜の破損、長期間掃除しなかったことによるエアコンの故障等
水まわり
■ガスコンロ置き場・換気扇等の油汚れ、すす
■風呂・トイレ・洗面台の水垢、カビ等
畳
■畳の裏返し、表替え (破損はしていないが次の入居者確保のために行うもの)
■畳の変色(日照・建物構造欠陥による雨漏りなどで発生したもの)
(入居者が通知義務を怠った場合は入居者負担)
フローリング
■フローリングのワックスがけ
カーペット・その他
■家具の設置による床・カーペットのへこみ、跡
壁
■テレビ、冷蔵庫等の後部壁面の黒ずみ
■画鋲、ピン等の軽微な穴(下地ボードの張替えは不要な程度のもの)
■壁紙の変色(日照など自然現象によるもの)壁に貼ったポスターや絵画の跡
天井
■照明器具設置箇所の黒ずみ(電気ヤケ)
柱
■入居者の責任ではない破損等
設備
■浴槽、風呂釜の取替え
(破損はしていないが次の入居者確保のために行うもの)
■設備機器の故障、使用不能
水まわり
■経年変化により、使用するのに支障が生じた場合
どんなに気を付けていても、うっかり傷を付けてしまう場合もあるだろう。修繕費用のおおよその目安はどのくらいなのだろうか? 代表的なものをいくつか取り上げてみた。
修繕費用の目安
退去立会いの時、不動産屋さんはどんなポイントを見ているのだろうか。
実はトイレを見れば、その人が物件をきれいに使っていたかどうかがわかるという。部屋の中で1番汚れやすいトイレ。そこがきれいだと、大家さんや管理会社は「この人は部屋を大事に使ってくれていたんだ」と思うそう。
また、物件の備品がなくなっていないかのチェックも必ずしている。撤去前はしっかり掃除をし、備品類の確認をしておくのがよさそうだ。
水まわりがきれいだと不動産会社、大家さんからの印象がぐんとアップ! また、トイレの水洗レバーが壊れていると、初めから破損している場合をのぞいて入居者負担となってしまう。日ごろからチェックしておこう。
手入れを忘れがちなのが傘立ての後ろの壁。雨の湿気でめくれた壁の修理費用は入居者負担となる。こまめな換気で事前に防ごう。
雨の日、洗濯物をカーテンレールに掛けておく人も多いだろう。しかし、その重さでレールが壊れたり曲がったりした場合は入居者負担となってしまう。折りたたみ型の室内物干しやランドリーラックを使うと良い。
エルボやリモコンなどは持っていかないよう注意!
うっかり持って行ってしまいがちなアイテムNo1!? これがないと次の入居者が洗濯機の排水ホースをつなげられず、困ってしまうので注意。
こちらも意外にありがち。テレビのリモコンなどと一緒に荷物にうっかり入れないようにしよう。
汚れは落とせても、傷は元に戻せない……。そもそも物件を傷つけないで済む方法はないのだろうか。そこで使用したいのが市販の傷防止グッズ。家具による傷はホームセンターや100円ショップに売っているグッズで十分に対策することができる。退去時の自分をラクにするためにも、入居後すぐにやっておこう。
冬はあたたかいうえにインテリアのアクセントにもなる。入居したら家具を置く前に敷いておこう。
傷防止策の大定番・ラグ
100均やホームセンターなどで購入可能。床の傷を防止してくれるだけではなく、賃貸住まいにはうれしい防音効果も期待できる。
クッションシールで部屋を傷から守ろう
勢いよく棚の取っ手を開けたら、壁に当たって傷が付いちゃった! そんなうっかりを防ぐべく、事前にソフトクッションを付けておこう。
うっかり傷もソフトクッションでカバー!
入居前からあった傷はもちろん入居者負担にはならない。自分がつけたかそうでないかを明白にするためにも、写真を撮っておくなどして記録しておこう。
最初からついていた傷は写メを撮って記録しておこう
金子店長によると、部屋の撤去時は「部屋を大切に使ってきた」ことがわかるようにするといいことがわかった。入居時は部屋を外傷から守るアイテムを取り入れたり、退去時にはしっかり掃除をすることが大切。敷金が全額戻ってくるよう、以上をしっかり実践しよう。
エイブル武蔵小山店店長。お部屋探しのプロとして、日夜お客様のためにお部屋探しのお手伝いをしている。web:http://shop.able.co.jp/000000080/
文=編集部
写真=北原千恵美
イラスト=さとうみゆき
※「CHINTAI2018年1月号」の記事をWEB用に再編集し掲載しています
※雑誌「CHINTAI」2018年2月24日発売号の特集は「実働5日! 引っ越し完璧マニュアル」。こちらから購入できます(毎月24日発売)
https://www.chintai.net/magazine/