子育てを始める前の私は、赤ちゃんというのは、とにかく泣きまくる生き物なのだと思っていた。
「赤ちゃんは泣くのが仕事」というのは一般的によく聞くセリフだし、「何をやっても泣きやまなくて、いくら可愛い我が子でも気がおかしくなりそうになる」と愚痴を言う母親は、よく見かける。ニュース番組を観ていると「子どもが泣きやまなくて」というのが犯行動機の悲しい事件は珍しいものではない。
だから私は、赤ちゃんというのは理由もなく泣き続けるもので、気まぐれでグズったり、原因もなく不機嫌になったりする、ワガママモンスターなのだと思っていた。
だけど、子育てを始めて半年経った今、全く違う考えになっている。赤ちゃんは理由もなく泣いたりしないし、原因もなく不機嫌になることなどない。
私は15秒以内に泣きやませている
というのも、私はこの半年間、息子が泣きやまなくて困ったことが一度もない。
そばにいる時なら5秒以内に、少し離れたところにいる時でも15秒以内には、息子を泣きやませている。
成長に伴って新しい一面がどんどん出てくるから、月に一回くらいは、何泣きなのかの見極めに少し手こずってしまうこともあるけれど、そんな時でも3分以内には、息子を笑顔にすることに成功している。
この半年間、ほぼワンオペ状態で(旦那さんは体力がなさすぎて育児の戦力にならない)24時間育児に取り組んできた。その結果として、赤ちゃんが泣く時は必ず理由がある、と思うようになった。
理由というのは要求。もしも赤ちゃんの泣き声を翻訳することができたとしたら、ちゃんと内容のあることを話しているし、何か具体的なことを訴えていると思う。言葉を話すことができないから泣くという手段をとっているだけで、決して無意味にギャーギャーと泣き叫んでいるわけではない。少なくとも、息子と接しているとそう思う。
そして、だからこそ、何をしても泣きやまないなんてことはない。訴えていることを汲み取って、要求に応えればすぐに泣きやむ。
では、何を訴えているのかといえば、まず基本的なこととして、赤ちゃんが泣くときのその理由は、8割がたが下記の5つのどれかだと思う。
①「お腹が空いた」
②「オムツが汚い」
③「お腹が張って気持ち悪い(ウンチやオナラがうまく出ていない)」
④「眠い」もしくは「眠くない」もしくは「眠いけどうまく眠れない」
⑤「暇」
世論を聞いていると、①~③は、ほとんどの人がすぐに対処できている印象で、④と⑤の時に「何をやっても泣きやまない」とか「赤ちゃんは理由もなく泣く」と感じている人が多いように思う。
でも、実際は、どちらもちゃんと理由がある。具体的なストレスがあって泣いている。
だから、こちらがそのストレスを解決する対応をすれば赤ちゃんはすぐに泣きやむし、先回りできるようになれば、もはや泣くこと自体がなくなる。
赤ちゃんはいつでも無限に眠れるわけではない
まず④の睡眠にまつわるストレスを防ぐために必要なことは、誰だってある程度の体力を使って疲れないと眠れない、という当たり前の認識を持つことだと思う。
赤ちゃん=「いつでも無限に眠れる生き物」「寝かしつけられたら眠るのが当然」という風に扱う親は多いけれど、それは赤ちゃんを人間扱いしてなさすぎる。
それなりに動き回って、そこそこに疲れないと眠りにつけないのは人間の基本で、それは赤ちゃんも例外ではない、と私は思う。
息子は夜泣きをしないし、寝かしつけに苦労したこともないけれど、私はいつも、眠れるだけの体力を使わせることを意識している。
こちらの都合で一方的に「今すぐ寝てね!」みたいな強引な寝かせ方はしないし、眠くなさそうなタイミングで無理やり布団に詰め込むようなこともしない。だって、そんなことされたら私ならストレスだし、そんなのは寝付けなくて当然すぎる。
だから「何時くらいに寝て欲しいなぁ」という希望がある時は、そうなるように、そこに向かっていっぱい遊んで、息子が眠くなるような過ごし方をしている。
遊び方にしても、例えば「高い高い」や抱っこなどは、こちらの体力を使うだけで、息子自身の体力を使っているわけではないから、こちらが疲れるだけで本人は一生疲れない。そうなると体力が有り余って、眠れなくて泣いてしまう。
だから私は、息子の筋肉が活躍するような遊び方をするようにしている。その一つがジャンパルーという遊具なのだけど、それに乗せると、まだ立ても座れもしないような赤ちゃんでも自力でジャンプをすることができるから、かなり良い運動になって睡眠トラブルの対策になる。
寝たいと思っていない赤ちゃん対して、親の一方的な都合で「寝なさい」と寝かしつけるようなやり方は強引すぎるし乱暴だと思う。大人の私でさえ、そんなことされたら泣きたい。
だから私は、息子に寝てほしい時は、眠れるようにいっぱい遊ぶ。その結果、夜泣きや寝かしつけの苦労とは無縁に過ごせている。(息子が寝た後につい夜更かしをして、そうこうしていたら息子が元気に起きてきて、私は寝るタイミングを逃して睡眠不足になったことはある)。
赤ちゃんが泣く理由として見落とされがちなこと
また、赤ちゃんが泣く理由で、かなり見落とされがちなのが「暇」という訴えだと思う。
でも、少し考えてみてほしい。
耳に入る言葉を意味のあるものとして聞き取ることもできなければ、もちろん話すこともできず、さらには自力では立つことも座ることもできず、本を読んだりテレビなどを見て楽しむ能力さえまだ備わっていなくて、できることといえば、せいぜい自分の指をしゃぶること、という時間の中を赤ちゃんは数ヶ月単位で生きている。
そんなの暇に決まっている。
もし私が今いきなりそうなったとしたら、絶対に泣く。めっちゃ泣く。そのくらい、退屈って立派な苦痛だし、赤ちゃんの生きてる世界は過酷だと思う。
だから私は毎日、息子の暇つぶしをすることに全力を注いでいる。
どうすれば、まだ何もできないこの子でも気分転換をできるだろうか。退屈しのぎになるだろうか。すごく考えては、片っ端から実行している。
例えば、寝かせるにしても、ずっと同じ寝心地だと飽きるから、いろんな感触のところに寝かせてみる。優反発のマットレス、赤ちゃん用のビーズクッション、ベンチソファー、ベビー布団、そして私の膝枕、腕枕、胸枕。「今はどの気分かなー?どれが新鮮に感じるかなー?」って一通り試す。
ベビー布団やビーズクッションに寝かせたらギャン泣きしたのに、ベンチソファーに寝かせたらその瞬間に泣きやむ時など、よくある。
一般的に「グズリ」などと言われている赤ちゃんの態度は、「体力が有り余ってる!」「暇!退屈!」という訴えであることがほとんどだと思う。それって、とても真っ当で筋の通った主張なのに「グズってる」だなんて失礼な話だと思う。
それから、上記の5つ以外で、意外とよくあるのが洋服にまつわるストレスを訴えて泣いているパターン。
暑い、寒い、などはもちろんとして、「縫い目が気になる」「素材が好きじゃない」などの肌触りへの不満や、「今は、なんかもっとガッツリ包まれていたい気分」などの要望があるとき、赤ちゃんはずっと泣くし、不機嫌になったりする。
だけどこれも、ちゃんと気がついて応えてあげれば瞬時に泣きやむ。脱がせたり着せたりすれば、その瞬間にコロッとご機嫌になる。
赤ちゃんは、大人よりもずっと性格がいい
そんな感じだから、何をしても泣きやまないなんてことはないし、理由もなくグズるようなワガママモンスターなんかでもない。むしろ赤ちゃんは、大人よりもずっと性格が良くて、意味不明なヘソの曲げ方をしない生き物だと思う。まだ人としてこじれていないだけに。
それに「赤ちゃんは理由もなく泣く」という価値観を持つのは、保護者として危険だとも思う。
だって、まだ喋ることができない時期の赤ちゃんは、機嫌が健康のバロメーターになっていて、不機嫌はケガや病気のサインである場合がある。
それなのに、泣いていたり不機嫌そうな様子の赤ちゃんに対して「まあ、赤ちゃんだからね」という雑な処理をして放置する習慣を持ってしまったら、具合が悪くて訴えている時に気がついてあげられないことになる。それはすごく危険なことだし、赤ちゃんにとって生き地獄になりかねない。
私は、息子が泣きだすと「どこかが痛いのかもしれない」と心配になる。不機嫌そうだと、体調不良なんだろうかと不安になる。もしそうならば、すぐに対処して楽にしてあげなくてはいけない、と思う。
赤ちゃんのご機嫌は健康の証だから、普段から当たり前にご機嫌を保つことを大事にしたい。泣かせっぱなしにするのも、不機嫌そうにさせておくのも、恐ろしくて無理。
私にとって、泣き出した息子をすぐに笑わせる努力をすることは、息子の身にトラブルが起きていないことの確認だ。
だからいつも、息子が泣いた時には「何をやっても泣きやまなかったら病院に連れて行かなきゃ!」と思いながら、暇なのかな? 寝たくないのかな?遊びたいのかな? 気分転換したいのかな?って、心当たりを試すのだけれど、そうして息子が泣きやまなかったことは一度もない。
最初に書いたように、早ければ5秒、遅くとも3分以内には、いつだって泣きやむ。
ちなみに、泣いている理由が途中で変わることもある。暇で泣き始めたら泣いてるうちにお腹が空いて、途中からは「おっぱい!」と訴えていたり。
だから泣き始めた時におっぱいを差し出してみて吸わなかったとしても、他のことを2、3個くらい試してみて、まだご機嫌にならなかったら、再度お腹が空いてないかを確認してみたりするとビンゴしたりする。
「泣かないタイプの赤ちゃん」などではない
私が「泣きやまなくて困ったことは一度もない」と言うと、「泣かないタイプの赤ちゃんなんだね」とか「たまたま育てやすい子が生まれたんだね」とか「そういう性格なんだよ」などと言われることが多いけれど、それは違うと思っている。
なぜなら、旦那さんに任せると、しょっちゅうギャン泣きしているから。
私がお風呂に入っている間中、泣き声が家中に響き続けていることはよくあるし、彼と2人でお留守番をしててもらった時など、帰ると、いつも玄関を開けた瞬間から泣き声が聞こえてくる。
彼は息子に対してしょっちゅう「ダメだ、泣きやまない」と言い、ギブアップして私に託してくる。彼が特別にヘタクソというわけでもないから(子どもをあやすのは上手い方だと思う)、この子は普通に泣くスタンダードな赤ちゃんなのだろうと思う。(彼はヘタクソではないけれど、自分が疲れていたりすると面倒くさがって要求にちゃんと応えてないから泣かせてしまっている。)
産んだばかりの頃は、「新生児はとにかく温めなきゃいけまけん」とか「赤ちゃんは厚着させなきゃダメ」などという病院の指導や親たちからのアドバイスが逆に盲点を生み出して、暑くて泣いていることに気が付くのが遅くなってしまって15分くらい泣かせてしまったことも1回だけあった。
半年経って、泣きやませるのがかなり得意になった今、「常識は育児の邪魔になるから、さっさと捨てた方がいい」と強く思う。
そんな感じなので、基本的には15秒以内に泣きやませて、可愛い笑顔を見て健康を確認する日々を送っているのだけれど、最近では、もはや泣いているところを見る機会すらなくなってきた。泣く前に、要求に気づけるようになってきた。
例えば「お腹が空いた」に関しては、息子は「ミルクが飲みたい」と思い始めると、少しだけ鼻息が荒くなるから、そのタイミングでサッとおっぱいを差し出している。
それに、夜間に泣くこともなくなった。おっぱいが恋しくなったり、寝ることに飽きて起きたくなった時など、前は泣いて知らせてきたけれど、最近はパシパシと叩いてきたり「あうあう」と話しかけてきたりして私を起こしてくるようになったため、やはり泣かない。
生後6ヶ月の、まだまだ超赤ちゃんだけれど、こちらの先回り次第では1日に1回も泣かせないことも可能だなぁと思う日々を送っている。
(とはいえ、赤ちゃんが泣くことは、泣いて知らせる能力がある証拠だし、ちゃんと自己主張ができる子に育っていることの確認ができる機会でもあるから、徹底的な先回りをするつもりはない。)