「最初の実験を憶えてる?」
彼の問いに頷く
僕の座ってるデスクに鞄を投げた、のが、最初
鞄はデスクの上で跳ねたけど、僕に当たりはしない
普通の人なら驚くレベルでは無い…けど、僕は怯んだ
「人に物を投げつけたのは初めてだ」
身体を硬くしている僕を見る
「どう思った?」
静かに聞く彼
暫く待ってもらって感想を言う僕
「大人しい、悪戯だなあ、と、思いました」
「大人しい…か」
自嘲するような微笑み
「子供になるのは難しいね」
また、暫く待ってもらって、言う
「鞄の中身をぶちまけるくらい派手に投げたら…子供っぽい、かな…」
「派手って滑稽だよね」
まあ、子供って基本滑稽だけど
あの時の、そんな会話もはっきり憶えてる
「大人しい」実験からはじまって、緩やかに「派手」になっていった
指の痕がつくほど、手首を握りしめ、血が出るくらいに爪をたてる…
僕は怖がりで痛がりだけど、怖くても痛くても騒ぐことは無い
ただ、終わるのを待つだけだ