漬物やサラダ、おつまみなど、食卓に一年中出てくる「きゅうり」。その収穫量は年間約55万トン(2016年度:農林水産省統計より)にものぼり、日本全国で栽培されている。しかし、その仕事は、他の作物を作る同業者からも「大変ですね」といわれるほど、過酷な面があるという。
「昨今の農業は機械化が進んでいるものの、きゅうりやなす、トマトといった果菜類(果実を食用とする野菜)については、まだまだ手作業が多く、作業効率が低いのが現状です」
こう話すのは、静岡県できゅうり農家を営む小池誠さんだ。家族経営で年間約21万本(63トン)のきゅうりを出荷しており、収穫がない夏以外は、多忙を極めている。きゅうり栽培が大変なのは、手作業による収穫もさることながら、出荷に必要な時間も膨大なのが原因の1つだ。これだけで栽培における全労働時間の5分の1を占めるという。
その代表的な作業が「仕分け」だ。きゅうりの仕分けとは、出荷時に傷や病気があるものを除いたり、形や色合い、大きさによりランク別に選別したりする作業のこと。特に統一の規格があるわけではなく、各農家によって独自のルール(出荷先の希望や市場での価格などによって決める)が存在する。
小池さんの家では、出荷時にきゅうりを9種類に選別しており、収穫のピーク時には1日約500キロ(約4000本)ものきゅうりを仕分けることもある。規模の小さい個人農家では、大掛かりな仕分け機を買うメリットが少ないため、手作業にならざるを得ないそうだ。仕分け担当である小池さんの母親は、1日8時間以上ずっとその作業に追われることもあったという。
「1つとして同じ形のきゅうりはありません。形や大きさ、表面のツヤ、曲がり具合、太さの均一さなど、確認するポイントが非常に多く、また、選別する等級を間違うとクレームにつながることもあるため、忙しいときだけバイトを雇って手伝ってもらう、といった手段も取りにくい。何より問題なのが、この作業に時間をかけても、別にきゅうりの収穫量や品質が上がるわけではないということ。なるべく時間を減らしたい作業なのです」(小池さん)
何とかして母の負担を軽くできないか――。この課題を解決しようと小池さんが動いたのは2016年のこと。Google DeepMindが開発したコンピュータ囲碁プログラム「AlphaGo」がプロ棋士を破ったのを見て、ディープラーニングによる画像解析の可能性を感じた小池さんは、Googleがオープンソースで公開している機械学習用のソフトウェアライブラリ「TensorFlow」を使って自動仕分け機を作れないかと考えた。
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