先日THE PREDATORSのライブのためにZepp DiverCityに行った。
軽い気持ちで来たのだがチケットは完売。来場者は想像以上に多く3500人くらいはいたのではないかというほどの盛況だった。
入場してからまだ始まらないステージを眺めている間にも一同、テンションはやや高め。ガヤガヤとした空間で、後ろから一緒にきた仲間と楽しげに話す女性たちの声が聞こえてくる。
彼らは近隣の県から来たのか、昼に巡ったのであろう東京の名所について話をしていた。
「初めてちゃんと東京を観光したー」
「靖国神社とか近くまで行くことはあっても入ることなんてなかったもんねー」
「なんか銅像あった!」
「うん、なんか銅像あった。誰の像だっけ?」
「銅像あったしその像の名前も見たけど、なんて名前だったか思い出せない(笑)」
それを聞きながら僕は、それは幕末の長州の兵学者の大村益次郎ですね、と声をかけたい衝動に駆られたが、その日の僕の目的はライブであって、歴史に疎い女性陣に大村益次郎の人となりを滔々と語り伝えることではなかった。益次郎さんごめん。
蔵六は幕末の兵学者として、「戦術」と「戦略」を明確に分類して考えることができた異質の人間だった。
「戦術」と「戦略」
蔵六の最終講義は、
「タクチーキのみを知ってストラトギーを知らざる者は、ついに国家をあやまつ」
という主題のもとにおこなわれた。タクチーキと蔵六が発音しているのは戦術のことであり、蔵六はこれを戦闘術と訳している。ストラトギーは戦略――蔵六は将帥術と訳していた。
—— 司馬遼太郎「花神」
「戦術」と「戦略」はどう違うのだろう。
戦術は敵と相対したときに敵を倒すための技術である。剣術や砲術は当然そうだし、軍をいかに動かすかもこれに含まれるだろう。
一方、戦略はもう少し大きい視座で戦いを図る術だ。自軍の周りの地理を知り、時勢を見て、政治を行って、戦いを有利に導く。
最初に聞いたときはぼんやりと、そういう区分もあるか?とわかったような顔で読み流していた。具体的にどのような例があるかは、幕府が品川台場に築いた砲台についてのエピソードがわかりやすい。
「江川先生の品川台場は、戦術的なものにすぎない」
と蔵六がいうのは、そこである。敵艦が台場すれすれに近づいてきてくれてはじめて砲が発射できるわけで、そういう間ぬけな軍艦はおるまい。それに艦砲の射程がどんどんのびているということを考えていない証拠に、砲台の砲がいかにも小さい。砲というものがいっさい発達しないという前提のもとに江川先生が設計したとしかおもえない、と蔵六はいうのである。
—— 司馬遼太郎「花神」
戦略的な視座に基づいたものでなければこういった間ぬけな策を打ってしまうことになる。
自分は戦略をわかっているか?
ふむふむ、と村田蔵六の話に関心しつつ本を閉じて、ふっと自分のことを振り返ってみた。
自分は戦略をわかっているだろうか?
僕はプログラマとして様々な会社に所属してきた。そこではできる限り良いプログラムを書くことでプロジェクトに貢献してきた。Common Lispのライブラリを多く作ってオープンソースで公開してきた。
これらの今までの活動はそれなりに評価されているとは思う。けれども、これらのどれを取っても「戦術」でしかない。
プログラムを書く、ということがそもそも戦術である。良いプログラムを書くのはプログラマにとって期待されていることではあるだろう。しかしそれとプロジェクトが成功するかどうかは別だ。
自分はプロジェクトの成功のために具体的な「戦略」を立てたことがあるだろうか?
いやいやそれは一介のプログラマの仕事ではなく上層のマネージャーの責務だ、という意見もあろうだろう。けれど、組織にとってそんな無責任な戦術家にどれほどの価値があるだろう。
優秀なプログラマは凡人の10倍も20倍もの生産性があると言われる。それは確かに価値があることだろう。しかし、戦場で100人や200人の敵兵を破ったからと言って自軍が戦に敗れては意味がない。
戦略家として生きる
ポケットチェンジに入社して1年が経った。
雇われた僕の役職はリードエンジニアである。ただのエンジニアではない。プロジェクトをリードし、成功に導くことを期待されている。
僕はCommon Lispの技術力を買われて雇用されたのは間違いないだろうが、雇われたのがLisp書きという戦術家ではないというのはなかなか期待が重たい。まあ勝手な責任感かもしれないけれども。
去年は30歳の誕生日を迎える節目の年だった。僕もプログラマとして次のステージに上がるべきときなのかもしれない。
そんなことを考え、今はポケットチェンジで新サービスの成功のために戦略家としてフルコミットを続けている。
僕には目標がある。
日本中で使われるサービスを作ること。そしてそのサービスがCommon Lispで動いていること。
求人
いつか僕が関わったプロダクトを紹介する機会もあるでしょう。
もし一緒にポケットチェンジで働くことに興味がある方はご連絡ください。
E-mail: eitaro.fukamachi@pocket-change.jp
そろそろ人を追加で雇っていいですよ、って言われたので誰かPocketChangeで一緒に働きたいプログラマはいませんかねー(緩募)
— fukamachi (@nitro_idiot) 2018年3月12日
作るのは自社の新サービス。
Common Lisp、JS(React/Electron)、Swift(iOS/RxSwift)、C++(組込)辺りで興味ある方〜。
詳しくはリプライかメールください。