大学は「人材輩出機関」ではない。東大総長が、未来の日本を考えて出した答え
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コンピューターやインターネットの登場、さらに近年ではAIや仮想通貨といった技術など、デジタル革命は年々そのスピードを増しているように見えます。
一方で日本国内は、長い不況や高齢化と少子化による労働力人口の減少などから、国会で「働き方改革」が合言葉になるなど、決して良いとはいえない労働環境です。このままでは、日本は世界から取り残されてしまうと危惧している方も少なくないのではないでしょうか。
そんな大きな問題に対して一つの答えを出そうという試みが、IBMのWebメディアMugendai(無限大)で紹介されていました。登場するのは、日本が誇る最高学府東京大学の総長である五神真さんです。
大学は人材の発射台ではない。社会を変えるための現場である
五神真さんが第30代東京大学総長に就任したのは、2015年4月。その際に発表されたのが、「東京大学ビジョン2020」です。その内容は、日本の産業力の強化や経済成長に関する提言なのですが、五神さんが特に問題紙視しているのが人材育成。言うまでもなく優秀な人材を多く輩出している同校ですが、それでは足りないと五神さんは語ります。
大学は従来のように人材を育てて社会に送り出す、いわば「人材の発射台」として機能していればよいというわけにはいきません。大学自身が社会を大きく変えていくための現場になり、変革の中心として行動しなければならない。
「グローバル化=フラット化」ではない現代。日本のパラダイムシフトの鍵となる超高速通信網「SINET」とは
今回のインタビューでも取り上げられ、近代の経済発展において欠かせないキーワードがグローバル化。その現状について五神さんは以下のような認識を示しています。
グローバル化は、いわば「先進国の価値観に沿った『良い』文化を地球全体に行き渡らせ、人々の生活を豊かにする」というイメージで始まりました。しかし、こうしたいわゆるフラット化は必ずしも皆が求めているものではないことを、多くの人が感じるようになってきました。世界が同じような単一モデルになるのではなく、個々人の多様性を尊重し、それを活力とする中で発展していく、それが今、真に求められているグローバル化だと思います。
確かに、近年のアメリカの対外政策、それにイギリスのEU離脱などを見ていると、思わずうなずいてしまいそうですね。
また五神さんは、情報革命による資本集約型から知識集約型への変革がもたらす効果についても語っています。これは、道路や港が整備された大都市圏が有利だった時代から、知恵や技術を持った人々が集まって情報を活用できる場所が重要となる時代に移り変わることで、高速で安全なネットワーク環境がキーになるという考え方です。
そして、その来るべき時代に備え開発されているのが、SINETというもの。これは、47都道府県850以上の大学や研究機関を100ギガbpsで繋ぐ超高速通信網で、日本が知識集約型社会にパラダイムシフトする大きなチャンスを秘めているのだそう。五神さんは、SINETの活用によって「各地の大学とその周辺地域は知識集約型産業の中心地になれます」と語ります。
確かに、IoTやAIの活用でデータ量はますます多くなるといわれていますから、このような超高速ブロードバンドは大変価値のあるものですよね。
その他にも、東京大学が生み出したベンチャー企業が、すでに10年で300社、全体の株価の時価総額合計約1兆4000億円にも達しているという話題や、「卓越性と多様性の相互連環」を東京大学のあるべき姿とし、理系と文系が協働して総合力を活かしていくための取り組み、そして任期付き雇用の研究者に対する五神さんの考え方など、読み応え抜群のロングインタビューは、Mugendai(無限大)よりぜひ続きをお楽しみください。
Image: Mugendai(無限大)
Source: Mugendai(無限大)
渡邊徹則