豪州での完敗から2年 三菱重工の最新鋭潜水艦が就役

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2018/3/12 15:40
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 三菱重工業は12日、ディーゼル駆動式では世界最大級の潜水艦「せいりゅう」を海上自衛隊に引き渡した。定期的に浮上する必要のない「AIP方式」と呼ばれる最新システムを搭載した「そうりゅう」型の9番艦で、性能の高さは世界でも指折りだ。横須賀の第6潜水隊で訓練を積んだ後に実際の任務に就く。

ディーゼル駆動式の潜水艦としては世界最大級の「そうりゅう」型の9番艦として建造された

 全長は84メートル、水中での速力は20ノット。AIP方式では液体酸素を気化させて酸素を得るため、通常のエンジンのように定期的に浮上して酸素を取り込む必要がない。水中に潜ったままで活動できる時間が大幅に長くなったうえ、X型の舵(かじ)の採用で旋回半径が小さくなり、運動能力も向上。3枚が故障で動かなくなっても残りの1枚で動かせるなど、非常事態への対応能力が上がった。

 神戸造船所(神戸市)で同日開かれた引き渡し式には、防衛副大臣を含む約260人が参列。平間武彦艦長が「一日も早く海上防衛の任務に就けるよう、精進する」とあいさつし、午後2時前に造船所を後にした。先代の「おやしお」型と比べると約200トン重くなっているが、約65人の乗員は先代より5人ほど少ない。「世界的にも、この規模で運航できる潜水艦は少ない」(海上自衛隊)。

 そうりゅう型の潜水艦を巡っては2年前、オーストラリアでの入札でフランスに敗れた記憶が新しい。当初は大きくリードしていたはずの選考レースだったが、豪政権の交代や仏側の巻き返しでふたを開けてみれば完敗だった。一定の条件を満たせば装備品の輸出を認める安倍政権の「防衛装備移転三原則」を使ったモデルケースになるはずだったが、その後も完成品の輸出に至った事例は出ていない。

 三菱重工は稼ぎ頭の火力発電所向けガスタービンが不振に陥り、国産ジェット旅客機「MRJ」も5度の納期延期を繰り返して後がなくなった。防衛向けは数少ない安定分野だったが、米国政府が主導する対外有償軍事援助(FMS)の拡大でかつての安定性は揺らぐ。ジャパン・マリンユナイテッド(JMU)がイージス艦を連続で受注したのをはじめ、少ないパイを国内メーカーが奪い合う競争も定着した。

 三菱重工と川崎重工業がほぼ1年おきに交互に供給している潜水艦でも、コスト圧縮の要求は高まっている。せいりゅうの建造コストは約530億円と、1番艦の「そうりゅう」より約60億円安い。収益基盤の土台をがっちりと占め続けるための企業努力に終わりはない。

(企業報道部 市原朋大)

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