物議醸す「小池公約」 突っ込みどころだらけ「12のゼロ」
小池百合子都知事(65)が率いる「希望の党」が6日に発表した衆院選(10日公示、22日投開票)の公約が物議を醸している。消費税率10%への引き上げ凍結、原発ゼロと聞こえのいいものからブラック企業ゼロ、花粉症ゼロと、首をかしげたくなるものまでさまざま。さらに小池氏の名前にかけた経済政策「ユリノミクス」には、とんだチャチャが入れられているのだ。
小池氏がアベノミクスに取って代わる新経済政策とタンカを切ったのが、自身の百合子の名をもじった「ユリノミクス」だ。ただ、発表直後からネット上では突っ込みの声が相次いだ。
英語で「urine」(ユリノ)が尿を意味し、尿の成分を識別する「urinomics」の単語まで既に存在していた。「小池氏は英語が堪能なのに調べなかったのか。造語にしても別の言葉にすればよかったのに」「英語圏でこの響きは最悪」「日本マネーを垂れ流すということ?」と散々な言われよう。言葉いじりされてしまったともいえるが、突っ込みたくもなる公約の“軽さ”だった。
まず、「3本の柱」として打ち出したのが2019年10月に予定される「消費税10%への引き上げ凍結」と「2030年までの原発ゼロ」、そして「憲法改正」。
消費増税凍結で代わりとする財源は、大企業の内部留保への課税とハードルは果てしなく高い。原発ゼロは2030年までとしたが、具体的な工程表を今後、作成するとなれば、脱原発派からも「口だけ」と眉唾に映るのも当然だ。唯一、憲法改正だけが安倍政権と波長が合うだけに現実味がある公約ともいえる。
原発を合わせた12のゼロ(隠ぺい、企業献金、待機児童、受動喫煙、満員電車、ペット殺処分、フードロス、ブラック企業、花粉症、移動困難者、電柱)も訴えた。項目を見ていくと受動喫煙、企業献金はまだしも、国政政党が重要政策として掲げるものなのか?と目を疑うものもチラホラ。「花粉症ゼロ」って何だ!?
小池氏は「とても身近な課題。社会的なロスを考えると、林や森の問題から、医療・医薬品の開発まで含めて取り組んでいく」とヤル気満々。都政担当記者は「全国でスギやヒノキを伐採するんですかね。何期務めるつもりなのか」と皮肉交じり。また「小池知事が花粉症に悩まされているという話も聞かない」というからナゾは深まるばかり。
これらのゼロ政策は、大小のテーマが混在しすぎではないか。
「待機児童や満員電車は地方では関係ない。国を挙げて取り組むにはなじまない政策が多いのは、首都・東京をターゲットにした都知事選や都議選の公約のほぼ焼き直しだからです。公認候補者選びなど仕事は山積みで公約を熟考する時間も人材も十分でないのでしょう」(同)
さらに「よく盛り込んだな」と冷やかされるのが“ブラック企業ゼロ”だ。小池氏は「激しい残業で亡くなる方まで出て海外の報道では『KAROSHI』とアルファベットで使われている。働き方改革の一環としてブラック企業ゼロを目指す」と話したが、都政関係者は「ブラックなのは小池氏の方ですよ」と皮肉る。
前日には都民ファーストの会の都議が「都民ファこそがブラックボックス」と小池氏と幹部による党の独裁運営、言論統制を告発し、離党したばかり。
また小池氏が都知事と国政政党代表の二足のワラジを履いたことで、都庁担当記者はこの間、朝から晩まで働きづめだ。
「小池氏が都政をおろそかにしていると言われたくないために公約会見は公務の前になる朝9時から。知事はタフでいいかもしれないが、追わないといけないこちらは疲労困ぱい。衆院選ではおそらく全選挙区を応援回りするんじゃないでしょうか」と戦々恐々だ。
振り返れば、小池氏が都知事選で当初、掲げた「都議会の冒頭解散」「舛添問題の第三者委員会設置」など、とっくにどこかへ行ってしまっている。「市場移転問題でも『築地は守る、豊洲を活かす』と有権者・メディア受けするキャッチーな政策とコピーを掲げるのが、小池氏の真骨頂。ただ小池劇場も最初は斬新だが、見慣れてしまうと空虚でしかない」(永田町関係者)
希望にあふれる公約のハズが、「信用ゼロ」「実現性ゼロ」と辛辣な反応が飛び交うのも無理はない。
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