(英フィナンシャル・タイムズ紙 2018年3月9日付)
ジョン・マクドネル氏は一つの計画を温めている。英労働党の「影の財務相」である同氏は、市場よりもマルクスの方を好む。
そのため、エネルギー、水道、鉄道などの産業を国有化し、法人と裕福な個人の税負担を大幅に引き上げ、銀行にいろいろな規制を課し、政府の支出と借り入れを大きく増やす腹づもりなのだ。
本紙フィナンシャル・タイムズが同氏の実像に迫ったインタビューでは、そうした施策の統一的な目標は「権力と富のバランスを労働者に有利な方向に、それも二度とひっくり返らないようにシフトさせること」だと語っていた。
英国の最大野党が極左に傾くのは初めてではない。1983年には、当時の労働党党首マイケル・フット氏が銀行の国有化から欧州連合(EU)離脱、さらには一方的な核廃絶と、ありとあらゆることを公約したマニフェストを作成している。
結局、フット氏は党を分裂させてしまい、総選挙ではマーガレット・サッチャー率いる保守党に敗れた。労働党議員らは後に、このマニフェストに「史上最長の遺書」というあだ名をつけた。
時代は変わった。ジェレミー・コービン氏の率いる労働党は現在、世論調査で40%の支持を得ており、テリーザ・メイ氏の保守党と互角の勝負をしている。
「第三の道」の社会民主主義を標榜したトニー・ブレア時代の残党である中道派の労働党議員らは、コービン氏を引きずり下ろそうとしてきたがうまくいかず、今では同氏が首相になり得ることを認めている。
若者たちは68歳のコービン氏の主張に飛びついている。英国をブレグジット(英国のEU離脱)に導いたあの怒りの空気は、英国史上最も左寄りの政権を誕生させることになるかもしれない。