この記事は日経 xTECH有料会員限定ですが、2018年3月19日5時まではどなたでもご覧いただけます。

 2018年2月26日から3月1日にかけて、スペイン・バルセロナで開催されたモバイル業界最大のイベント「Mobile World Congress 2018(MWC2018)」。世界の携帯電話事業者が積極的に5G(第5世代移動通信システム)のサービスイメージを語り、ユースケースを提示していたことが印象的だった。

 5Gの商用化は、日本では2020年頃の見通しだが、海外の一部の事業者では2018年に始まる。ユースケースについても、多数の実証実験や協業が見られるようになってきた。ここでは海外の携帯電話事業者のブース展示やインタビューを通じて、5Gのサービス像や利用イメージを整理する。

米ベライゾンは固定通信用途から5Gを開始

 早期の商用化を目指して準備を進めるのは、米ベライゾン。2018年後半にサクラメントを含む米国の3~5都市で5Gの商用サービスを開始する予定だ。なぜ、これだけ早い時期に商用サービスを始められるのか。会場内でSenior Vice President Chief Technology ArchitectのEd Chan氏に聞いた。

 3GPP(移動通信システムの標準化団体)による標準化は当初2019~2020年までかかりそうだと知った同社は5GTFというチームを形成して仕様を作り、それに沿った通信装置を開発したという。2018年後半に開始予定の5Gサービスは、無線を用いた固定通信用途のFWA(Fixed Wireless Access)で、周波数帯は28GHz帯と39GHz帯の一方または両方を使う予定である。

 FWAは、5GTFの仕様に基づきスタンドアローン(SA)の5Gネットワークを構築し、装置やCPE(Customer Premises Equipment)も5GTF仕様に対応したものを用いる。ただし3GPPにおける5G仕様の標準化が2018年6月に完了する予定で、FWAで使う装置やCPEは後にアップデートによって3GPP仕様に対応させる予定だという。

 ベライゾンはモバイルサービスも予定しているが、開始時期をまだ公表していない。Chan氏は「モバイル端末はバッテリー持ち時間を確保するためのチューニングが必要となり、時間がかかる。これに対して(FWAで使う)家庭内に設置する機器はバッテリーの問題が少ない、もしくは存在しない」と説明する。モバイルサービスでは、当初から3GPPの5G仕様に基づいた装置や端末を使用し、ネットワークはLTEとの併用を前提とした「ノンスタンドアローン(NSA)」で構築するという。

 5Gに向く用途としては、AR(拡張現実)やストリーミング配信を使うVR(仮想現実)、自動運転、ロボットの制御、ドローンの遠隔制御などを挙げる。5Gの特徴である高速大容量はもちろん、低遅延にも期待を寄せていた。

米ベライゾン Senior Vice President Chief Technology ArchitectのEd Chan氏
[画像のクリックで拡大表示]