
今月末で閉館する白老・アイヌ民族博物館のファイナル企画展に連動したシンポジウム「ポロトコタンの未来を考える」が11日、同博物館のポロチセ(大きい家)で開かれ、学芸課の若手職員4人が象徴空間において公用語となるアイヌ語の在り方などについて提言した。
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学芸員の八幡巴絵さんがポロトコタンの沿革と象徴空間の概要を説明した上で「私たちも2年後の開業を見据えていろんなことを勉強し、いろんな方たちに協力を得た上で事業を担っていくことが考えられます。個人的には成長型の施設としてその時勢に応じたことを速やかにできるような施設にしていきたい」と話した。
矢崎春菜さんは「象徴空間でのアイヌ語のあり方方」をテーマに提言、「アイヌ語の方言は樺太は北、真ん中、南部、北海道は道南西部、道東、道北、日高東部に分類できるといわれています。象徴空間の中ではアイヌ語は公用語として位置付けられます。いわゆる標準語と呼ばれるものがアイヌ語にはありません。あいさつの言葉一つ取っても違いがみられる。アイヌ語の話者がアイヌ語を使うのが象徴空間でのアイヌ語の取り組みだと思います」と述べた。
「工芸や自然素材の確保について」をテーマにした山道陽輪さんは「儀礼で使用されるイナウ(木幣)は白老ではヤナギやミズキが使われており、生の木でなければならない。そして木の先端と根元の向きが決まっています。山に行って木を切るところから全てを行わなければならない」と述べた上で、自然素材の確保に関して「地元と連携を密にして進めていくことがアイヌ文化を守って伝えていくことにつながっていくのではないかと思っている」と提言した。
「象徴空間に期待すること」をテーマにした竹内隼人さんは「(象徴空間に従事する人が)全国各地から来る可能性があるので、せっかくなら白老に住んでほしい。住む場所、まちを魅力的に変えていけば仕事が楽しいと思う人が増えるのではないか。象徴空間は専門分野が増えていくと思うが、いろんな場所を経験できるようになればスキルアップ、文化の伝承につながると思う」と話した。
冒頭、野本正博館長は象徴空間について「あまり定型にはまることなく、文化伝承をして新たな文化の創造につながってくれればいいと考えています。象徴空間を迎えるときは『私たちに会いにきてください』と自信を持って言えるようにこの2年間きちんと準備をしていきたい」とあいさつした。
同博物館は4月1日に象徴空間の運営主体となる公益財団法人アイヌ文化振興・研究推進機構(札幌)と合併、町内の旧社台小校舎を拠点に象徴空間の開設準備に取り組む。今月21日には閉館式典が白老町コミュニティセンターで開かれる。
(富士雄志)
【写真=来場者との質疑応答も行われたシンポジウム「ポロトコタンの未来を考える」】
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