霞が関文学としての森友文書

2018年3月16日(金)

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 今週のはじめに財務省が森友関連文書の書き換えを認める方針(←方針かよ)を発表して以来、世間の空気は微妙に険しくなっている。

 論点は多岐にわたるが、ざっと考えて以下のような疑問点が浮かぶ。

  • 改ざんに関与した官僚は何を隠蔽したかったのか。
  • 彼らは、何におびえているのか。
  • 「佐川(宣寿・前国税庁長官)の(国会での)答弁と決裁文書の間に齟齬があった、誤解を招くということで佐川の答弁に合わせて書き換えられたのが事実だと思います」という麻生太郎財務相の説明が示唆している「誤解」とは、具体的に誰のどのような認識を指しているのか。
  • 佐川氏の答弁が虚偽でなかったのだとすると、その真実の答弁と齟齬していたとされる決裁済みの文書の方に虚偽が含まれていたことになるわけだが、その「虚偽」とは具体的に何を指すのか。そして、その「虚偽」と、文書の改ざん部分は整合しているのか。
  • 通常、国会答弁では、質問側が事前に内容を通告する。とすると、当日、佐川氏とともに答弁した首相は、事前に情報を共有をしたはずなのだが、その共有していた情報とはつまるところ改ざん済みの文書ではなかったのか。
  • 改ざんのタイミングは、佐川氏が国会で答弁をした後ではなくて、安倍総理が森友学園の認可や国有地の払い下げについて「私や妻が関係していたということになれば、首相も国会議員も辞める」と答弁した2月17日の後なのではなかったのか。

 どれもこれも、簡単に答えの出る問いではない。
 これらの謎は、今後、国会の審議やメディアの取材を通じて少しずつ明らかになることだろう。

 いずれにせよ、私のような者が取り組むべき仕事ではない。私の力でどうにかなる課題でもない。
 なので、当稿では、「言葉」の問題に焦点を絞って、森友文書改ざんの背景を考えてみることにする。

 今週は、しばらくぶりに熱心にテレビを見たのだが、なかでも印象に残ったのは、さる民放の情報番組にゲストとして出演していた元官僚の女性のコメントだった。彼女は、改ざん前の決裁文書を読んだ感想として、

「通常、この種の文書の中に個人名を書くことはない」
「ところが、この文書には政治家の個人名とその個人の関わり方が具体的に詳述されている」
「交渉過程をこれほど執拗に記述した文書は見たことがない」
「異様さを感じる」

 といった感じの言葉を漏らしていた。
 なるほど。

 私は、官僚の書くこの種の文書に詳しい者ではないのだが、それでも、件の決裁文書の異様さはなんとなくだが、感知し得ている。たしかに、あの文書は「異様」だった。

コメント1件コメント/レビュー

>「野党は重箱の隅ばっかりつついてないできちんと議論しろよ」「マスゴミの印象操作にはうんざりだ」
みたいなことを言っている政権支持層の中には、そもそもの傾向として、議論や読解を受け付けない人々がかなりのパーセンテージで含まれているのではないか。

確かに、読解力の低い政権支持層は「一定量」いると思います。
逆に、政権"非"支持層にも議論や読解を受け付けようとしない人々が一定量いるのです。
それらの人々は理性的なようでいて、実際のところ感情論や個人攻撃に終始している。
これはアメリカや欧州でも多く見られる傾向だと思っています。

情緒的な保守層は相変わらずであって、急速に変化してきているのは多様性や理性を重んじてきたリベラル層なのではないかと個人的には思っています。
これが、私自身アメリカや欧州で感じてきた肌感覚です。(2018/03/16 01:10)

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「霞が関文学としての森友文書」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

>「野党は重箱の隅ばっかりつついてないできちんと議論しろよ」「マスゴミの印象操作にはうんざりだ」
みたいなことを言っている政権支持層の中には、そもそもの傾向として、議論や読解を受け付けない人々がかなりのパーセンテージで含まれているのではないか。

確かに、読解力の低い政権支持層は「一定量」いると思います。
逆に、政権"非"支持層にも議論や読解を受け付けようとしない人々が一定量いるのです。
それらの人々は理性的なようでいて、実際のところ感情論や個人攻撃に終始している。
これはアメリカや欧州でも多く見られる傾向だと思っています。

情緒的な保守層は相変わらずであって、急速に変化してきているのは多様性や理性を重んじてきたリベラル層なのではないかと個人的には思っています。
これが、私自身アメリカや欧州で感じてきた肌感覚です。(2018/03/16 01:10)

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川越 厚 医療法人社団パリアン理事長 クリニック川越院長