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経済・財政 ライフ 週刊現代

厳しくなった確定申告「妻のパート代」黙っていたらとんでもない目に

税務署に目を付けられる人が急増!

「このくらいなら大丈夫」そう思っていると、ある日突然、税務署から電話がかかり、確定申告の漏れを告げられる――。税務署がマイナンバーを手にしたいま、もはやこれまでの大雑把なやり方は通用しない。

10万円の追徴金

「昨年夏、会社の人事部に突然呼び出されました。税務署から人事部に連絡があったそうで、『税務署から報告があった奥さんの所得と、あなたが会社に届けている額が合わない。指摘が本当なら配偶者控除も外れることになります。どういうことでしょうか』と尋ねられたんです。驚くやら恥ずかしいやらで……」

こう語るのは、埼玉県に住む会社員の吉田智彦さん(仮名・58歳)だ。いったい何が起きたのか。吉田さんが苦々しく経緯を振り返る。

「5年前から妻が週4日のパートに出ていましたが、その年収は控除の基準である103万円を下回っていたので配偶者控除を受けていました。

3年前から妻がパート先を増やしたのですが、そこではそれほど給料をもらっているわけではない。大したことはないと思って私は会社に届けなかった。

妻も同様の考えで、確定申告をすれば所得税の還付を受けられる可能性はありましたが、まあいいかと軽く考えて、妻は確定申告をしていなかったんです」

本来、吉田さんの妻のように、パートやバイトをかけもちする場合、原則として確定申告をしなければならない。複数の給与を合計しなければ、正確な税の計算ができないため、法律でそう定められている。

だがこれまでは、現実にそうした申告をしている人は少なく、そこには「グレーゾーン」が広がっていた。

そもそも働いている本人も年間いくら稼いだか正確にはわからず、「だいたい103万円以下だろう」というところでストップをかけている主婦も多かった。

ところが吉田さん夫婦は、なんらかの事情で税務署に目をつけられたのである。

「税務署の指摘で初めて、妻の給与の合計が103万円を2万円ほど超えていたことを知りました。これまで控除されていた38万円分について新たに所得税が課されることになった。追徴課税の支払い額は10万円近くになってしまいました。

さらに、誤った年末調整をした会社に対しては、ペナルティとして『不納付加算税』(税務署から告知を受けた場合は税額の10%)も課せられたと連絡がありました。そんな大事になるなんて……」

 

これまでであれば、吉田さんの多少の「ミス」は、税務署のマンパワーの限界もあり、厳しく追及されずに済んできた。しかし、「お目こぼし」の範囲は劇的に小さくなっている。税理士の佐藤正明氏が語る。

「マイナンバーが導入されてから、税務署は飛躍的に国民の収入を把握しやすくなりました。これまでは人手が足りず、結果的に『お目こぼし』となっていた税金についても取り立てや追徴課税の請求は厳しくなっていると思います」

マイナンバーという武器を手に入れた税務署、それを束ねる国税庁の徴税意識は高くなっている。元東京国税局勤務で税理士の武田秀和氏も言う。

「マイナンバーの導入に最も力を入れていたのは国税庁。それが実現したいま、課税効率はかなり上がったのではないでしょうか」

佐川宣寿国税庁長官は「森友学園問題」に関して、廃棄していないはずの資料を「廃棄した」と証言していた。不誠実なトップを抱えた国税庁だが、自分のことは脇において、国民への締め付けは厳しく、というわけだ。