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テクノ大喜利「ダントツ企業が割拠する半導体市場」編で、標準品を愛用する半導体ユーザー側の意見として「半導体チップの技術や供給が安定なので安心して使える」とか「ダントツ半導体メーカーが存在すれば、半導体部品の選定に悩むことがなく、調達の不安も減り、価格がたとえ高くても他のユーザーも同じという納得のしどころがある。複数半導体メーカーが存在すると避けられない悩みや労力が、ことごとく不要になる。これによって、半導体ユーザーが本来取り組むべき製品開発に、より注力できる」などと標準品に対する肯定的な意見が複数出されていた4)。
しかし、最終製品メーカーは使う部品を調達する選択肢がほとんどなければ、最終製品の差異化要因の消失を招く。ダントツ半導体企業は、レファレンスデザインまで提供し、新規参入の顧客を増やしてパイを広げようとする。このため、半導体部品は高値維持のまま、競争力のない最終製品は熾烈な価格競争に巻き込まれる。結局、ダントツ企業は、ますます繁栄するが、最終製品はすべて廉価な中国製というような結果になりかねない。実際、日本企業のパソコン、スマートフォン事業も撤退あるいは価格競争力のある中国勢に買収されてしまった。中国勢にとってはチャンス到来かもしれないが、日本勢にとっては体力を消耗するだけだろう。
ハードで差をつけるのは至難の業ならば、日本人らしくきめ細かいサービスで差をつけることは可能だろう。しかし、これにはコストが掛かる。ハードで差がつかないのなら優れたソフトウエアで差をつけるという手もあるが、毎年プロセッサー(SoCというべきか)が更新され続けるiPhoneを見ればわかる通り、競争力がある高性能ソフトを動かすには最新のハードウエアが必要である。
電子機器の中身で勝負できなければ、目を引く(優れたというべきか)デザインの筐体は、顧客に差異化が一番分かりやすいので有効な手段だ。かつて、ソニーはパソコン事業へ最後発参入で、Intel のマイクロプロセッサーとMicrosoftのOSを使う限り、性能で全く差をつけられないので、ブランド名「VAIO」を連想させるバイオレット(紫色)の天板と銀色の底板を採用し、黒色パソコンが並ぶ量販店売場でひときわ目立たせることに成功した。しかし、デザインの目新しさは長続きせず(顧客はそれに慣れてしまうし、他社に真似される)、結局は不採算のVAIO事業を手放すことになった。従って、以上述べたいずれの対抗策も、言うは易く行うは難しい。