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【質問2】独自チップ開発の潮流の中で、半導体専業メーカーは事業のどのような点を見直すべきだと思われますか? 
【回答】専横的なやり方を廃し、新規顧客の獲得に向けた用途拡大および有力顧客との協業の強化

 各半導体カテゴリーにダントツ専業メーカーが出現している3),4)。そのような企業は、スケールメリットで原価が下がるにもかかわらず、自社の繁栄のみを目指して価格をつり上げて高い利益を確保しようとしがちである。このようにテクノ大喜利「ダントツ企業が割拠する半導体市場」編で述べたが3)、現に、2018年2月のテクノ大喜利「NVIDIAの契約改定は、妥当か専横か」で採り上げたような事例さえでてきている5)。さらに、特定分野の半導体ダントツ企業は、自社の優位な地位を守るために、ライバルが新規参入できぬように参入障壁を著しく高くするするさまざまな方策を講じようとし、各国政府と独占禁止法がらみの問題を起こしがちである。

 しかし、半導体を応用した最終製品のダントツ企業やそれを目指す企業(半導体メーカーにとっては大口顧客)が、標準品との差異化を図るため独自チップを開発し出すと、事態は一変する。全く新たな設計に際して、ジム・ケラー氏が言うように、高性能化、低消費電力化が図れ、ダントツ企業ゆえのスケールメリットも生かしてコスト削減できる可能性もある。

 この流れを許していては、半導体専業メーカーは大口顧客を失い、大幅な売り上げ低下をきたす。こうした事態を避けるための対処法は、2つあろう。1つは、用途を広げてさらに広範囲の新顧客を獲得して売り上げを伸ばす努力をすることである。もともとオタク的ゲーマーしか相手にしなかったGPUは、いまや、データセンターのHPCアクセラレーター用やディープラーニング用とか自動運転用などに新たな用途が次々見い出され、さらに最近は多数の投資家による仮想通貨のマイニングへと用途を広げている。もっとも、これらの新分野でも独自ASICの開発が進んでいるので、GPUメーカーもうかうかとはしていられない5)

 もう1つの対処法は、標準チップ購買をやめて独自チップ開発に走る顧客に対して、半導体専業メーカーは、自社の莫大なリソース(人材、IP, 開発・製造環境など)を提供し、共同開発や協業をもちかけて商機をつかむことである。たとえば、米インテル(Intel)は米フェイスブック(Facebook)と、米エヌビディア(NVIDIA)はトヨタ自動車はじめ多数の企業とAIチップ開発で協業している。Intelは、中国紫光集団傘下の企業へも、Intel独自の5Gモデムなどの半導体技術を供出し、5Gスマートフォンのプラットフォームを共同で構築する6)。標準品の開発でさえ、外部の企業と協業しなければビジネスが成立しなくなってきた。狭い範囲の専業にとどまっていても、事業拡大はままならない時代になった。

■参考文献
3)服部毅:「テクノ大喜利【ダントツ企業が割拠する半導体市場】電子産業は、各分野を代表するダントツ半導体同士の闘いの場へ」、日経テクノロジーOnline、2017年9月15日
4) 伊藤元昭:「テクノ大喜利まとめ【ダントツ企業が割拠する半導体市場】ダントツ半導体メーカー、その存在は善か悪か」日経テクノロジーOnline、2017年9月21日
5) 服部毅:「テクノ大喜利 【NVIDIAの契約改定は、妥当か専横か】深層学習も自動運転も、開拓者によるGPUの目的外使用だった」日経xTECH、2018年2月15日
6)服部毅:「Intelが中国の清華紫光集団とNANDで提携」、マイナビニュース、2018年3月6日

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