アメリカのリアル

何人殺されても銃乱射はなくならない

記事と動画で見る「銃規制反対派のリアル」

2018年3月14日(水)

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 2月14日のバレンタインデーに米フロリダ州の高校でまたしても悲劇が起きた。元生徒が銃を乱射、生徒や教師17人が死亡したマージョリー・ストーンマン・ダグラス高校の銃乱射事件だ。

 振り返れば4カ月前、米ラスベガスで58人が死亡、500人以上が負傷する史上最悪の銃乱射事件が起きたばかり。ここ数年を見ても、コネチカット州のサンディフック小学校(2012年)やカリフォルニア州の福祉施設(2015年)、フロリダ州のナイトクラブ(2016年)など全米を揺るがすような事件が起きている。

 大規模な銃乱射事件が起きるたびに、米国では銃規制強化論が浮上するが、しばらくすると下火になる。規制強化の実現に向けて、今回は多くの若者がソーシャルメディアを武器に立ち上がっているが、州レベルで見れば規制は緩和されつつある。本格的な銃規制は憲法が絡むだけにさらにハードルが高い。

 全米ライフル協会(NRA)の献金やロビイング活動によって、共和党や州議会が押さえられているというのは周知の通り。だが、銃規制が進まないのは必ずしもそれだけではない。銃器所有を支持する草の根の声を聞いていくと、規制強化に向けた道のりの遠さを痛感する。

(敬称略、ニューヨーク支局 篠原匡、長野光)

動画ルポはこちら

 「なんで銃を持っているかって? カメラを守るためだ。ここにある機材、全部合わせると1万5000ドルから2万ドルはするんだよ。このクルマよりも高い。ハンドガンはいつも身につけている」

 ネバダ州ラスベガス――。乱射事件が起きたマンダリン・ベイ・リゾート アンド カジノにほど近い射撃練習場で、ヒュー・マッカラはこう語った。

ヌードカメラマンが銃を持つ理由

 2月で80歳になったマッカラは成人雑誌にヌード写真を販売して生計を立てているフリーカメラマン。既に、銃を所有して20年以上が経つが、高齢のせいか銃の扱いがどこかおぼつかない。

 初めて銃を購入したのは1996年のこと。高価なデジタルカメラを購入した際に、防犯のために銃所有のライセンスを取得したという。

 「確か、ライセンス取得のためのテストは1日だけだったと思う。授業と実技試験だが、恐ろしく簡単だった。しかも、そこでは精神状態のチェックは求められない。私がクレイジーだったとしても、外部の人間には分からないと思うよ」

 州によって異なるが、ネバダ州で銃器を購入する際にはバックグラウンドチェック(身元審査)がある。また、上着などの下に隠して携帯する場合は当局の許可が必要だ(Concealed Carry License)。もっとも、バックグラウンドチェックが必要なのは連邦政府に認可された銃器販売店だけで、40%を占めると言われる個人間の売買には適用されない。家族間の譲渡も同様だ。

 「経歴に何か兆候がなければ、その人間がクレイジーかどうかは分からない。私だって、この後、銃を買いに行って人を殺すかもしれない。『俺は日本人が嫌いだ! パパパパン』とか言って」

 そう言うと、マッカラは指の銃口をこちらに向けた。銃を所有した後に精神に異常を来すということは十分にあるだろう。

愛用のデジカメを守るために銃を購入したと語るマッカラ(写真:Retsu Motoyoshi)

「アメリカのリアル」の目次

  • 何人殺されても銃乱射はなくならない(2018/3/14公開)

  • 外伝:「私が6歳の娘に銃をマスターさせた理由」(ある親子の対話)(2018/3/19公開予定)

  • キリスト教保守派のリアル(2018/3/22公開予定)

  • ドラッグ汚染のリアル(2018/3/26公開予定)

  • 教育改革のリアル(2018/3/29公開予定)

  • イーストパロアルトのリアル(2018/4/5公開予定)

オススメ情報

「何人殺されても銃乱射はなくならない」の著者

篠原 匡

篠原 匡(しのはら・ただし)

ニューヨーク支局長

日経ビジネス記者、日経ビジネスクロスメディア編集長を経て2015年1月からニューヨーク支局長。建設・不動産、地域モノ、人物ルポなどが得意分野。趣味は家庭菜園と競艇、出張。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

長野 光

長野 光(ながの・ひかる)

日経ビジネスニューヨーク支局記者

2008年米ラトガース大学卒業、専攻は美術。ニューヨークで芸術家のアシスタント、日系テレビ番組の制作会社などを経て、2014年日経BPニューヨーク支局に現地採用スタッフとして入社。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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