1.デッキリスト TG代行天使のデッキ解説です。長大になりましたが密度はそれなりに高いと自負しています。なにとぞおつきあいください。
1/7のグランドスラムCS,1/13のかもめ亭で使用したリストがこちらになります。自分のプレイが未熟だったこともあり,どちらもトップ8止まりでそこまで成績は振るわなかったので,「たいして勝ってないくせに語るなよ」という感じもしますが,原稿のベースは正月の暇つぶしに既に書いてしまっていたので,せっかくだから載せようということに。この記事が拙い内容ながらも議論の叩き台になれば,という思いでございます。ご容赦願います。
●メインデッキ(40枚)
・モンスター(20枚)
創造の代行者 ヴィーナス×3枚
神秘の代行者 アース×3枚
神聖なる球体×3枚
マスター・ヒュペリオン×3枚
クリッター
TG ワーウルフ×3枚
TG ストライカー×3枚
TG ラッシュ・ライノ
・魔法(10枚)
ハリケーン
精神操作
死者蘇生
月の書
サイクロン×2枚
強欲で謙虚な壺×3枚
ブラック・ホール
・罠(10枚)
鳳翼の爆風×2枚
奈落の落とし穴×2枚
神の宣告
激流葬
ダスト・シュート
砂塵の大竜巻
リビングデッドの呼び声
聖なるバリア -ミラーフォース-
●エクストラデッキ(15枚)
A・O・J カタストル
No.17 リバイス・ドラゴン
No.30 破滅のアシッド・ゴーレム
TG ハイパー・ライブラリアン
TG ワンダー・マジシャン
アームズ・エイド
ガチガチガンテツ
スクラップ・ドラゴン
ダイガスタ・フェニクス×2枚
ブラック・ローズ・ドラゴン
虚空海竜リヴァイエール
神海竜ギシルノドン
氷結界の龍 トリシューラ
氷結界の龍 ブリューナク
●サイドデッキ(15枚)
スノーマンイーター×3枚
魔導戦士 ブレイカー×3枚
パペット・プラント×2枚
冥府の使者ゴーズ
昇天の黒角笛×2枚
砂塵の大竜巻×2枚
連鎖除外
王宮の弾圧 画像リストはこちら(http://www.gachalog.com/list/44600705)から閲覧できます。
デッキ解説の記事ではありますが,個々のカードの採用理由などといった微視的な議論に移る前に,まずこのデッキの基本的なゲームプランやプレイにおける考え方を確認しましょう。コンセプトありきでなければ合理的なデッキリストは生産できません。巷では「デッキビルダー」という概念が存在しますが,私は「プレイングは構築に先立つ」と考えています。
2.TG代行天使の基本 TG代行天使は,ワンショットプランを基本としつつ,アドバンテージコントロール・カウンター・ビートダウンといった様々なサブプランを兼ね備えた,デッキパワーの高いオールラウンダーデッキです。
(1)なぜTGと組み合わせるのか 通常の代行者と比較して,TG代行天使が特に有力なデッキとみなされるのはなぜでしょうか。それは端的に言えば
(ⅰ)従来の代行者のゲームプランにワンショットプラン・カウンタープランを加えている点
(ⅱ)従来の代行者が抱えていた安定性の面での不安を緩和している点
2点に集約されます。順番に見ていきましょう
(ⅰ)TG代行天使のゲームプランと展開パターン デッキの軸となるワンショットプランは,ヴィーナスとTGクリーチャーのコンビネーションによって成り立っています。8000点以上削れるTG代行天使の主要な展開パターンとして以下の組み合わせがよく知られています。
(a)ストライカー+ワーウルフ+ヴィーナス
最終的な盤面はダイガスタ,アームズ,アシッドになります。ダイガスタ(アームズ装備2500)×2+アシッド(3000)で8000点になります。この場合,相手の場の攻撃力2500未満の攻撃表示クリーチャーを2体まで無視してワンショットを達成します。相手の防御が手厚いと推察される場合にはワンダー・マジシャンやトリシューラに向かってアドバンテージプランに移行することも可能で,罠を踏んでも損失が出にくいです。必要パーツがいずれも3枚搭載されている上にサーチが効き,頻繁に狙うことができるのもうれしいポイント。コストが「安い」のにリターンが「大きい」,TG代行天使の理想的な展開パターンです。
(b)ヴィーナス+ワーウルフ+ヒュペリオン
最終的な盤面はリバイス,ダイガスタ,ヒュペリオンになります。リバイス(2500)+ダイガスタ(1500)×2+ヒュペリオン(2700)で8200点になります。この場合,ヒュペリオンの効果で相手の場のクリーチャーや攻撃反応罠を1枚まで無視することができます。このプランはストライカーが不要であるため,相手の場にクリーチャーが存在しなくても能動的に仕掛けることができるのが長所です。一方で,チューナーが絡まないためシンクロ展開ができず,罠の踏み方によっては大きな損失を被ることもあるため,ゲーム展開や挙動から相手の罠を予測することが重要になります。
場合によってはリヴァイエールを絡めることで展開を発展させることができ,シンクロからコントロールプランに移行したり,よりケア範囲の広いワンショットを行ったりすることが可能です。例えばレベル2チューナーが除外されている場合,ヴィーナスとワーウルフのみでリヴァイエール(アームズ装備2800)×2+ダイガスタ(1500)の7100点を稼ぐことができ,ヒュペリオンなどが絡めば多くのクリーチャーや罠をケアして8000オーバーを叩き出せます。必要パーツはいずれも3枚搭載されており,ヒュペリオン以外はサーチが効きます。
(c)ストライカー+ヴィーナス+ヒュペリオン
最終的な盤面はライブラリアン,ダイガスタ,ヒュペリオンになります。ライブラリアン(2400)+ダイガスタ(1500)×2+ヒュペリオン(2700)で8100点になります。ただしこのパターンは最終的な盤面が一意に定まらず,エクストラデッキの都合などに応じて,カタストル,ダイガスタ,ヒュペリオン,球体あるいはヒュペリオン,ダイガスタ,ダイガスタなどのように変化することもあります。いずれも表面的な違いで,意味としてはオールインで強引に8000点を削るということに変わりはありません。
このパターンはワンショットのパターンとしては動きがぎこちなく,罠も直撃しやすいのでリスキーですが,ストライカーとヴィーナスのみでブラックローズやトリシューラを用いたカウンタープランやアドバンテージプランに移行しやすいのが特徴です。(b)と同様にいずれも3枚搭載されており,ヒュペリオン以外はサーチが効きます。
(d)ストライカー+ヴィーナス+蘇生
最終的な盤面はダイガスタ,アームズ,ギシルノドンになります。先にストライカーとヴィーナスでギシルノドンを出し,ストライカーを蘇生してアームズを作ることで,ギシルノドンの効果が誘発します。ギシルノドン(3000)+ダイガスタ(アームズ装備2500)×2で8000点になります。(a)と同様に,攻撃表示の相手の場の攻撃力2500未満の攻撃表示クリーチャーは2体まで無視してワンショットを達成します。(c)と同様にカウンタープラン・アドバンテージプランへの移行も容易であるほか,ブラックローズで盤面を流してから蘇生ヴィーナス+ダイガスタで4600を削るといった強引なビートダウンプランも狙えます。蘇生は1枚のみなのでそれほど発生頻度は高くないですが,TG代行天使はエクストラデッキに余裕がある上,ギシルノドンはこのパターンで8000を稼ぐにあたって替えの効かないパーツであるため,採用を肯ずるに充分な理由となります。
以上(a)~(d)は再現性の高いプランです。アースがストライカーの,スノーマンイーターがワーウルフの,リビングデッドが蘇生の代替として機能することも多いですし,精神操作や蘇生,パペット・プラント,リヴァイエールあたりが絡めばよりユニークな展開になることも珍しくありません。また,個々のパターンで補足しましたが,ワンショットが可能でありながらコントロール,カウンター,ビートダウンといったプランへ移行する「展開の発展性」を有しており,非常に柔軟性が高いです。これがTGと代行者を組み合わせる強みの一つです。
(ⅱ)TG代行天使の安定性 純正代行者もTG代行天使も,安定性の面で根本的に2つの大きな問題を抱えています。それは,
(a)代行者問題
(b)球体問題
です。ゲームプランの異なる二つのデッキですが,いずれのデッキもヴィーナスの能力に動きの基本に委ねている点には代わりがありません。そのヴィーナスをサーチできるアースはアドバンテージ獲得力にも優れており,ヒュペリオンを円滑に場に展開することにも役立っています。いずれのデッキにおいても,6枚の代行者を引けない場合にはヒュペリオンやクリスティアといった上級天使が手札で浮いてしまう根本的な問題がありました。また,球体が手札にきてしまうというデッキそのものの根本的な欠陥は,アドバンテージプランの遂行における大きな障害となっていました。
ちなみに,40枚のデッキから無作為に6枚の初手を選んだ時,そのなかに特定の6枚のカードが1枚も含まれない確率は34C6/40C6(≒35%),特定の3枚のカードが1枚以上含まれる確率は1-37C6/40C6(≒40%)ですので,初手のみで考える場合,代行者問題は約35%,球体問題は約40%発生する計算になります。
・純正代行者の場合
6枚の代行者を引けない場合に備えて,デッキの動きに直接はマッチしない(=硬質の)ヘイトクリーチャーであるライオウを採用してビートダウンプランを補強しつつ時間を稼いだり,天空の宝札のようなドローソースを採用したりしていました。天空の宝札やバーミリオンは手札で浮ついた球体や上級天使などを有効牌に還元できる可能性もあり,扱うのが難しいカードではあるものの純正代行者の安定性向上に貢献していました。これらの対策はデッキの安定性をある程度上げることには成功したものの,六武衆やジャンドといった当時のトップメタに対してライオウは安定して有効であるとは言えず,また環境最速の六武衆・アドバンテージプラン最強のジャンドに対しては天空の宝札も強く打てないなど,限界もありました。

・TG代行天使の場合
さて,TGをとりいれることで,こうした状況はどのように変化したのでしょうか。6枚の代行者を引けない場合,壁・クロックとして損をしない優秀なTGクリーチャーは,代行者を引く時間的猶予を稼ぎつつデッキを圧縮する役割を果たします。このとき,TGクリーチャーはそれ自体として展開パーツであり,デッキの動きに直接マッチしている(=軟質の)サポートクリーチャーであるという点が非常に大きいです。また,ストライカーは7枚目の代行者であるクリッターを強く使うことに貢献しており,同時に代行者が引けている時にTGをサーチする手段にもなっています。
球体問題についても,TG代行天使では「アドバンテージプランを放棄する」という解決策を見出しています。極端な例を挙げれば,後手で開始したゲームの初手が「球体,球体,ヴィーナス,ワーウルフ,ヒュペリオン,ハリケーン」である場合,球体が2枚も手札に来ているにも関わらず事実上球体問題は発生していないとみなすことができるのです。すなわち,ワンショットプランをとることでアドバンテージの意味を相対的に低下させ,球体を引くというアドバンテージ面での損失を無視することに成功しているということです。このことは球体問題に限らず,TG代行天使のゲームメイク全般に言えることでもあります。例えば,対戦相手のカラクリやジャンドがぶん回りを見せ膨大なドローアドバンテージを重ねていたとしても,防御札さえ少なければ,簡易融合やデブリドラゴンを何枚手札に抱えられていたところで関係がないのです。






以下に表にしてまとめてみました。
代行者問題 球体問題
純正代行者 ライオウなど硬質のカードで延命,天空の宝札などでドロー 天空の宝札,バーミリオンといったカードで消化
TG代行天使 TGなど軟質のカードで時間を稼ぐ,クリッターを有効活用 ワンショットプランをとることで球体問題を無効化 どちらがよりスマートな解決であるかは明白でしょう。実際にこうして安定性を確保したTG代行天使は,ゲートボール2011.3環境でも比較的高い安定性を有していると評価できます。環境の有力なデッキの安定性については,拙稿「2011.3環境分析(1) -安定性と「前後問題」-」をご覧ください。
(2)デッキの動き 既に(1)の記述である程度明らかになっているかもしれませんが,代行者は高い瞬発力と引き換えに重大な弱点があります。それはデッキリソースの乏しさであり,簡単に言えば「ビッグアクションを取れるのは1ゲームに1回だけしかない」ということです。ここでいう「ビッグアクション」とは,より明確に言うと「球体を使ったアクション」のことです。貪欲な壺や転生の予言などで球体をデッキに戻さない限り,基本的にはこの動きは一度しかできないので,TG天使には「二の矢」がありません。球体を使い終わったTG代行天使は,代行者,TGともに出涸らしのような弱カードに成り下がり,ゴーズ・ヒュペリオン・蘇生などを除いて対戦相手のライフを大きく削ることを期待できるフィニッシャー級のクリーチャーは存在しなくなってしまいます。

したがって,TG代行天使はこのビッグアクションでワンショットを決めるか,そうでなくてもそれなりに大きな優位を築かなければなりません。「一の矢」で刺さなければならないのです。ワンショットを決められない場合の優位がアドバンテージ面での優位であることは少なくないケースなのですが,ライフ面・クロック面での優位がこのビッグアクションを費やすに足るケースはあまり多くありません。罠の状況その他の都合から,ヴィーナス単騎でダイガスタとあわせて4600を削りに行ったり,ガチガチと合わせて戦闘破壊を狙っていったりするケースは時々ありますが,少なくとも「メイン戦の先手1ターン目でガチガチヴィーナス」というのは九分九厘ありえないプレイです。罠をよけるためにヴィーナスを先に召喚することはあり得ますが,その場合は「ヴィーナス,球体×3」か「ヴィーナス,球体×2,ワーウルフ」でエンドといった形でシンクロパターンへの含みを持たせることが多く,場合によってはヴィーナス単体でエンドすることもあります(強欲で謙虚な壺を発動したターンなどに多い)。

このような事情から,TG代行天使の動きには必然的に緩急が生じます。すなわち,ゲーム内に1ターンだけ「仕掛けのターン」があり,そのターンに至るまでは様子を見つつ,機が熟したと判断した際をピークとしてTGやヒュペリオンなどを絡めて集中的に多重攻撃を仕掛け,あとは早期決着を目指すというのが基本的なコンセプトです。したがって,TG代行天使の場合にはゲーム全体を「序盤」「中盤」「終盤」などと分類することはあまり適切でなく,「(待ち)」「仕掛け」「(終盤)」などと分類するのが適当であるように思われます。このような区切りで整理してみましょう。
(a)「待ち」
「待ち」のフェイズでは, TGを伏せたり,アースを召喚したりして様子を見ることが主となります。代行者を引けていない場合は必然的に「待ち」を行うことになりますが,手札のコンディションが良いのなら後手1ターン目から即座に仕掛けていくことも十分考えられるため,「待ち」は必ずしも発生するわけではありません。もっとも,手札にワンショットパターンが揃っているからといって直線的に仕掛けていくことは少なく,ワンショットパーツが揃っていても大抵はすぐには仕掛けず,ストライカーやクリッター,リビングデッドや砂塵や宣告,謙虚などを活かせるように,1-2ターン待つことが多いです。また,本命ではないヴィーナスなどで相手の罠を釣るなど,何らかの陽動アクションで相手の罠を読んでいくというのも重要です。
上に述べたような理由から,代行者を引くまでのつなぎで場をもたせなければならないなど差し迫った理由がない限り,手札に来た球体でさえもなるべく場に裏守備で置くことはしたくありません。
(b)「仕掛け」
「仕掛け」のフェイズでは,いよいよヴィーナスを召喚して球体を使ったヒュージスウィングを敢行します。どのタイミングで仕掛けるかの判断は常に非常に難しいですが,ライフ管理・罠読み・自分のリソース状況などを複合的に考えてベストなタイミングを探りましょう。強欲で謙虚な壺,砂塵や宣告といったカードが手にある場合にはまだ「仕掛け」時でないことが多く,これらを消化して「ピーク」に到達した時点が一つの目安になります。
「仕掛け」の際にはハリケーンやサイクロン等で罠を処理できていることが望ましいですが,実際には何枚かの伏せカードに対して突っ込まなければならないケースも多いです。ストライカー,ワーウルフ,ヒュペリオン,蘇生といった召喚権を使わないアクションで二重・三重の攻め手を作り,うまく防御札をかいくぐりましょう。既にみたように,ワンショットプランに固執せず相手の罠を読んでアドバンテージプランなどに移行していくというのも,妨害を乗り越える上では重要になってきます。
また例外的ですが,アドバンテージプランを選択する場合には先手1ターン目が仕掛けのターンになることも珍しくありません。特にヴィーナスとアースを両方抱えている時などは,アースを先に召喚するよりもアドバンテージの獲得につながることがほとんどです。
(c)「終盤」
仕掛けでワンショットが成立した場合には終盤は存在しません。TG代行天使のゲームプランにおける終盤とは,ヒュペリオン・トリシューラ等によってアドバンテージ面で優位を築いた後の数ターンや,ブラックローズ等で相手の詰めを打開した後の数ターン(これは局面的にはアドバンテージプランのそれと同様です),蓋となる罠を構えた状態でヴィーナス・ダイガスタのような簡素な組み合わせでライフを詰めている局面などが該当します。
この局面で考えることは負け目の排除であり,不用意に激流葬を踏まない,深刻な脅威以外には罠をあてない,ライフ管理ミスによる頓死をくらわない,などの点を意識して無難にゲームを進行させることが肝要です。仕掛けが成功しているのであればこの状態では有利になっていることがほとんどでしょう。
3.使用デッキリストの解説 それでは,特筆すべきカードの採用理由,不採用理由などを見ていきましょう。
(1)メインデッキ
(採用したカード群)
●クリッター

前述のようにクリッターは7枚目の代行者でありつつ,ストライカーとも相性の良いカードであり,個人的には不採用は考えられない1枚です。
●TG ラッシュ・ライノ
1枚刺しでありながら実質的に複数枚体制で利用でき,効率が良いです。遊戯王において戦闘破壊は最も基本的なアドバンテージ獲得手段ですが,返しに殴り返されたとしてもこちらは損をせず,それどころかコンボパーツを回収できてしまいます。もともとはライオウなどが増えるサイド後の対罠デッキの役割を想定していましたが,腐ってもTGであるためジャンドやミラーなどでも丸く活躍しやすく,アースが定着しにくい場でも盤面を維持できる打点の高さが魅力的であったため,ビートダウンは基本路線ではないもののメインに昇格させました。ただ依然として動きがもっさりしすぎてしまうリスクは解決できておらず,メインの中で40枚目の枠です。
●精神操作
これは人によって意見の分かれるところですが,少なくとも55枚の中には1枚ほしいです。ミラーマッチやジャンドなどではチューナーやレベル3などを奪取して展開補助にすることができ,罠ビート系に対してはチューナーと合わせることで強烈なアドバンテージの稼ぎ方をする1枚です。しかしエクシーズモンスターや高レベルのシンクロモンスター,ガジェット・アナザーネオスといった環境でよく見るクリーチャー群に対しては打ちにくく,強弱にムラがある1枚でもあります。
●ブラック・ホール
これも人によって意見の分かれるところですが,少なくともサイドにはポジションがあるでしょう。ワンショットに貢献することはほぼなく,打開力も高いデッキなのでどうしても必要になる局面というのもそれほど多くはありません。ただ,相手の返しを想定した「ほどほどの仕掛け」でブラック・ホールがうまく機能する場を意図的にお膳立てしてやることはさほど難しいことではなく,このカードにはそれくらいの手間をかけてやるだけのパワーがあることも事実です。また,ライオウやシエン,ローチなどのヘイトクリーチャーを確実に処理できるという点で,保険的な役割も持っています。
●強欲で謙虚な壺
複数種類のパーツを要求するコンボデッキであるTG代行天使において,デッキの安定性を高めるこのカードは喉から手が出るほど欲しい1枚です。「仕掛け」のタイミングこそ特殊召喚の連打で戦うデッキですが,「待ち」のタイミングが十分長いため,制約が大きな足枷となることもありません。個人的には3枚以外ありえないと考えています。
●ダスト・シュート

先手番のドローがないことで後手番をとるようになったためその性能を疑問視する声もあるようですが,ダイスの勝敗と先後の決定権の対応関係が入れ替わっただけで,自分が先手番を取る確率は(ゲートボール環境でさえ先手番を取る制圧デッキ分の誤差を度外視すれば)変化していません。腐るリスクはかねてより抱えていましたが,発動に成功した際の見返りが大きすぎるためトータルで見れば期待値が高く,是非ともメインに採用したい1枚です。特にTG天使の場合には,罠を透視できるというメリットは大きすぎます。環境最多勢力のTG代行天使には後手番でも強いという点も追い風です。逆に罠ビート系のデッキに対してはサイドアウトされることも多いです。
●鳳翼の爆風
ここまで読んで頂いた方には自明かと思いますが,ハンドコスト罠の採用は球体問題とはあまり関係がありません。ワンショットプランにおいて罠剥がしが複数枚あることは大きな利益になりますが,サイクロンや砂塵の大竜巻をあまりたくさん採用することはミラーマッチの勝率を低下させてしまいます。また,「待ち」のフェイズで使用できる防御札がある程度確保されていないと,ライフ管理の面でも問題があります。
爆風はこの問題を一挙に解決できる受けの広いカードであり,ビートダウンプランの蓋として機能することもあれば,場合によってはドローロックを活かしてヴィーナス単騎で強引に詰めに行くこともできます。サンダーブレイクとの差は微差ですが,六武衆やジャンド,墓地BF,ヒーローなどに対しては破壊よりもデッキトップバウンスの方がよい場合が多いことも加味して,今回は爆風を採用しました。
●リビングデッドの呼び声
ゴーズとは相性が悪いですが,TGクリーチャーやクリッターがあるためチェーンでアドバンテージを稼ぐことも見込めますし,サイクロンで止まるとは言え蘇生札は強力な2段階アクションをサポートします。せっかく採用しているギシルノドンを活かしたいという気持ちもあります。またこのカードはサイドボード後に投入されるであろう相手のライオウや黒角笛に対しても耐性があります。
●聖なるバリア -ミラーフォース-
TG代行天使の多い環境で攻撃反応罠はあまり強くなく,ヒーローやガジェットといった環境の罠デッキに対しても有効に機能しにくいため,環境的には怪しい1枚ではあるのですが,「待ち」のタイミングでライフやアースを守るカードとしては一級品であり,ゲームプランによくかみ合っているため採用しました。カラクリや六武衆に対して2枚目の激流葬のように機能する局面もあり,潜在能力は高いです。よくサイドアウトされますが,何だかんだ言ってもそれなりに強く打てる局面も多い1枚であり,ブラック・ホールとよく似た丸みがウリのカードです。
(不採用のカード群)
●神の警告

環境的には申し分のないカードであり,ゲートボールを始めた1カ月前には当然のように採用していたのですが,ライフ支出の厳しさが想像よりも深刻であったため抜けてしまいました。蓋としては一級品の罠なのですが,基本となるワンショットプランで必要なのは蓋ではなくライフ維持能力なので,2000という支払いは大きすぎるという感触です。代行者を引けている局面で強いのは重々承知なのですが,話を分かりやすくするためにあえて乱暴に言えば「アースの後ろに置かれている罠は炸裂装甲でも強い」ので,短所に目を瞑るに十分な長所とは思えませんでした。
実際にかもめ亭SEでのデュークさんとのミラーマッチでも,デュークさん側には警告が入っていましたが,その差が響きこちら側が有利になりました。
サイド後は基本的に奈落か黒角笛の下位互換なので,メインに入らなければ55枚のスロットに居場所はないと思います。
もっとも,警告を引いた場合にはワンショットを狙わず2ターン掛けてライフを押すプランを取る事で,このカードの強みを最大限引き出していくということは可能です。例えば「ヴィーナス,ワーウルフ,警告」は「仕掛け」を敢行しても悪くない手札ですから,見方によっては警告を疑似的なコンボパーツと見なすこともでき,そういう用途を高く評価するのであれば採用する立場にも理がある1枚ではあります。
●ジャンク・シンクロン,増援

この2枚はセットで考えなければなりません。4枚目のストライカーである増援は非常に優秀な1枚ですが,戦士族が3枚のストライカーしかなく,この3枚もワーウルフのサーチ先として競合するため,無造作に増援を入れると事故要因になることがままあります。そのため増援を採用する場合は他に1枚シルバー・バレットとして戦士族クリーチャーを採用することになるのですが,通常その枠にはジャンク・シンクロンが顔を見せています。ジャンク・シンクロンはアドバンテージプランにおける「二の矢」を果たす1枚で,球体を釣り上げて5シンクロを作ってもいいですし,2チューナーを釣り上げた上でワーウルフをSSし,リヴァイエール経由でヴィーナスを展開するといった芸当も可能です。ただし,これ自体は「一の矢」にはならず,ワンショットプランに関わることも稀であるため,ワンショットを軸とするデッキのコンセプトへの適合度は高いとは言えない一面があります。2011.9環境では開闢のための闇カウントとしても重宝されましたが,2011.3環境には開闢がいないということも不採用に拍車をかけています。
●トラゴエディア
一応ゴーズと違いレベル変化によって展開札の1枚に数えることもできますが,そういった使い方ならば死霊の方が強力です。「待ち」においてはさすがにゴーズの後塵を拝するカードパワーであり,爆風の採用と合わせて今回は採用を見送りました。とはいえ,罠デッキに対して突然登場する3000打点は頗る強力で,返しを戦闘やバウンスに依拠しているカラクリやガジェットのようなデッキでは対処が難しく,サイドカードとしては悪くないカードだと思います。
●オネスト
ゴミ。
●魂を削る死霊
「待ち」フェイズにライフを維持する上では最高品質の1枚です。ストライカーを警戒してクリーチャーを召喚してこない相手に対してハンデスを狙えるのは強力で,対戦相手に裏目の両天秤を強いることもできます。場に残りやすいレベル3なので,4枚目以降のワーウルフのように展開においても役割を持てますし,アースとのシンクロを狙うこともできます。メイン採用も十分頷けるでしょう。
こう見ると良いことづくめの1枚なのですが,最大のネックとなるのが召喚権のだぶつきです。代行者を複数枚引いているような重ためのハンドではうまく使えませんし,場合によってはアースと引き合わせるだけでも重くなってしまう場合があります(特にTG代行天使に対して)。またそのデメリット効果も馬鹿にならず,特に2011.3環境ではBFのゲイル,カラクリの参謀・ブレイなどの完全な裏目があります。
ただ,2011.3環境はランク4エクシーズの解決力が低いため,特にwakaガジェなどはこのカードを突破する手段がデッキにほとんど入っていないことも珍しくありません。サイドカードとしても優秀な選択肢の一つです。
●トゥルース・リインフォース,X-セイバー パシウル

リインフォースは使い勝手の悪いストライカーのような感触ですが,攻撃的に構築するなら候補になる1枚です。増援と同様のサーチ先問題を抱えており,場合によってはパシウルが採用されることもありますが,流石にTG代行天使が多いフィールドでパシウルを40枚に入れるのは気乗りしませんでした。とはいえこれらのカードはゲームプランにはよく合っているので,好みが反映されるところではないでしょうか。
(2)エクストラデッキ
(採用したカード群)
●ダイガスタ・フェニクス

ダイガスタ・フェニクスの1枚目はこのデッキを成立させるために最も重要なカードです。これについては今更説明することもないでしょう。
8000点パターンでダイガスタの2枚目がどうしても必要になるケースは管見の限り発見できませんでした。ただし,レベル2チューナー+ヴィーナスの最大火力はダイガスタが2枚必要な7600点で,ヴィーナス・ダイガスタ・アームズの6600点との間に1000点の差があります。この1000点の差が意味を持つ局面として考えられるのが,「アースが1回ダイレクトアタックに成功している」「相手が盗賊の七つ道具を発動している」「相手が王宮の弾圧を発動している」「相手がヴィーナスの効果を発動している」などで,いずれも2011.3環境では珍しくないケースです。もっとも,ヴィーナス・ダイガスタ・ダイガスタの7600点は相手の場にクリーチャーがいる場合の貫通能力はありませんので,ストライカーを特殊召喚できる状態で頻繁にこの展開を選択するというわけでもなく,あくまでも優先順位はエクストラデッキ中15位です。
そのほか,「仕掛け」で決めきれず出涸らしになったストライカーなどが絡んで突発的な3000点によって相手を頓死させる筋があったり,リヴァイエールで自分の球体を戻したときに必要になったりなど,意外と痒い場面で「なければ負けていた」と感じることが多く,あったほうがよいと判断しました。実際にグランドスラムCSでもこれによって拾った1本がありました。
●神海竜ギシルノドン

先述のように,ワンショットパターンで替えが効かない1枚であるため採用しました。
(不採用のカード群)
●エンシェント・ホーリー・ワイバーン

派手な効果ではありますが,このクリーチャーが8000点のパターンで必須となることは管見の限りありません。一番考えられるのがアース+ヴィーナスですが,ワイバーン+ダイガスタでは自分のライフがMAXだったとしても6600点しか与えられず,ヴィーナス・ダイガスタ・ダイガスタやヴィーナス・ダイガスタ・アームズに劣ります。
このカードが真価を発揮するのは,ワンダー・マジシャン経由でワンショットを目指すパターンです。ストライカー+ワーウルフ+ヴィーナスからワイバーン+ヴィーナス+ダイガスタとなれば,攻撃反応罠1枚を破壊しながらワンショットを達成できます。ただ,ワンダー・マジシャンが通るのであればトリシューラの構えなどで十分勝利を目指すことができますし,ワンショットに向かうにあたって攻撃反応罠1枚がネックになるというケースは殆んどないので,このパターンを高く評価することはしませんでした。
稀にゲームがぐだった時の頓死筋となることがあり,欲しい場面が皆無というわけではありません。あくまで優先順位16番目という評価です。
●キメラテック・フォートレス・ドラゴン
(3)のサイバー・ドラゴンの項で後述します。
(3)サイドデッキ
サイドデッキのカードに関しては,サイドボーディングプランと抱き合わせで考えなければなりません。あるアーキタイプに対してインすべきサイドカードがたくさん用意されていたとしても,アウトすべきメインの不要牌がほとんどなければ非効率なものとなります。また,それ自体として強力なメタカードだったとしても,ゲームプランとのかみ合わせはよく吟味する必要があります。
(採用したカード群)
●スノーマンイーター

場に残るレベル3でアドバンテージを稼ぐ,罠ビート系デッキに対する最強の1枚です。ライオウなどのヘイトクリーチャーにも強いため,サイド後の相手のプランによってはより広いアーキタイプに対しての採用も考えられます。TG代行天使の場合はアースとのシンクロやヴィーナスとのエクシーズに活用することができ,アドバンテージプランとかみ合っています。
●魔導戦士 ブレイカー

今回の16bonbon流アクセントです。主にミラーマッチやガジェット,ジャンドなど,クリーチャーの打点が低いデッキに対して投入されます。これらのデッキに対してはカードそれ自体として非常に強力で,特にTG代償ガジェットに対しては環境に存在するカードの中で一番刺さるといっても過言ではないです。またサイド後に投入される黒角笛や連鎖除外,永続罠などに対するスマートな解答にもなります。1900打点なので,最悪ライオウと相殺することもできます。
ただし,召喚権のかさばりは無視できない問題なので,高速デッキには機能しません。また,基本打点が1600より高い罠デッキに対しては弱いです。
●パペット・プラント
対六武衆専用のメタカードです。今回のプランではヒーローには投入しません。召喚権を消費せず,チューナーとも相性が良い点は好印象です。シエンとアースでブラックローズを作られたときの相手の顔を見るのが趣味です。
●冥府の使者ゴーズ
ゴーズはデッキ本体の動きには直接関係しないどころか,カイエンと合わせて場を圧迫するためデッキそのものにマッチしているとは言いにくい1枚です。しかし,デッキの性質上生じやすい「待ち」のターンにおいて,ゴーズはそのカードパワーを遺憾なく発揮することができます。このカードは罠ビート系全般に対して強力無比でありますが,ジャンド・TG代行天使・ガジェットに対してはケアされやすい面もあり,相手のデッキやプレイスタイルを選ぶ1枚でもあるので,最初メインに入れていましたが結局サイドに落ちつきました。
●昇天の黒角笛
TG代行天使,六武衆,カラクリに対して強力な1枚であり,特に説明は要らないでしょう。
●砂塵の大竜巻
メイン段階では爆風と散らしましたが,罠デッキに対しては本来多く採用したいカードです。特に血の代償,その他サイド後の永続罠に対する解答になる点が大きいです。
●連鎖除外
ジャンドに対して強いのは自明ですが,六武衆やカラクリに対しても,デッキの核となるチューナーに干渉できるため強力です。TG代行天使に対しては,ストライカー・球体に撃てれば及第点ですが,間違ってもアースなどには打ちたくないため,2枚以上は引きたくありません。仮にサイドデッキに3枚の連鎖除外が入っていたとしても,TG代行天使に対しては1枚しかいれないでしょう。
●王宮の弾圧

16bonbon流アクセントその2。2011.9環境では禁止になっていたためTG代行天使が採用することに違和感はありますが,一部のデッキに対して暴力的な働きをすることは疑いを容れません。警告以上に蓋としてしか機能しないため,これを使う時は意図的にゲームプランを歪めて早期に制圧を試みる必要がありますが,そうまでしてでも使う価値がある強力なカードです。TG代行天使に対する先手ガチガチヴィーナスも,王宮の弾圧と合わせれば例外的に肯定されます。
こちらの基本打点が低いので,ブラック・ホールなどを持たれていると完全に裏目となる場合もあります。ただ,その点を考慮してもハマった時の勝利貢献度が非常に高いことから採用すべきだと考えました。このカードの採用を共有したデュークさんに,かもめ亭SEで見事にこれを決められて1本落としました。
(不採用のカード群)
●サイバー・ドラゴン
サイドデッキに採用されているサイバー・ドラゴンは,
①対機械族兵器
②使いやすい高打点・シンクロ素材
の2つの役割を期待されていることが多いです。
ところが,①の意味でのサイバー・ドラゴン,2011.3環境においてはあまり有効に機能しません。

まずガジェットに関して。ガジェットに対してサイバー・ドラゴンは有効でないどころか弱いカードであり,サイドに入っていても入れませんし,仮にメインに入っていたならサイドアウトを検討するカードです。「前後問題」理論の延長で考えてみればわかりやすいですが,ガジェットは「前」を除去することが痛打にならず,代償のあるなしを問わず「後ろ」を妨害することが肝要です。単にガジェット1体を吸収して2000打点を作っても,それは召喚権を行使せずに2000打点を場に送り出せるといった程度の利でしかありません。それでも罠ビート系のデッキであれば十分と判断できるかもしれませんが,TG代行天使においては発展性のない2000打点は非常に価値が低いのです。機械族2体を吸収できる場合は話が変わってきますが,ガジェット2体がエクシーズされずに場にいるということは考えにくいですし,特にサイド後はサイバー・ドラゴンを意識するプレイヤーも多いです。
次にカラクリに関して。カラクリはガジェットよりははるかにサイバー・ドラゴンが刺さる状況がありますし,実際に有効に機能する場面もあります。しかし,ある程度以上まともなカラクリプレイヤーなら「ブレイド,ブレイド,参謀」のような展開があまり理想的でないことは熟知していますし,ましてそれが2本目以降ならなおさらです。下位卓のプレイヤーに対して「バカ刺さり」する可能性はありますが,決勝トーナメントで3000以上のフォートレスが作れるということは(自分のデッキに機械族が入っていない限り)珍しいと言えます。
ではサイバー・ドラゴンが全くサイドカードとして二流かというと,必ずしもそうではありません。一般的な罠デッキに対しては下級クリーチャーのほぼすべてを一方的に討ち取ることができる上,召喚権を使わないレベル5なのでアースとの相性が非常に良く,スムーズにブラックローズにつなげることができるからです。
実際に自分もこの②の強さを評価してしばらくサイバー・ドラゴンを採用していましたが,最終的な形からは抜けていきました。その理由としては,
①スノーマンイーターを使うプランとかみ合わない
②下級を戦闘破壊する役割はラッシュ・ライノと被っており,かつサイバー・ドラゴンは戦闘破壊返しによる損失の可能性がある
③そもそもヒーローやラギアなどの伝統的な罠デッキに対しては最初から有利なので,あまり枠を割く必要がない
といったことが挙げられます。
●サイファー・スカウター
パペット・プラントとの2択ですが,こちらは召喚権が必要である点で劣ります。ただし,単体で機能するなどこちらの方が優れている点も多くあります。チューナー6枚体制のTG代行天使の場合はパペット・プラントの方が適しているという判断です。
●ライオウ
召喚権を使うので動きとしては鈍くなりますし,先手番で光るこのカードはかもめ亭ルールではあまり有効に機能するマッチアップが多くありません。強いて言うならミラーマッチで相手のサーチカードを根こそぎ腐らせる場合があり,そうなった時には強力ですが,ヴィーナス単体で突破されてしまいますし,墓地に代行者があればヒュペリオンなどで一対一交換されてしまいますから,それほど強固なロックにはなりません。対ガジェットでも,トラゴエディアや強制転移などで悪用される恐れもあり,裏目の多い1枚です。またこのカードを採用する場合はビートダウンプランに傾斜することになりますので,3本目には相手のスノーマンイーターを警戒しなければならなくなるなどの短所も存在します。
全体として,対戦相手に使われると実際問題として嫌な局面も少なくはないのですが,長期的に使うには勝手が悪いという印象です。
●次元幽閉
TG代行天使は「前」よりも「後ろ」を対策し,「前」には「前」で対抗すべしというのが基本的な考えです。アースやライフを守る役割ではくず鉄のかかしに軍配が上がります。ガジェットに対して採用できないというのも大きなマイナスポイントです。ただし,ヒーローに対しては強力です。
●D.D.クロウ
ジャンド・ヒーローに対して激しく刺さる一枚で,サイドデッキが20枚あれば採用していました。TG代行天使はもともとこの2つのデッキに対してとても有利なので,今回は採用を見送りましたが,クリッターからのサーチを考えると1枚入れておくだけでも有効かもしれません。
●転生の予言
ジャンドやヒーローを想定した墓地メタです。稀に自分の球体を戻します。悪いカードではないですが,D.D.クロウと同様に優先順位の問題で採用しませんでした。
●王宮のお触れ
クリーチャーデッキが用いる罠デッキ対策の代表格ですが,2011.3環境のサイドカードとしてはおすすめできません。ヒーローにはデュアルスパークや超融合といった速攻魔法での妨害札が多く搭載されているので,王宮のお触れが絶対的な効力を発揮できるわけではありません。また,あまり知られていないのが対ガジェット時の脆さ。確かに多くの罠を抑え込めるのですが,代償に対して無力なケースが多いのは大きなマイナスです。ストライカー+ガジェットの布陣に対しては,パルキオンを出されてはいけないので先に発動する必要があるのですが,そうして自分の罠を無効化するとブリューナクから自分の伏せをお触れごとすべて戻され,代償をめくられてゲームセットになってしまいます。魔法を大量に伏せるなど誤魔化しようもありますが,ブラックローズを狙っていきたいマッチアップでもあるため裏目があります。
以上のようなことから,基本的には砂塵の大竜巻を優先すべきだと考えています。
●シャイニング・アブソーブ

対天使専用のワンショット補助カードとして強い場面はありますが,運用の安定性の面であまりにもムラがありすぎますし,ライオウより黒角笛が強力な環境なのでしばしば強調される2本目以降の強さ(=ライオウへの強さ)という意味でも疑問です。現在のメタゲームでは採用したくありませんが,ライオウを搭載した純代行などが多くなれば一考の余地はあるでしょうか。
●くず鉄のかかし

「アースの後ろにある罠は炸裂装甲でも強い」という考えから出発した1枚です。アースを守る事は1枚のカードアドバンテージを得る事に等しいのですが,ガジェットや終末の騎士といったクリーチャーをまともな罠と1対1で交換するのは腹立たしいです。アナザー・ネオスに至っては1対1交換すら許されないことが多いです。
くず鉄のかかしはこの悩みを解決することができる1枚で,しょうもないクリーチャーに対しても気軽に発動していけますし,サクリファイス・エスケープされることもありません。先手ヴィーナスのパターンでも勿論強力ですし,代行者を引けていないケースでも最低限ライフを守る働きはしてくれるため,罠ビート系のデッキに対しては八面六臂の活躍を見せます。
この枠は小粒のクリーチャーの多いデッキに対してインするカードなのですが,今回は単体でのスペックやガジェット・TG代行天使に対する強さを評価してブレイカーを優先しました。
4.各デッキとの戦い方,サイドボーディングガイド 主要なデッキに対する戦い方と,それと切り離せないサイドボーディングプランをまとめました。サイドボーディングに関して「そもそも論」を語り始めると長くなるので省略しますが,スタイルとしてはデッキごとに大まかに「アウトしたいカード」「インしたいカード」を表記することとします。具体的な入れ替えは様々な要因で変化するため,固定したモデルを示すことは好ましくないと考えているからです。先手番・後手番はもちろん,同じデッキでも人によって細かな部分やサイドボーディングプランに差があったり,同じ55枚でも人によってプレイスタイルに違いがあったりするもので,その場その場で臨機応変に入れ替えを行うことが重要です。
メインから既に有利であり,サイド後の相手のプランを加味してもあまり大きな変更を加えずに十分勝率をキープできる場合は,最小限の入れ替えで済ませることを旨としています。そのため,サイドデッキの入れ替えを考える前提として,環境に存在するデッキに対する相性認識が必要となります。したがって,冒頭に主観に基づく相性表を掲載します。
- とても有利
デブリジャンド
- やや有利
墓地BF,ヒーロー,暗黒界,スキドレTG,そのほか各種罠ビートデッキ
- 互角
カラクリ,六武衆,TG代行天使
- やや不利
wakaガジェ,TG代償ガジェ
- とても不利
なし 全体的に,防御札の薄いデッキ,遅いデッキに対しては有利です。一方で,カラクリ・六武衆のような高速デッキや,恒常的にアドバンテージを稼ぐガジェットのようなデッキに対しては,「待ち」が許容される時間が短いため,初手の状況が悪いとすぐに敗勢に陥ってしまいます。カラクリ・六武衆はそれでもかもめ亭ルールと元々のデッキパワーの差を考慮すれば互角だと思いますが,ガジェットは動きも安定しているためTG代行天使にとって懸案となるマッチアップです。
(1)対TG代行天使
(アウト候補)
TG ラッシュ・ライノ
サイクロン
砂塵の大竜巻
聖なるバリア -ミラーフォースー
ブラック・ホール
リビングデッドの呼び声
(イン候補)
魔導戦士 ブレイカー
昇天の黒角笛
連鎖除外
王宮の弾圧
スノーマンイーター
冥府の使者 ゴーズ
(考え方)
基本的にはお互いにワンショットかトリシューラを狙い合うマッチアップです。トリシューラは,戦闘破壊したTGを墓地から除外するとゲームを決定づけることができます。防御札が少ない時は,中途半端に場にクリーチャーを残すと相手のストライカーを機能させてしまうため,注意が必要です。
ヒュペリオン・トリシューラの存在や罠の薄さから攻撃反応やバック破壊は優先度が低く,逆に相手の展開に触れるカードが重要になります。ライオウやブレイカーを使ってくる相手には,ラッシュ・ライノやスノーマンイーターが有効に機能する場合もありますが,バランスは非常に難しいです。
(2)対六武衆
(アウト候補)
TG ラッシュ・ライノ
リビングデッドの呼び声
精神操作
ダスト・シュート
奈落の落とし穴
強欲で謙虚な壺
(イン候補)
パペット・プラント
冥府の使者 ゴーズ
昇天の黒角笛
連鎖除外
砂塵の大竜巻
(考え方)
防御札が厚いデッキなので,ワンショットを目指すのは得策ではありません。基本的に六武衆側が先に動くため,カウンターがメインプランとなります。「仕掛け」までにいかに罠を踏めるかが重要になってくるので,相手の展開時にワーウルフを特殊召喚しておき,ターンが回ってきたらアースを召喚してアース+ワーウルフでワンダー・マジシャンを作る動きが強力です。罠をはがしつつ,場に残れば1900の打点で下級六武衆の戦闘破壊も見込めます。
高速で抑え込まれるのが最大の負け筋なので,サイドボードでは悠長なカードやシエンに対して無力なカードを減らし,カウンター補助や妨害札として優秀なカードを入れたいところです。バック破壊は門・結束にも触れますし,抑え込みを打開するのにも活躍しますから,弱いカードではありませんが,ライフを守れないので増やし過ぎると事故率が高まる恐れがあります。相手のサイドからの罠の増し具合などを見ながら慎重に判断しましょう。
(3)対デブリジャンド
(アウト候補)
TG ラッシュ・ライノ
ハリケーン
聖なるバリア ミラーフォース
サイクロン
砂塵の大竜巻
(イン候補)
魔導戦士 ブレイカー
連鎖除外
王宮の弾圧
昇天の黒角笛
(考え方)
防御が少ないため比較的容易にワンショットやトリシューラを狙えます。ただし,中途半端なアドバンテージ差は簡単に覆されてしまう場合がありますので,トリシューラなどを用いたアドバンテージプランをとる時は,なるべく早期に決着させる見込みを持つ必要があります。
バック破壊は一見無用に思えますが,リビングデッドの呼び声とリミット・リバースが抜けることは考えにくく,サイドカードも罠が入ってくる可能性があるため,バック破壊を一切抜いてしまうのは得策ではないことが多いです。パペット・プラントを入れる人もいるようですが,TG代行天使の場合はそこまで付き合うプランを前提とせず手早くワンショットを達成する方が裏目がありません。
(4)対TG代償ガジェ
(アウト候補)
精神操作
ブラック・ホール
奈落の落とし穴
激流葬
聖なるバリア -ミラーフォース-
ダスト・シュート
(イン候補)
魔導戦士 ブレイカー
砂塵の大竜巻
昇天の黒角笛
(考え方)
アースが場に残りにくいため,相手の罠とこちらの展開札を正面からやりとりする展開になりやすく,罠の厚い構築に対しては競り負けることが少なくありません。また,当然のことながら血の代償という明確な負け筋があり,環境に存在するデッキの中ではTG代行天使から見て最もやりにくい相手であると言えます。ただし,一度ヒュペリオンが着地すると強制転移以外ではうまく返しにくいなど,古典的な罠デッキにありがちな盤面解決力の低さを持ち合わせていますので,引き合わせによっては案外あっさり勝ててしまうケースもあります。
なるべくガジェットには付き合わず,バックを破壊することを重視します。ガジェットそのものの性質に加え,パルキオンがあるため全体的にあまり罠が効きませんが,クリーチャーでの返しをブリューナクに依存している面もあるため奈落が完全に弱いわけでもありません。ブレイカー,砂塵が一番刺さるアーキタイプでもあります。ブレイカーはガジェットの基本打点を超えているので,代行者を引けていない局面でも十分な脅威として機能します。
(5)対ヒーロー
(アウト候補)
TG ストライカー
TG ワーウルフ
精神操作
ブラック・ホール
月の書
激流葬
聖なるバリア -ミラーフォース-
ダスト・シュート
(イン候補)
スノーマンイーター
冥府の使者 ゴーズ
砂塵の大竜巻
(考え方)
このマッチアップも防御札が多いため,無理にワンショットを狙うのは得策ではないケースが多いです。ただしデッキパワーではこちらが上回っているので,ワンダー・マジシャンやトリシューラを中心にアドバンテージで競っていけば有利を築きやすいです。ヒーローは特に伏せている罠を読み易いデッキなので,罠読みのスキルの高さが勝敗を大きく左右します。このマッチアップでも先手でのガチガチヴィーナスは基本的には肯定されません。
スノーマンイーターは召喚権を使うことになりますが,サイドボード後は相手も罠を厚くしてくるため簡単にワンショットを決めることはできず,特にヴィーナス・ワーウルフ・ヒュペリオンのようなプランはリスキーになるため,ワーウルフを減らしてその枠に投入します。それに伴いストライカーも減量してバランスを調整します。
(6)対wakaガジェ
(アウト候補)
精神操作
ダスト・シュート
鳳翼の爆風
(イン候補)
魔導戦士 ブレイカー
砂塵の大竜巻
(考え方)
これもアースが残りにくく踏み越えるべき罠が多いマッチアップであり,天使から見ると戦いづらい相手です。代償がない分理不尽な負け方は少ないですが,ライフを取る速度が速いため,TG代償ガジェと比較すると若干「前」への対応も迫られます。
下手にいろいろとサイドカードを積んで遅くするよりも,メインデッキのバランスを維持してコンボによる勝利を狙った方が勝利期待値がまだ高いので,それほど多くの枠は割いていません。魔導戦士ブレイカーはTGガジェ同様痛打になりますが,ギアフレームがあるため過信はできません。
(7)対墓地BF
(アウト候補)
月の書
精神操作
ブラック・ホール
聖なるバリア -ミラーフォース-
TG ストライカー
TG ワーウルフ
クリッター
(イン候補)
冥府の使者 ゴーズ
砂塵の大竜巻
スノーマンイーター
(考え方)
墓地BFはトリシューラの刺さり方が激甚です。ワンショットとトリシューラの二面狙いで戦っていくのが基本となります。防御札は12-3枚入っていることが多いですが,TG代行天使にとってゴッドバードアタックはケアしやすいです。不必要に場にカードを置かず,シンクロを脅しの武力として利用しつつうまく躱していきましょう。墓地BFは瞬間的な打点生成力ではTG代行天使に匹敵するものを持っており,ゲームプランもTG代行天使のそれと似ています。頓死に気を付けながらアドバンテージゲームに持っていくことができれば,デッキパワーの差で優位に立つことができるでしょう。手間のかかるアームズ・ウィングが2300,簡単にだせるヒュペリオンが2700ですから,不利なはずはありません。そもそも,カウンターデッキであるにもかかわらずゲイル・ダムドあたりが絡まないとヒュペリオンをうまく返せないというのは環境的に重大な欠陥ですから,TG代行天使が多いフィールドに限って言えば上位卓ではあたりにくいと思います。
サイドボードプランは至って普通ですが,一点スノーマンイーターを使うかどうかは状況に依存します。シロッコ2000,アームズ・ウィング2300であるためスノーマンイーターは他の罠デッキに対するほど強力ではなく,しかもこれらのクリーチャーを墓地に落としてしまうことは感覚的には「1対0.5交換」なので,本来は気乗りしません。しかしながら,高速決着のゲームプランに対しては1枚で大きくライフを守れますし,ダーク・グレファーのようなクリーチャーに対しては依然として強力です。サイド後にライオウやシュラなどが加えられることも少なくなく,そのあたりにも強力です。ただし,スノーマンの採用とTGの減量は一対ですから,この変更が自分の速度を遅らせてしまうことには注意が必要です。場合によってはスノーマンを1,2枚だけ入れるということもあります。
(8)対カラクリ
(アウト候補)
TG ラッシュ・ライノ
精神操作
ダスト・シュート
リビングデッドの呼び声
(イン候補)
昇天の黒角笛
連鎖除外
砂塵の大竜巻
(考え方)
基本的な考え方は対六武衆と似ています。六武衆と異なる点として,TG代行天使にとっては919が脅威となるため,小さいクリーチャーを不用意に場に残さないようにしましょう。

トリシューラよりブラックローズが決め手となるケースが多いです。また,借カラクリ蔵やカラクリ解体新書,簡易融合など展開パーツに魔法が多いため,伏せは見た目よりも薄いことがあり,時には大胆に突っ込んでいくべき局面もあります。
高速デッキなので悠長なカードは減らすべきです。カラクリは919の効果が絡まない限り罠を上手に踏みにくいデッキなので,シンクロ展開に対して徹底的に罠で応戦していけば有利を作りやすいです。
召喚反応罠をシンクロやメカザウルスにあてたい対カラクリにおいては,攻撃反応罠も下級クリーチャーに対してまずまずの働きをします。また,カラクリは返し手段を戦闘に依存しているため,ヒュペリオンの後ろにミラーフォースがあると「展開に成功したにも関わらず返せない」という局面が発生する点も見逃せません。
5.おわりに 軽い気持ちで書き始めたらいつのまにか20000字を超える長文記事になってしまいましたが,TG代行天使の基本的な考え方や構築の意義付けなどを皆さんと共有して議論を活発化させることで,この記事がゲートボール文化振興の一助になれば幸いです。サイドボーディングや各デッキとの戦い方については他にも挙げればキリがありませんが,今回はこのあたりで筆を置きたいと思います。質問や反対意見などは大歓迎ですので,是非コメント欄にお願いします。
この項で書いたような内容というのは,そのほとんどが2011.9時代の知識・経験・思考の蓄積です。チャリオットさんをはじめ,Linksさん,でぃんさん・ピロさん(かもめ亭のチームメイトです),かみだて,Feg君(この前シャドウバースの大きな大会で優勝していましたね),こまっつーさん,シャロンさん,されんだーさん,sai君といった普段づきあいの遊び相手の人たちから受けた影響はとても大きかったと思いますし,当時はたしかまだ面識がなかったと記憶していますが,Jspeedさんやチーム東京の面々(とくにミラーフォースさん,T2さん)のブログ記事・ツイキャスなどにも強く刺激されたものです。
当時を思い起こしてみると,みんなのモチベーションを高めていたのはCSと中野非公認の存在でした。流石にかつてのように大規模なCSはもう考えられないのでしょうが,かもめ亭のような草の根大会は活況を呈して増加していますし,中野で隔週開催されているゲートボール非公認にも20名前後の人間が集まるなど,いまのゲートボール環境はそういったハード面での下地も備えてきつつあります。
カードゲームの環境は,活発に切磋琢磨する者がいればこそ発展し,競技的な面白さを高めていくものです。願わくはゲートボール環境が活気の好循環を得られんことを。
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