バンクーバー9条の会 通信

 

 

08/10/22  戦争中、カナダ政府によって没収されなかった唯一の日本人所有地を探索

08/10/05 日系カナダ人補償成立20周年記念-「地球のステージ」カナダ初公演 

08/08/11  原爆展・キルト展

 

       Vancouver Save Article 9

          バンクーバー9条の会

A.設立の趣旨

1.  日本国内の人びとに海外にも9条を守ろうと日本政府の改憲勢力に力強く反対し、かつ9条の理念を世界に広めようと努力している団体があることを知って欲しい。

2.  海外の9条支持平和団体と協調しネットワークを築き上げたい。

3.  今後の平和活動を効果的に推進していくために、さまざまな情報・知識・アイディアを交換しあいたい。そのためこの会議にVSA9から日本在住の会員を含めて9名が参加している。

 B.VSA9の活動目的ってなに?

発足/会員特徴:2005年5月、13人の発起人により発足。会員現在200名(08年4月25日現在)。カナダ在住日本人=115名、カナダ人(欧州系、アジア系)=61名、

日本在住者=24名

 ●04年に日本で発足した「九条の会」に賛同した13人が集まり、海外に存在するからより効果的な抗議運動が実行でき、またそれが日本の運動家たちへの刺激剤となるいう考えを元にVSA9が発足しました。それ以来、日本国外であるバンクーバーから日本政府による9条廃棄の動きに対抗し、在外邦人の声を日本に届かせ、「母国の永久平和」および9条を守ろうとする日本の運動・活動家たちを支持し、連帯し、そして9条の理念をカナダおよび世界に広めようと草の根活動に徹しております。

 C.どうしてカナダで9条?

VSA9はカナダ、とくにバンクーバーだからこそ9条の理念がより日常生活に根付きやすい土地柄であると信じております。それは2005年5月VSA9の発足記念として、「九条の会」の発起人の一人である評論家加藤周一氏が講演をされた際、「バンクーバーは西(欧米)と東(アジア)が出会うところ」と述べられたように、バンクーバーは世界のあらゆる人びとからなる多人種、多文化の街であります。

 1)カナダの多種文化・多民族社会の背景:

カナダ連邦政府の世論調査によりますと、家庭で最も話される言語は、公用語である英語・フランス語の次に中国語が3番目です。次にパンジャブ語、6位にアラビア語となっております。バンクーバーおよびその周辺都市はカナダの中でも有数の多民族都市と称されており、各国からの移民(2006年世論調査より)、中東系(イラク、イラン、アフガニスタン、パレスチナ)、インド系(インド、パキスタン、スリランカ)、アジア系(中国、台湾、韓国、フィリピン)が最も多くバンクーバーに住んでいます。またこの中には民族紛争、戦争、軍事独裁政権を逃れてきた難民も多数含まれております。

 カナダは軍事大国米国と隣接しながら、戦争・紛争地域からの難民を多く受け入れてきた国です。ベトナム戦争中、米国政府からの徴兵を避けるためにカナダに逃れてきた若者が3万人から9万人であると言われております。当時首相であったトゥルード前首相は、「カナダはミリタリズムからの避難場所になるべきだ」と宣言しました。2007年11月の時点では、イラク戦争への派兵を逃れてきた米国人兵士は約300人以上いるといわれています。

 このようにバンクーバーではいろいろな背景を持つ移民、とくに戦火を逃れてきた人たち、あるいはその歴史を背負って生きている人たちとまじかに接することができ、彼らが背負う戦争による深い精神的な傷を感じ取り、また日本人がアジア系の人たちと接触する機会をもち、日本が引き起こしたアジア・太平洋戦争によって被害を多大に受けたアジア諸国の人たちの数世代に続く心の傷、日本人に対する憎悪、怒り、そして日本の教科書では学ばなかった戦争の事実などを学び、またそれを知り日本人(とくに若い留学生など)がショックを受け、それを克服し真実を学ぶ機会を与えてくれる場所です。

 このような土地柄でありますので、9条が訴える理念が如何に大事であるかと肌身に感じ取り、平和文化を有効的に発展させる可能性を含んでいるところなのです。

 D.VSA9はバンクーバーでどんなことしているの?

VSA9の草の根活動としては、主に定期的にイベント、署名活動、会員の個人的平和活動、日本の平和団体との交流などを行っております。

 1)署名活動

2006年9月で3000以上。それ以後から現在(08年4月)まで947にいたっております。

●  署名活動は、道端で見知らぬ人たちの意見をそのまま聞くいい機会を与えてくれます。9条に関して興味を持っていい理念だと支持してくれるカナダ人もいますが、日本政府のやっている事と私たち日本人平和活動家を混同して直接非難する人たちもいます。例えば、去年安部元首相が旧日本軍の従軍慰安婦への関わりを否定したとき、カナダ人からは、「日本人は原爆被害は声高に訴えるが、自国のやった加害者としての責任を認めない国だ。ドイツがナチスの存在がなかった、ホロコーストは無かったといっているようなものだ。そんな国の奴がいくら平和を訴えても効果はないと言ったものです。

 2)イベント:

●  2005年から2006年に掛けて、ユンカーマン監督「日本国憲法」を二つの大学、および日系コミュニティー・センターなどで上映し、討論会を設けました。これは英語版の映画だったので、多くのカナダ人に日本国憲法の意義、9条の理念を明確に伝えることができ、この映画によって会員を一気に増やせるにいたりました。

●  5000人が参加し2006年6月バンクーバーで開催された世界平和フォーラム(WPF)では、VSA9がピースボート、Jalisa(日本国際法律家協会)との共催で分科会を設け、200人がこれに参加しました。この分科会で、とくに日本の方がたに「9条の会」がバンクーバーにもあるということを知っていただくことができ、また幅広く地元カナダの平和活動家に9条の理念を知ってもらえる機会を得ました。世界平和フォーラムの最終文書では「世界各国が日本の九条のように戦争放棄を定めるべきである」ことを宣言しました。

●  毎年夏日系人祭の「パウエル祭」では日系人だけではなく、多くのカナダ人が集まります。06年、07年と二回に渡り、そこで被団協からいただいたパネルを展示して「人間と原爆」展を開催しました。これには毎年バンクーバー市長が訪れますが、去年は連邦議員も出席しました。07年の展示では、日本が引き起こしたアジア・太平洋戦争の歴史的事実、つまり日本の被害者側と加害者側の両面を反映するために日本の原爆被害についての事実を語ると同時に日本軍の戦争犯罪行為―「従軍慰安婦」の事実も語り、双方のパネルも展示し、一般市民より好評を得ました。

●  2007年春、VSA9のリーフレットの作成。同年参議院選挙選が行なわれた際、自民・公明党に絶対圧勝させないぞという気持ちから、憲法9条が危機に置かれている事情を説明して、バンクーバーおよびその周辺都市に海外在住届け登録者の日本人(約2万272人(バンクーバー日本総領事より))にまずアピールして、海外からの反対の声を参議院選に反映させるために作成しました。

●  今年2月、VSA9発足以来はじめての晩餐会を主催しました。これは9条世界会議のプレイベントの一環として開催され、200名近い人びとが出席しました。この目的は、VSA9から9条世界会議に若者を含む代表を派遣するための資金集めのために行なったものです。この晩餐会では、多くのカナダ人、日本人の方がたに参加してもらい、地元の主流の新聞社のジャーナリストを招き、アジアの地政治学的な実情についてのスピーチをしてもらいました。また9条世界会議のPRビデオも上映し、一般の参加者にVSA9の運動目的、9条の価値を理解してもらう良い機会になりました。予想をはるかに超える資金を集め、また賛同者を集めることに成功したので、VSA9はこれで多大に勇気付けられました。

 3)個人活動:

●  VSA9の会員の方がたには、幼児からの平和教育が思いやりのある平和を愛する人間を育成するという信念から、各家庭で子供さんを持つお母さん方が集まり、平和に関する本を読んだり、ビデオを見せたりして子供たちへの平和教育を継続しています。

●  VSA9の会員は個人で地元の日系の新聞や雑誌に投稿し、VSA9の活動や日本の動向や情報の紹介に携わっております。

 4)日本の平和団体との交流

●  ピースボート、2007年5月と9月にバンクーバーに寄航したピースボートと「平和と9条」に関する意見交換会を設ける。

●  関西勤労者教育協会、07年10月、山本宣治ゆかりの地であるバンクーバーを訪れた24名の方々と夕食会を設けました。

 5)日本の平和活動家との連帯

わたし自身の経験を少し述べさせていただきますと、私はVSA9の会員になる前は、カナダで反戦運動や人権擁護活動などに携わっていたものです。小泉前首相政権の中、愛する母国が戦争のできる国になるかもしれないという危機感を感じていたとき、06年6月WPFがバンクーバーで開催されました。一人の平和活動家として、是非日本の平和活動家を支援したいという思いから、日本から来られた平和活動家(弁護士グループ)の活動のお手伝いをさせていただきました。日本の平和活動家たちが、日本の9条を守るために海外でその理念を広めようとすることに共感し、自らも海外から日本政府に抗議し、日本の平和運動・活動家を支援したいと考え、「バンクーバー9条の会」に入会しました。私事になりましたが、先に述べた事例も草の根レベルでの活動家同士の協力の一つであると思います。海を越えての協力・連帯は平和を推進していく上で不可欠なものです。

 1)衆議院で国民投票法案が採決される寸前の祭、VSA9からの賛同者の最後の抵抗として抗議書を日本の活動家に委託して衆議院憲法調査特別委員会の30余名議員全員にファックスしてもらいました。

2)昨年3月、NHKに対する放送命令、つまり総務省がNHKに国際放送で北朝鮮拉致問題を取り上げるよう命令したことをめぐり市民団体が違憲訴訟裁判をおこした際、日本の弁護団より海外からの賛同者を募る依頼を受け、海外から合計7名が賛同者として名前を連ねましたが、そのうち4名がバンクーバー9条の会から賛同しました。

3)前田朗氏著「軍隊のない国家」のシリーズをVSA9に送っていただいた。

 E.問題点:若い(10、20代)男性の活動家がいない。

 F.VSA9の将来への展望:

1)9条の理念を日系人だけでなく、その枠を超えカナダ人そして世界の人びとに積極的に訴えていこうと考えている。VSA9は今回カナダの若者3人をこの9条世界会議に派遣し、9条の理念は平和構築の支柱であり、それを理解してもらい、次世代につなげる市民活動に貢献していく人物を育成しようとする、平和教育の一環としてこのような私たちの会としては画期的なことを実行した。

 2)今回世界各国から9条を守ろうとする活動家が集まる絶好の機会に恵まれましたが、これからもっと積極的に各国の9条擁護者が連帯し、協力しあい、助け合って平和推進運動に貢献し、また如何に日本政府を含めて社会福祉より軍事優先とする国ぐに抗議を訴えていくには、各国の平和活動家たちとのネットワークが不可欠となってきます。それゆえ、効果的に各国とのネットワーク、連帯を築きたいと思っております。

 G.日本人へのエール:

国境を越えて、年齢を超えて、男女を超えて、「武器は平和を破壊もので平和を創ることができない」と信ずる人間同士が一団となり、これからも一層のたゆまない努力を地道に行い、9条を守り、世界に平和を推進していきましょう。

 ところで、バンクーバーってどこにあるのか、ご存じでしょうか。

                 ここです。カナダの西海岸にあります。