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 ブラジル、サンパウロ州の町、ノヴォ・オリゾンテ。この町のサンタ・カサ病院の玄関先には一匹の雑種犬がいる。もはやあたりまえの光景となった。

 犬はとてもおとなしく従順で、病院の中には一歩たりとも入ろうとしない。人が来れば起き上がり、礼儀正しく道を譲る。そしてまたその場に伏せて、ひたすら、病院の前で待ち続けているのである。

 この犬は、4か月前に病院に運ばれた飼い主が出てくるのを、毎日ひたすら待ち続けているのだ。

 もう二度と病院から出てくることはない飼い主を....。
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飼い主の乗った救急車を追って病院についてきた犬


 この犬の飼い主は、59歳になるホームレスの男性であった。去年の10月のある日、男性は口論の相手に刺されてしまったのである。救急車が呼ばれ、男性はサンタ・カサ病院に搬送された。

 犬は救急車のあとをずっと追いかけてきた。

 「犬は病院の入口で立ち止まると、飼い主がストレッチャーで運ばれるのをしっかりと見ていた」後に救急隊員は語った。

 その日以来、犬は毎日、この場所で飼い主を待っているのである。病院のドアは、昼間はほとんどずっと開けっ放しなのだが、建物の中に入ろうとはしない。おとなしく、病院に出入りする人に配慮しながら、じっと玄関の前で犬は待ち続けている。


飼い主は病院内で帰らぬ人に...


 残念なことに飼い主は、治療の甲斐なく病院内で亡くなってしまっていた。二度と帰らぬ人となっていたのだ。しかし、犬にそのことを伝える術はない。

 犬は今日もそこで待ち続けている。そのうち病院に出入りする多くの人々が、玄関前にいる犬の存在を気にするようになった。なぜここにいるのか?何を待っているのか?その理由は人から人へと伝えられた。

 その理由を知った人々は、犬にエサや毛布を与えるようになった。



フェイスブックで反響を呼び、無事保護されたその矢先....


 そして先月の終わり頃のこと。弁護士をしているクリスチーネ・サルデラさんがサンタ・カサ病院を訪れ、犬の話を聞いた。

 犬の姿に心を打たれたサルデラさんは、その話をフェイスブックに書きこんだ。サルデラさんは犬を救いたかった。本当は自分で犬を保護したいところであったが、自宅には既に2匹の犬がおり、3匹目はさすがに難しかったのだ。

動物から学ぶべきことはたくさんあります。この犬は毎日、サンタ・カサ病院の前で、不幸にも亡くなってしまった飼い主を待っています。犬の世話をしている人もいると聞きました。

犬は飼い主が返ってくることを信じています。この犬の飼い主への愛情は永遠のものなのです。病院の人たちも犬の意思を尊重しています。犬は人間に、本当の愛とは何かを教えてくれているのです。

 この書き込みはインターネット上で広まり、それを見た近隣の動物シェルターから、犬を保護し、里親を見つけたいという申し出があった。

 一旦はシェルターに保護されたはずだった。ところがまもなく、また病院の前に現れたのだ。犬は脱走し、3kmの距離を歩いて、最後に飼い主と別れた病院へと自力で戻ってきたのである。

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病院関係者が里親を名乗り出た。ハッピー・エンドへ向けて


 だが、ハッピー・エンドもそう遠くはないはずだ。病院の受付で働くレツィシア・ベルトルッチさんが、犬の新しい飼い主として立候補したのである。

 レツィシアさんが犬と信頼関係を築き上げている間に、病院では獣医による診察と予防接種を手配した。

 あとは時を待つばかりだ。犬がレツィシアさんに心を開き、この場を離れてもいいと思える日が来たら、その時はレツィシアさんの家で、幸せに暮らすことができるはずである。

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image credit: Marcos Lavezo/G1

References: Oddity Central / The Dodo / Neatrama など / written by K.Y.K. / edited by parumo
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コメント

1

1.

  • 2018年03月16日 11:37
  • ID:8Oxxvcow0 #
2

2. 匿名処理班

  • 2018年03月16日 11:43
  • ID:dARahzfR0 #
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goodbad0
▼このコメントに返信する

亡くなった飼い主の遺留品を嗅がせたりしたら理解してくれるんじゃないだろうか

3

3. 匿名処理班

  • 2018年03月16日 11:47
  • ID:lv1jzRw10 #
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goodbad0
▼このコメントに返信する

「飼い主が死んでしまったことを伝える術はない」
大丈夫、その必要はないんだよ、彼はそのことをすでに悟ってる。

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