自分が出したオファーは断られたのに、同僚のAさんが出したオファーには快諾…。日々の仕事には、こんな“不条理”が少なくない。この差はどこから生まれるのか。もちろん依頼内容にもよるが、同時に重要なのが「頼み方」だ。
(まとめ:島田 栄昭)
多くの仕事は、人に何かを依頼することから始まる。どれほど立派な企画も、協力者がいなければ実現は難しいだろう。だとすれば、重要なのは、いかに相手に「喜んで引き受けよう」と思ってもらえるかという「頼み方」だ。これは、仕事量が増えるばかりの社会人にとって必須のコミュニケーション能力だ。
大前提は、熱意や誠意といった「情」を見せること。自分はその仕事のためにどこまでエネルギーを注いできたか、なぜ人の力が必要なのかを文書や口頭で示す必要がある。
例えば、いきなり「この荷物を10m運んで」と頼んだとしたら、相手は「自分で運べばいいのに」と思うだけだろう。しかし、実は100mのうち90mまで自分で運んで力尽きたと説明し、「あと10mだけ運んでくれませんか?」と頼めば、相手も無下にはできないはずだ(嘘をついてはいけないが)。
単純に本人が楽または得をするための依頼なら、相手も自分本位で考える。しかし第三者のためだったり、努力している様子がうかがえたりすれば、多少無理をしてでも支援したくなる。それが世の常というものだ。人に何かを頼む際には、まずこの点を自問してみる必要があるだろう。
そのうえで、依頼に欠かせないポイントを3つ挙げてみよう。
依頼内容をイメージさせ、「当事者意識」を持たせる
第1は、「仕事の全体像を示す」ということだ。最終的に何が出来上がるのか、それが社会にどういう恩恵や影響をもたらすのか、あるいはその先にどういう展開を期待できるのか等々を伝えたうえで、「ついてはこの部分を」と依頼するわけだ。
そうすると、相手も役割をイメージしやすい。自分が1の貢献をすることによって最終的に10のものが出来上がるとすれば、やりがいも大きくなる。意気に感じて引き受けてくれるのではないだろうか。
言い換えるなら、発注者と受注者というビジネスライクな関係を、共同で1つのものを作り上げるパートナーの関係に昇華させようということでもある。いわゆる「当事者意識」がモチベーションを高めることはもはや常識だろう。
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