(近所の郵便局の再配達ボックスの山。ほとんどAmaon)
前回書いたAmazonのヘルスケア業界進出(の可能性)は、業界内でも様々な地殻変動を起こしている。
株価に見るAmazon競合への市場の冷たい目
まずは株価に見る世の中の総意としては「保険会社も、処方箋売ってるドラッグストアも問屋も相当まずい」という感じ。(北斗の拳的に言うと「おまえはもう死んでいる」状態。古いけど。)
1月末に JPモルガンとバークシャーハサウェイとのヘルスケアコンソーシアムを発表した時はドラッグストアのCVSの株価はその日のうちに6パーセント以上下がった。保険会社では、エトナが5パーセント近く、アンセムが7%近く下がっている。また世の中ではあまり知られていないが処方薬のバックエンドの管理をしているエクスプレス・スクリプツに至っては10%以上下がった。(エクスプレス・スクリプツは売上げが1000億ドル(10兆円超)もある巨大企業)。
去年の10月には「アマゾンが、処方箋オンライン販売事業に進出するかどうかを一か月以内に決めるらしい」という噂が報道されただけでCVSと、同じくドラッグストアのウォルグリーンズ、そしてエクスプレス・スクリプツの株価はそれぞれ7〜8%下がった。
その前の6月にはアマゾンのホールフーズ買収が発表されたが、この時はもちろん、ホールフーズの直接の競合となるスーパーマーケットチェーンが打撃を受けた。ウォルマート、コストコ、 ターゲット、クローガーの4社で、トータル200億ドル(2兆円)以上の企業価値が失われている。・・・のであるがその陰でひっそりと、CVS、ウォルグリーンズ、エクスプレス・スクリプツ三兄弟の株も下がった。「アマゾンがホールフーズで処方箋売るのでは」という見込みによる。
その前の5月には「 Amazon がオンライン薬局事業の人材の採用している」というニュースがあり、この時にもCVSとウォルグリーンズの株は下がっている。
Amazonに対抗しようと次々に発表される合従連衡
そして実際に、「Amazon がやってくるという脅威」で巨大な合従連衡が登場している。12月に、CVSがエトナを690億ドルで買収することが発表され、先週は保険会社のシグナがエクスプレススクリプツを520億ドルで買収すると公表された。巨人が来る前に企業体力つけないと、ということ。
Amazonのマークトウェイン化
しかし実際は Amazon はまだ何もしていないということがミソ。 Amazon が参入するかも、というだけで何兆円分もの株価がふっとび、同じく兆円単位の買収案件が決定される。
これはまるでAmazonがマークトウェインになったようである。
マークトウェインは「トム・ソーヤーの冒険」などの作者だが、 とてもウィットの効いたコメントでも有名だった。例えば、病床にあったマークトウェインが死んだというニュースが出た時に、まだ生きていた本人が
The reports of my death are greatly exaggerated
(僕の死亡報道はかなり誇張されている)
と言ったとか。
しかし、「マークトウェイン語録」の多くは実は彼が言った言葉ではないらしい。当地的に有名なものでは
The coldest winter I ever experienced was a summer in San Francisco.
(僕が経験した最も寒い冬はサンフランシスコの夏だ)
というのがあるが、これも本当はマークトウェインは「寒いね」 くらいしか言っていないらしい。(ちなみにサンフランシスコの7月の最高気温は19度、最低気温は12度。震えている半袖短パンの観光客は夏の風物詩である)。
なぜ本人が言ってもいない格言・名言が語り継がれるようになったかというと、当時から「マークトウェインはウィットに富んでいる」という評判が確立していたため、「マークトウェインが言った」というだけで、普通の発言でもとても面白いと思われることが多かったため、「マークトウェインが」というのが枕詞の様に使われたらしい。
同じように Amazonが「ヘルスケアとかいいかも・・・・」と呟くだけで、それが現実になる確証がなくともヘルスケア業界が右往左往する。すごいね、Amazon。