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ぞうブロ

転職、エンジニアの叫び、マラソン、音楽を中心に。

裁量労働制で働くエンジニアのリアル。

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転職して1年程たったある日。上司から一枚の紙を見せられた。
「これに、サインしてくれるかな?」
裁量労働への移行を希望します、という内容だった。紙切れには、
「自分のペースで遂行できる業務ですか?YES or NO」
「あなたに裁量ありますか?YES or NO」
などと、いくつか選択肢があり、全てYESの場合のみ裁量労働OK、というフォーマットだった。ほとんどの人間が、全てNOに当てはまるのは、一目で分かった。
転職したてのペーペーに、裁量などないし、自分のペースで仕事なんてできるわけない。むしろ、周囲の様子を見てて、裁量労働=パケ放題(定額で残業し放題)だという実態は、当然知っていた。
しかもこの制度を採用しているのは、設計など、拘束時間の長い技術職だけらしい。定時で帰れるような他部署では運用されていないようだ。なんだそりゃ。ただの残業代減らしじゃないか。
 
同時に、部内に流れる物騒な噂も思い出した。
裁量労働へのサインを拒んだ者のリストは、幹部がしっかり持っている。そしてその者たちは、粛清される。不満分子ということで飛ばされ、出世は見込めない。
某国じゃあるまいし、そんな馬鹿げた話、あるわけない。しかしどうやら、本当のようだ。
 
「サインしてくれないと俺の立場が、、」と子犬のような哀れな目で見つめてくる上司。 その瞳の奥に、底知れぬ闇とさっさとサインしろという圧力を感じた私は、泣く泣くサインした。
実際その後、何人かがサインに拒否して、程なく辞めるのを見た。完全に某共産主義国家だ。私は恐怖すら感じた。もっとも、今思うと、毅然と拒否して飛ばされた方が自由になれたかもしれない。
 

裁量労働のメリット、デメリットを私のケースで。

私の場合の、裁量労働制のメリットとデメリットを簡単に記しておこう。

1.メリット:フレックス勤務になる(ならない)。

うちの部では、朝一に朝礼がある。裁量労働になれば、朝礼参加の義務はなく、コアタイムに来ればよいと聞いていた。
しかし実際は、「現場の人(ラインの人。非裁量、定時帰り)も朝礼出てるんだから。チームで仕事をしてるんだから。一緒に出てないと仕事を頼みにくいよ」という謎の圧力が存在する。その圧力に屈し、朝礼は半強制だ。見事なまでのダブスタだ。
 

2.デメリット:残業手当が減る(減る)。

裁量労働と通常勤務との違いは、会社によって様々だろう。私のケースだと、まず、残業時間の定義が微妙に変わる。
残業時間⇒健康管理時間というふうに。名前も変わる。
残業時間は、一日あたりの定時に対して超過した時間の累計だ。
一方、健康管理時間は、祝日有休関係なく、単純に1週間7日中5日分
に対して超過した時間をいう。
 
たとえば、ある月で
  • 稼働日:20日
  • 定時勤務:8h/日
  • 時間外労働:3h/日
  • 祝日:1日
  • 有休:2日
の場合、残業時間は3*(20-(1+2))=51hとなる。
しかし、裁量労働制では、上記のケースの場合、
健康管理時間は3*(20-(1+2))-8*(1+2)=27hとなる。
要するに、裁量労働制では、祝日や有休があると、残業時間から8時間(定時時間)マイナスされてしまうので、見かけの残業時間が少なくカウントされるのだ。
 
しかも、裁量労働制になると、いわゆる「36協定」からも、適用外となる。
月当りの残業時間のボーダーラインは、36協定では残業時間:45h/月が目安だが、裁量労働制では健康管理時間:60h/月だ。
 
その上で、支払われる「残業代」は、ざっくり下記のようになる。
  • ①健康管理時間 60h未満    ⇒定額(25h分)
  • ②健康管理時間 60以上80h未満 ⇒①*1.5(=37.5h分)
  • ※健康管理時間 80h以上は、「原則」禁止
 
私たちの「健康管理時間」は大体60h前後だから、通常勤務よりも、当然二重に目減りする計算になる、というわけだ。
 
出勤時間は自由にならず、残業代は目減りする。
デメリットしかないじゃん。
 
当時はそのグレーさとダブスタに、戸惑ったし、頭にも来た。「サインを拒否します」と言った年もあった。その場合、なぜサインできないの?と迫られ、別途「面談」が設けられた。上司も大変なんだろうな。そう思い、空気に負けて、毎年サインを更新し続けている。サインは自由っていっても、実際迫られたら断れないよね。 

裁量労働制、国会での騒動について考える。

こういう議論をすると、必ずこういう方が現れる。
何を甘ったれた事を言ってるんだ。
俺達私たちの若いころは、徹夜やサービス残業、パワハラセクハラなんて、当たり前だったぞ。ブラック自慢、苦労した自慢だ。
 
それはさぞ大変な思いをされたんだろう。同情する。でも、そういわれても、何もいえねえ。愚痴はキャバクラ嬢にでも聞いてもらってくれ。自分がされて嫌だったことを、人にしてはいけない。自分が苦しんだからお前らも苦しめというのは、気持ちは分かるけど、しちゃだめなんだ。
 
 
まあ裁量労働制を半強制されるのが嫌なら、次の三つしかない。
  1. 転職する(異動する)
  2. 辞めて独立する
  3. 管理職になって組合員の枠を外れる
それができないなら、郷に入りては郷に従えで、ルールに従って頑張るしかないですね。あくまで前向きにとらえて。
私は、裁量労働が悪いと言っているのではない。とにかく、仕事が多すぎる、あるいは人が少なすぎるのが問題なのだ。ガチガチに残業規制をしても、仕事が回らず持ち帰る、、なんて本末転倒の茶番は、たくさん見てきたし、自分もしてきた。当時はこんなめんどくさい形だけの枠なんか、取っ払ってくれよと思ったものだ。仕事量とリソーセスを適正化し、あわせて制度もうまく運用すれば、皆幸せになれるはずだ。 
 

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もう一つ。最近国会でも話題になっていたが、政治家や官僚は、一般企業の実態をどこまで知っててああいう議論をしてるんだろうか。実際に裁量労働をしてる省庁はあるのかな。以前いくつかの某省庁に勤める友人たちが言っていた。忙しいけど、残業代は全てつくと。まして政治家に残業という概念がないのは周知の事実だ。だからこそ、経団連のいいなりではなく、しっかり実態を把握しデータを集め、実のある議論をしてほしい。
 
私は普段、批判や文句、揚げ足取りしかしない野党を全く評価していない。大嫌いだ。仕事しなくていいから邪魔するなと言いたい。でも、今回の件は、厚労省のいい加減なデータをよく明るみにしてくれたと思う。組合や連合がバックにいる旧民主党にとっては、一番得意分野だろう。是非こういう議論をしっかりしてほしい。モリカケ云々で、与党の邪魔することを生き甲斐にしても、余計に支持が落ちるだけだ。朝日新聞などの左派メディアに乗っかって政権の揚げ足取ってる暇があったら、まず自分の得意分野を磨き、以前全くダメだった外交や経済についても勉強していってほしい。本気で政権を取る気概があればの話だけど。今回も倒閣だけが目的であり、その後のプランは皆無だろうから。朝日新聞は日本にとって害だが、せめて同じ穴の狢にならないよう頑張って欲しい。
 
上から目線ですいません。しっかり仕事して、いっぱい給料もらえるように頑張ります。