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とあるたぬぬの壁面書棚<ブックシェルフ> 4 ~詳細設計(ディテールデザイン)~
まいど。 ぐったりたぬぬです。
さっそくですが、本棚企画始めます。
今回は、本棚の詳細な設計を行います。 具体的には、まず本棚で使う板材の厚さを決めて、その後本棚全体の寸法もかちっと決めちゃいます。
板の厚さを決めるまえに
今回作る本棚を構成する部品は、大きく棚板と側板に分類されます。 棚板は文字通り、棚として本を受ける面を提供する板です。 底板や天板も、棚板と同じ考え方を適用します。 一方の側板は、本棚の両側面を成す縦長の板で、棚板がこれに取り付けられます。 これらの部品はすべてばらばらの厚さの板で作ることもできますが、簡単のために、これらはいずれも同じ厚さの板で作ることにしましょう。
必要な板の厚さは、板に使われる材質や、板に求められる強度によって変わってきます。 硬い材料を使えば、薄くても必要な強度を得ることができます。 また、必要とされる強度が大きければ、同じ材料を使ったとしてもより厚みのある板を選ぶ必要があります。 この辺の兼ね合いから、板を選定することになります。
スラ←が過去に使ったことがあって、ある程度予測のつく材料と言うことで、今回つくる本棚の材料にはシナランバーコア材という板材を選びました。 シナランバーコア材は、建築物内相の下地材などに利用される板材です。 ファルカタと呼ばれるマメ科の木を心材として、シナの化粧材でサンドイッチした構造になっていて、軽く、板面がきれい(シナ材を貼ってあるので)のが特徴です。 建築物の構造体(柱とか、壁とか)に使うような強度の強いものではありませんが、ちょっとした家具を作るくらいなら十分だと、スラ←は考えています。
このシナランバーコア材ですが、その厚さは規格化されています。 本棚に使えそうなところで言うと 15, 18, 21, 24, 30 mm から選べます。 まずはこの中から、どの厚みのモノを使うか考えることにします。
棚板に必要な厚さの求め方
棚板の厚みを決めるための方針として、棚板の上に本をずらっと並べた時に発生する棚板のたわみ (曲がり) が 「既定の範囲」 以内にいおさまる厚さを選択する、ということにしましょう。 どれくらいの重さのモノをどういう風に置いたら、棚板がどれくらいたわむのかということを計算で予測するわけです。 ここで問題になるのが、棚板のたわみの大きさとして許容される「既定の範囲」 をどう決めるか、ということです。 これについては、とりあえず「棚板の有効スパンの 1/300 以下」としておきましょう。 前回の設計の中で棚板の有効幅を 600 mm と決めたので、その 1/300 は 2 mm。 梁の最大たわみ量をδmaxとしたとき
δmax ≦ 2 [mm]
となることが目標となります。
棚板に発生するたわみの大きさを計算する式は、構造力学の分野における 「はりのたわみ」 の公式を使います。 詳しい証明とかは既に丁寧な解説ページがネット上にたくさんありますので (例) そちらに任せるとして、ここでは、天下り的に以下の公式だけ拝借します。
この公式を本棚の棚板に適用できるように、さらに↓の式を使います。
なお、上に上げた 4 つの式中のパラメータの意味は以下の通りです。
文字 | 意味 | 代入値 |
---|---|---|
q | 棚板 1 m あたりの荷重 [N/m] | - |
l | 棚板の有効幅 [m] | 0.6 |
E | シナランバーコア材のヤング率 [Pa] | 3.7x109 |
Iz | 棚板の断面二次モーメント | - |
b | 棚板の奥行き [m] | 0.21 |
h | 棚板の厚さ [m] | 0.015, 0.018, 0.021, 0.024, 0.030 |
g | 重力加速度 [m/s2] | 9.8 |
p | 厚さ 1 m あたりの本の質量 [kg/m] | 60 |
w | 棚板 1 m あたりの質量 [kg/m] | - |
ρ | シナランバーコア材の密度 [kg/m3] | 401 |
各パラメータについて、ちょっとだけ解説を加えておきます。
まず棚板 1 m 辺りの荷重 q とは、仮に棚板の幅を 1 m で設計したとき、その棚板全体に作用する力の大きさのことです。 これは、3 つめの式 q=g(p+w) に示したように、「仮に本の厚さが 1 メートルだったときの質量」 (p) と、仮に棚板の幅を 1 m で設計したときの棚板の質量 (w) から構成されています。 なお g は重力加速度で、9.8 の値を使います。
厚さ 1 m あたりの本の質量 p は以前裏日記の企画で測定したデータをもとにしています。 このとき測定した中で一番大きな値が 49 kg/m でした。 世間は広いので、スラ←の手持ちの本よりももっと重い本があることも考えられます。 なので本棚の設計においては、この値を 2 割増しして、端数を繰り上げた値を p の値として採用します。
p=49×1.2=58.8≒60
ということで p の値は 60 kg/m とします。 ちなみに「なんで 2 割増しなの?」って質問はしないでください(ぁ。 カンです。
棚板の幅を 1 m で設計したときの棚板の質量は、棚板の材料に使うシナランバーコア材の密度 ρ と棚板の寸法から計算します。 それを計算するのが、上記 4 つめの式です。 ここで、ρ はシナランバーコア材の密度で 401 kg/m3 です。 この数値は木材の Web ショップに記載されていた厚さ 21 mm のシハチ材 (1230 mm × 2430 mm の板材) の質量から計算しました (そのショップは、配送料の参考として板材の重量を掲載しているだけで、その数値を保証しているわけではないので、あえて参照元へはリンクしません。 必要な方はぐぐって調べてみてください)。
次に、シナランバーコアのヤング率 E について。 ヤング率とは 「ある材料がどれくらいひずみ難いか」 を示すパラメータです。 詳しいことは詳しいページにお任せしますが、この値が大きいほど、たわみが発生しづらくなります。 代入値の 3.7 GPa は、スラ←が予備的に行った実験で算出した値です。 この実験では 18 mm 厚のシナランバーコア材を使いました。 厳密には、厚さが変わるとヤング率も若干変わる可能性があるんですが、まぁ、大体の目安ということで。
断面二次モーメントは、「ある形のモノがどれくらい曲がりにくいか」 を示すパラメータです。 ヤング率も断面二次モーメントも材料の変形しにくさを表すものですが、ヤング率が材料の種類によって決まるパラメータであるのに対して、断面二次モーメントは材料の形状によって決まるパラメータです。 これ以上詳しいことは、例によってその道のページにお任せします。
l、b、h は棚板の形状(寸法)を表すパラメータです。 ちなみに、断面二次モーメントは、形状によって決まるパラメータなので、棚板の形状から計算することができます。
実際の計算
上で挙げた最初の式にのこり 3 つの式を代入して、1 つにまとめると↓になります。
上表の数値を↑の式に代入して計算すると、下記のようになります。 なお、上式の直接的な計算結果はメートル単位になりますが、mm 単位に直して表にました。
棚板の厚さ h [mm] | 最大たわみ量 δmax [mm] | 判定結果 |
---|---|---|
15 | 4.6 | NG |
18 | 2.7 | NG |
21 | 1.7 | OK! |
24 | 1.1 | OK! |
30 | 0.6 | OK! |
計算結果より、シナランバーコア材を使う場合、15 mm や 18 mm では設定したたわみ量が 2 mm を超えてしまい、基準を満たすことができないようです。 なので、今回作る本棚では 21 mm の板厚を採用することにします。
全体寸法の決定
棚板の厚さが決まったので、全体の寸法も決めてしまいます。 前回決めたプランを、棚板も含めて以下のように更新します。
構造体 | 全高 [mm] | 要素 | 要素高さ [mm] | 備考 |
---|---|---|---|---|
上段 | 560 | 天板 | 21 | |
2 段目 | (227) | 新書, 文庫 加工誤差をこの段で吸収 | ||
棚板 | 21 | |||
1 段目 | 270 | B5 版 | ||
底板 | 21 | |||
下段 | 1820 | 天板 | 21 | |
6 段目 | 190 | 新書, 文庫 | ||
棚板 | 21 | |||
5 段目 | 245 | A5 版 | ||
棚板 | 21 | |||
4 段目 | 290 | B5 版 | ||
棚板 | 21 | |||
3 段目 | 290 | B5 版 | ||
棚板 | 21 | |||
2 段目 | 245 | A5 版 | ||
棚板 | 21 | |||
1 段目 | (350) | 大型本, A4 ファイルなど 加工誤差をこの段で吸収 | ||
棚板 | 21 | |||
袴 | (63) | 材料事情により数ミリ調整 |
加工誤差を完全にゼロにすることはできないので、誤差が出てしまった時には下段は 1 段目、上段は 2 段目の高さを調整することにします。
これで本棚の正確な寸法が決まりました。 判っちゃいましたけど、なんか、ハードな記事になっちゃいましたねぇ。